BigbeatLIVE 2025.06.06 仕事も遊びもスリリング | 音楽プロデューサー樋口太陽さんの「人生の選び方」
2025年8月1日に開催される「Bigbeat LIVE 2025」。
“らしさ”というキーワードを軸に「経営」「グローバル・ASEAN」「コミュニティ」「働き方と選ばれ方」というテーマでセッションを展開します。
今回ご紹介するのは、「働き方と選ばれ方」セッションにてご登壇をいただく樋口太陽さんです。
樋口太陽さん
音楽プロデューサー
OFFICE HIGUCHI 代表取締役
1984年5月25日生まれ。
福岡県田川市出身。
長野県八ヶ岳原村在住。
2025年度は息子の通う小学校のPTA会長も務める
音楽との出会い、激動の20代
樋口太陽さんは1984年福岡県田川市で建設会社を営む父と幼稚園教諭の母のもとに生まれました。音楽との出会いは「子供のころ教養のためにピアノ教室に強制的に通わされた」こと。3つ上の兄の影響で中学生時代にギターを弾き始め、バンド活動に没頭。プロミュージシャンを夢見るも、大学卒業後はフリーター生活を送ります。25歳で職業訓練校に通い始めた頃、東京で音楽制作と芸人活動を両立させていた兄からの誘いをきっかけに上京。WebムービーのBGM制作が「誰かに求められる音楽を作る」初めての経験となりました。
兄との二人暮らし、アルバイト生活をスタートしますが、退路を断って音楽活動に専念。初めての制作売上はわずか2万円でしたが、音楽仲間が加わり徐々にチームで仕事をするようになっていきます。

2010年、26歳の夏にはお笑いのライブイベント「ダイナマイトバカソウル」の音楽制作を任され、「音楽×笑い」という新たな分野に挑戦。イベントは大好評で、大きなステージで自身の音楽が流れ、観客が盛り上がる光景に感動を覚えたと言います。
それから東京で東日本大震災を経験した太陽さん。震災後の街の激変を目の当たりにして生活に不安を感じていた頃「あたりまえ体操」の音楽制作という転機が訪れました。余震の中で制作・録音したデモ音源が採用され、約10年間太陽さんが歌い続けることに。本気で仕事に取り組むことで未来が開けるという経験だったと、自身のnoteで振り返ります。
もう一つの転機は、兄のつてで得た大企業のラジオCMの楽曲制作。その高額な対価を機に、会社設立を決意。「社会人ってすげぇなぁ、カッコいいなぁ」という憧れから、会社勤めの経験がない太陽さんが社会人になりたい思いで選んだ道でした。兄との話し合いの末、兄が社長、自身が取締役副社長として、2011年、27歳で社会人になります。
社会人デビュー!経験を重ねて見えてきたもの
広告音楽プロデューサーとの仕事を通じて、音楽作家としてのスキルを磨き、ますます面白さに魅了されていった太陽さん。「それなり」では通らない世界に妥協せずに取り組み、やりがいを感じながら音楽を創り続けます。もちろん順調なことばかりではなく、業界特有の「仕事の対価の低さ」に苦しむこともありました。制作負担に見合わない対価、予算がないという言葉。
「趣味でなく仕事としてやる以上、使い捨てではなくサステナブルに継続していかなければならない」と痛感し、兄弟で試行錯誤して初めての予算交渉も。その経験を経て、適切な対価を得ながら仕事を継続できるようになりました。
太陽さんは母校の校歌制作という新たな仕事にも挑戦。プレッシャーを感じながらも、無事に完成し、廃校になる音楽室でレコーディング。子供たちが一生覚えているかもしれない歌に関われたことは嬉しい経験となりました。大学での講義や音楽×映像作品の自主制作など新たな挑戦も行いました。

会社としては、初めての社員を採用してから少しずつ社員も増え、都心にスタジオを構え組織体制が整っていきました。
2014年6月、太陽さんは30歳で社長に就任。

着実に売上は増え、第一子も誕生し順風満帆のように見えましたが、徐々に資金繰りが悪化していることに気づいた太陽さん。
このピンチの打開策として自社主催のライブイベントを開催し、CM音楽を通して認知拡大と仕事獲得を狙います。直接的な成果は限定的でしたが、『CM音楽に向き合う姿勢』をお見せできたという確かな手応えを感じたそうです。
自分たちで表現する意義
それから2017年6月には創業からずっと一緒だった兄が退社、組織はまた新体制へ。この7期目はメンバーの入れ替えや資金の確保など、様々な問題に直面しつつ創業以来の緊張を感じた時期でした。組織を存続させるために、初めて営業活動を開始します。まさに死に物狂いの末、最終的に目標を達成しました。「僕たちは今も元気でやってます」というメッセージをライブ演奏を通して伝えたいという思いで、再びライブイベントを開催します。
そして2020年のコロナ禍も、制作業界にとって試練の時期となりました。しかし太陽さんは幾度の危機をアイデアと行動で乗り越えてきたように、ここでも新しいことに挑戦します。
そして2021年に10周年を迎える前に、太陽さんはこれまでの経験から課題に感じていたことをテーマに、自主制作のクリエイティブに取り組むことを決めました。
音楽の重要性を体感できる「GOOD MUSIC VS BAD MUSIC」(※)というものです。
音楽がよくなければ、企画も、映像も、積み上げてきた全てが台無しになることを、日常的に経験している一方で、それが理解してもらえず、隅に追いやられている現状。「もっと誰でも簡単に体験することが、できないだろうか」と思い、多くの仲間と実現したクリエイティブです。
GOOD MUSIC VS BAD MUSIC:https://gmvsbm.higuchi.asia/

(制作者は、広告音楽の責任を理解し案件に一つひとつフルコミットする。発注者は、サウンドの重要性を理解して制作者が才能を発揮できる環境を用意する。相互の歩み寄りが、今こそ必要だ、と太陽さんは訴える)
ライフワークを楽しく、かっこよく
渾身の自主プロジェクトから4年。その後の反応を聞いてみると「創ってやりきっちゃった。プロモーションをしなかったんですよね……」という太陽さん。バズることはなかったそうですが、それでも大きな意義を感じていました。太陽さんが大切にしているのは、売上や報酬の向上ではなく、自分が思う「かっこよさ」を貫くこと。最終的な結果だけでなく、その過程がかっこいいかどうか。働き方すらも作品の一部として捉えています。
そうして生まれた「作品」の一つが、妻・あだちちひろさんと一緒に手がけたGAWです。
夫婦の出会いのきっかけとなったボードゲーム。そのポテンシャルが世の中に十分伝わっていないと感じていたところ、原村に居を構えることにしたことやコロナ禍、そして数々の経験がヒントになって、2024年5月にGAWを立ち上げました。

太陽さんは、音楽プロデューサーでありながら施設運営やPTA会長など、ジャンルにとらわれない仕事に次々と挑戦しています。
「計画的に決めてやるってことは少ない」という太陽さんは、出会いがあってチャンスが訪れたとき、かっこいいかどうかを軸に、自分の時間の使い方を決めていました。
「油断するとライスワーク100%になってしまう。ライスワークももちろん大事だけど、やればやるほど、そこじゃないと気づいたんです」
稼ぐためのお仕事と割り切ることもできるけど、それでは時間がもったいない。時間を無駄にしないためには、できるだけ好きなこと、趣味的に楽しくやること。社内外問わずに共感してくれる人と仕事すること。
さらに、仕事を楽しめるかどうかはマインドセット次第だと太陽さん。同じ仕事でも、ゲームのように捉えることで趣味性が増し、日々の取り組みに新たな視点を加えられるのだと言います。

大切なのは、自分がどこに快感を見出すかを意識し、その瞬間を楽しむこと。
「例えば、音楽制作においてクライアントOKが出た後にバイオリンの生録音を加えることは、経済効率の面では無駄に思えるかもしれない。しかし、それをすることで作品が格別なものになり、ライフワークとしての価値が生まれるわけです」
そういう太陽さんですが「20代の頃はそんなことには気づいておらず、もうどうしようもなかった」と笑います。
人生のどのタイミングでも、出会いとチャンスを大切にしながら、「かっこいいかどうか」という軸を持って行動し、試行錯誤を重ねることで“らしい”カタチに近づいてきた-そんな太陽さんが、8月のBigbeat LIVE 〇〇セッションに登壇予定です。
Bigbeat代表の濱口とは原村のご近所さんとして出会い、「口約束で終わらせない」という太陽さんのモットーから生まれたご縁によって、この機会につながりました。
「Bigbeat LIVE、いいですね!自分もライブイベントをやったけど、こういう会社のチカラ総動員のイベントって絶対やったほうがいいと思います」
当日は「あと少し力を入れたらライフワークになりそうなのに、緩めたせいで届かなかったっていうのはもったいない!マインドセット次第だということを伝えたい」と太陽さん。大丈夫!挑戦してみたらいいよ!と、ビジネスパーソンにエールを送ります。

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樋口太陽さんとともに「働き方と選ばれ方」のセッションを盛り上げてくださる
ホストの斎藤昌義さんの記事はこちらから
講演者のエイミーさんの記事はこちらから
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