BigbeatLIVE 2025.07.01 ビジネスと競技の「二刀流」|ゴルファー経営者 ツーリッチ豊島 豊さんに学ぶ、適応力の重要性

ゴルフ界のエリートコースとは無縁の道を歩みながら、日本ミッドアマチュアゴルフ選手権競技通算5勝、日本アマチュアゴルフ選手権競技15回出場という輝かしい実績を築いてきた豊島 豊さん。国内屈指のアマチュアゴルファーであると同時に、ゴルフイベント事業を営む株式会社ツーリッチ(以下 ツーリッチ)の代表としてゴルフイベント事業で業界に新しい風を吹き込んでいます。8月1日開催の「Bigbeat LIVE 2025」に登壇いただく豊島さんに、当社取締役 大滝が話を伺いました。



株式会社ツーリッチ 代表取締役 豊島 豊さん

 

「英才教育とは無縁」のゴルフ人生

豊島さんがゴルフと出会ったのは15歳のとき。きっかけは、仕事の付き合いでゴルフを始めた父親の練習場についていったことでした。多くのトップ選手が幼少期から両親の指導を受けて育つのと比べると、豊島さんのゴルフキャリアのスタートは遅めでした。

高校時代はボールを打ちたい一心で練習場でアルバイトし、貯めたお金でクラブを買い、自分の行ける範囲でショートコースを回る日々。運転免許もなかったため、練習場で知り合った「上手いおじさんたち」に連れて行ってもらっていたといいます。

大学ではゴルフ部に所属したものの、他大学の同学年には後にツアープロとなる星野英正さん、近藤智弘さん、矢野東さんといった面々が揃います。華々しい成績を収める同期を横目に、豊島さん自身の戦績は「ほぼというか、何もない4年間だった」と振り返ります。

転機となったのは、大学3年生の時に豊島さんがキャディを務めた丸山茂樹プロの存在です。

「プレジデンツカップ(ゴルフの国際大会)でMVPを取って帰ってきても、空港に報道陣はいません。翌日のスポーツ紙の一面は、中田 英寿さんが移籍後初めて練習したという記事。こんなすごいゴルファーでも、悩んで苦しんでプロ生活を送っているんだなと」

ツアープロとして食べていくことの厳しさを知った豊島さん。それでも、ゴルフへの情熱は消えませんでした。

 

出てみたいから始まり、「令和最強のおじさんゴルファー」に

大学卒業後、豊島さんは都内のゴルフショップに就職。このゴルフショップは当時石岡ゴルフクラブというゴルフコースを所有しており、豊島さんも平日はショップで働き、週末は送客のためにゴルフ場へ行くという生活を始めます。

その後、石岡ゴルフクラブはプロトーナメントの誘致に成功し、豊島さんもスタッフとして携わりました。またゴルフショップも政財界の著名人が通う店舗であり、独立する際にスポンサーになってくれるなど、人との縁と経験を築きました。

こうした吸収力の高い20代のうちに培った原体験が、ゴルファーだからこそわかるゴルフのトーナメントを作りたいという思いや、その後の事業にもつながったと振り返ります。

ゴルフショップで働きながら、プレイヤーとしての道も探っていた豊島さん。25歳の冬に競技ゴルフに本格的に取り組み始めます。目標は明確でした。

「日本一になるぞとか、そういう目標はありませんでした。学生時代に全く歯が立たなかった日本アマチュアゴルフ選手権競技に『出てみたい』と思いました」(豊島さん)

この「出てみたい」という素直な気持ちが、後の快進撃につながります。初出場から継続的に挑戦を続け、気づけば所属クラブの先輩が持っていた14回という出場記録を超える15回出場を達成することになります。



さらに30歳から(※現在は25歳)出場可能になった日本ミッドアマチュアゴルフ選手権競技に出場した豊島さんは、2023年度の日本ミッドアマチュアゴルフ選手権競技で前人未到の3連覇、通算では5勝を挙げ、「令和最強のおじさんゴルファー」とも呼ばれるようになりました。

日本アマチュアゴルフ選手権競技は学生主体の大会になりつつありますが、48歳になった今も「あと何回出られるか分かりませんが、可能な限りチャレンジしたい」と話し、最年長出場記録を視野に挑戦を続けています。

 

適応力を武器に、ゴルフ業界に新しい価値を

毎年開催コースが変わる日本アマチュアゴルフ選手権競技ですが、その中で安定したパフォーマンスを発揮する豊島さんの適応能力の高さは事業にも活かされています。

ショップを退職したのちに29歳で共同経営のインドアスタジオを立ち上げ、2011年にツーリッチを創業。現在はトーナメントプロデュース・企業ゴルフイベント企画運営、インドアゴルフレッスンアカデミーの運営を事業の中心としています。最初に手がけた大きな仕事は、現在も14年間携わり続けているスタンレーレディスホンダゴルフトーナメントでした。

「プロトーナメントの運営を手掛ける企業が提供する企業ゴルフイベント」という独自性に興味を持つクライアントも多い中、ツーリッチの持ち味は「クライアントごとに異なる多種多様なニーズに応える適応力」にあります。画一的なアプローチではなく、小回りの利く規模を活かして、それぞれの企業に合わせた提案を行えることが強みです。

こうした事業について、大滝が「豊島さんご自身が外せないポイントをあえて挙げるなら?」と尋ねると、豊島さんは「自分が楽しいと思うものを具現化する」ことを挙げました。単なる遊びではなく、参加者が「真剣にチャレンジしたい」と思える場を提供することで、ゴルフへの意欲を高めてもらう仕掛けを作っているのです。

この姿勢や仕掛けが、練習場に通う回数やラウンド数の増加、道具の新調といったゴルフ業界全体の活性化に貢献する好循環を生み出しています。



特に印象的なのは、2018年から主催している「ワールド・アマチュア・ゴルファーズ選手権(WAGC)」の取り組みです。これは各国で行われる予選大会で5つのフライト(グループ)ごとに選ばれた代表が世界大会に挑戦できるというもの。

「アマチュアプレイヤーで世界の舞台に挑戦できる機会は決して多くありません。だからこそ、この大会には特別な思いを込めて運営を行っていますし、できる限り続けていきたいと思っています」(豊島さん)

 

若いときは「もっと働く、動くべき」

8月のBigbeat LIVEに登壇する豊島さんですが、「若い世代に伝えたいメッセージ」はなにかと大滝が伺うと、明快な答えが返ってきました。

「もし30歳の自分が目の前にいたら、『もっと仕事をしなさい』と言いますね。イベント会社は信頼できる仲間がいないと立ち行かないので、時間の使い方と人とのコミュニケーションを大いに学べば、必ず良いことがあります。一見余計なことを話したり、余計な場所に顔を出したりすることも仕事につながるんです」

さらに、「同世代との付き合いに加えて、年上の方々からいかに情報を引き出し、その人がどれだけ苦労してきたのかを見ることが大事。困った時に助けてもらえる信頼関係も築くことができます」と、世代を超えた交流の大切さも強調します。

ゴルフ界のエリートコースとは無縁だった豊島さんは、継続的な挑戦と適応力で独自の道を切り拓いてきました。その生き方は、王道や定石といったレールに乗らなくても「自分らしさ」で生きる道があることを教えてくれます。

働け、動け——シンプルながら力強いメッセージに、豊島さんの「らしさ」が凝縮されています。



 
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