BigbeatLIVE 2025.09.03 LIVE レポート | 日本とASEAN・国籍を超えて文化をつなぐ熱い想い ー Session3 ー
8月1日に開催されたBigbeat LIVE 2025。
ご参加いただいたライターの皆さんに、いち参加者としての視点から
LIVEの振り返りとレポートを執筆いただきました。
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日本や中国など、経済成長に陰りが見える国が増える一方、ビジネスの勢いが加速している地域があります。それが「ASEAN(東南アジア諸国)」です。
2025年8月1日(金)、東京ミッドタウン日比谷「BASE Q」で開催されたBigbeat LIVE 2025 では、「らしさで未来はグッとよくなる」をテーマに、国内外で活躍する15名が4つのセッションを展開。セッションテーマの一つが「ASEAN」です。
Session3では「ASEAN」へ行った、または「ASEAN」から来日した5名の講演者が登壇しました。
そこから浮かび上がったのは、登壇者に共通する「熱い想い」でした。
本記事では、現地を取材したライター・上杉の視点を交えつつ、「ASEAN」セッションの模様をダイジェストで紹介します。
Bigbeat LIVE 2025で最も多様性に満ちたセッション
本セッションのタイトルは、「Ignite your soul 強い想いと理想だけを道標に。」。タイトル通りの熱量で、東南アジアや日本で活躍する経営者たちが登壇しました。
まずは、Feedforce Vietnam CEOの森 大輔さん。大学時代のベトナムでの経験を機に、20代後半でホーチミンで起業しました。
つづいて、株式会社MONOHA 代表取締役のスワンシン・ラッチャタさん。外国人の視点を生かし、京都で西陣織の新たな価値を発信しつづけています。
さらに、株式会社BTKを経営する、兄のブイタンユイさん(社長)と弟のタムさん(副社長)。タムさんの日本留学中のある体験がきっかけで、日本でバインミー専門店「バインミーシンチャオ」を展開中です。
本セッションのホストは、Jeducation Co.,Ltd. 代表取締役の長谷川卓生さん。日本への留学支援や「バンコク日本博」を通じ、25年以上にわたり、タイをはじめとする東南アジアと日本とのあいだに、新しい関係を次々に創出しています。

ホストのJeducation Co.,Ltd. 代表取締役 長谷川卓生さん
国際色豊かなバックグラウンドの面々による本セッションでは、「ビジネスへの想い」「異文化での苦労」「未来への展望」をめぐり、熱い対話が交わされました。

海外起業のきっかけはさまざま・共通するのは「熱い想い」
国籍もビジネス領域も異なる4人。セッションは「なぜ異国で起業したのか」という問いから始まりました。ホーチミンでデジタルマーケティング支援を行う森さんは、大学時代のベトナム滞在が原点。語学や能力が高いのに、活躍の機会に恵まれない友人との出会いをきっかけに、「ベトナムでも能力に見合う雇用をうみ出したい」と起業を決意しました。

Feedforce Vietnam CEO 森 大輔さん
スワンシンさんの動機は、日本文化への強い探究心です。
「なぜ日本は、素晴らしい作品を生み出せるのか」という関心から京都へ留学。寺に住み込みで水墨画に没頭するなど、日本人以上に日本文化の技術や思想を学びます。その過程で「自分の探し求めていた本質は日本にあった」と確信。日本の伝統工芸を世界へ伝えるため、また、後継者不足に悩む伝統工芸職人を支えるために、ビジネスをはじめました。

株式会社MONOHA 代表取締役 スワンシン・ラッチャタさん
一方、「バインミーシンチャオ」を展開するユイさん・タムさんの企業のきっかけは、東京・アメ横で見たケバブの行列。「トルコのケバブのように、ベトナムのバインミーも日本で通用するはず」と起業を決意しました。
異国で直面した苦労を克服した方法とは?
長谷川さんは、つづいて「海外での苦労をどう克服しましたか?」と問いかけます。森さんが挙げた苦労の一つは「離職率の高さ」です。ベトナムでは起業志向の若者が多く、1年ほどで転職することも珍しくないのだそうです。さらに、創業時のアプリ開発事業は有料化の壁で伸び悩み、デジタルマーケティングに軸足を切り替える決断をし、現在に至っているとのこと。
「やりたいことだけでなく、自分たちの能力でできることを考え、行動しつづけたことが突破口になった」と振り返ります。
スワンシンさんが苦労したのは、「職人との関係づくり」でした。
繰り返し足を運び、学ぶ姿勢を見せることで、少しずつ信頼が得られたと言います。
「仕事は結局、『人間』が大切。関わる方々の楽しさや幸せを大切しながら協働すれば、苦労も乗り越えられる」と語りました。
ユイさん・タムさん兄弟の最初の困難は、日本での「物件契約」でした。
外国人という理由だけで断られるケースもあったそうです。飲食業を行うための物件では、日本国籍の連帯保証人が必須条件だった中、「大学時代の恩師が連帯保証人を引き受けてくださり、出店できました。今も心から感謝しています」とユイさんは述べました。

株式会社BTK 左:兄のブイタンユイさん(社長)右:弟のブイタンタムさん(副社長)
「海外に出ることが自分の国のためにもなる」ーー未来への展望
セッションの最後に長谷川さんが投げかけたのは、「これからの展望」でした。森さんは「質の高い雇用を生み、能力に見合う給料を提供しつづけたい」と熱く語ります。さらに、デジタルマーケティングやEC領域の事業の発展と、「同世代の若い仲間とビジネスができるベトナムの環境」への感謝を言葉にしました。
スワンシンさんは「今の協働する方々との仕事を大切にしたい」と謙虚に語りながら、日本文化をタイだけでなく世界に発信し、あいだをつなぐ架け橋になりたい」と笑顔で宣言。
タムさん・ユイさんからは、「ハンバーガーといえばマクドナルドが思い浮かぶように、『バインミーといえばシンチャオ』と認知される存在になれるよう、海外展開も視野に努力したい」という意気込みがシェアされました。
60分、ノンストップで「熱い想い」が交わされた本セッション。
その締めくくりに、長谷川さんは、「みなさん想いは様々ですが、共通していたのは『海外に出ることが自分の国のためにもなる』という点。私自身、タイでのビジネスが、どのように日本の役に立つか?をいつも考えています。本セッションがご来場の皆様の何かしらの参考になったら幸いです」と結びました。
「従来の閉じた世界を飛び出し、未知や困難に直面しながらも、『熱い想い』をもって対話と協働を重ねることによって、新しい価値を生み出している」
そんなことを、登壇された5名のお話を通して感じることができました。

編集後記:Bigbeat LIVE に参加して
Session 3 の取材を通して感じた「一歩飛び出し、熱い想いで新しい価値を生み出している」ということ。それは、Bigbeat LIVE 2025 全体にも、貫かれている姿勢であるように感じました。
つまり、「普段はクライアントの広告を支援する立場である広告代理店が、自らイニシアチブをとって多様な登壇者や参加者が集うライブイベントを主催する」という行動自体に、熱い想いを感じたのです。
今日は、生成AIの登場が象徴するように、常識が崩れ、既存の業界や慣例にとらわれない新たな協働が求められる時代になっています。そのような中、特設サイトに設けられた「サポーター募集」のような参加・関与の場や、アトラクションコーナーでの交流機会づくりの工夫などからも、「多様なパートナーとワクワクを一緒に創造したい」という想いが体現されていました。
今回の原稿執筆にあたっても、「ライター視点で参加して感じたことを率直にレポートしてほしい」との依頼がありました。普段は舞台裏の立場になりがちなライターも、参加者の一員として、このような場に加われたことを素直に嬉しく感じました。
極め付けは、イベント最後の「Bigbeatの『おきゃく』」です。お酒や食を振る舞っての対話と交流の場では、新たな出会いと久々の再会があちこちで生まれ、笑顔と喜びの声で賑わっていました。これが「ビッグビートらしさ」を象徴する、ぶっちぎりの絶景であり、Session3のタイトルのように、「ignite your soul(参加者の熱い想いを燃え上がらせる)」な場所であるように感じました。
執筆:上杉 公志
撮影:野村 昌弘