BigbeatLIVE 2025.07.01 同世代とともに、成長著しいベトナムでビジネスを | Feedforce Vietnam CEO 森大輔さん
2025年8月1日に開催される「Bigbeat LIVE 2025」。
“らしさ”というキーワードを軸に「経営」「ASEAN」「コミュニティ」「働き方と選ばれ方」というテーマでセッションを展開します。
今回ご紹介するのは、「ASEAN」セッションにてご登壇をいただく森 大輔さんです。
近年、東南アジアは新たなビジネス市場として大きな注目を集めています。中でもベトナムは、経済成長の勢いを背景に、日本企業の進出が相次ぐ国のひとつです。
こうした流れに先んじて、学生時代からベトナムでの留学やインターンを経験し、20代にして現地でビジネスを立ち上げた人物がいます。
それが、Feedforce Vietnam 代表取締役の森大輔さんです。
森さんはなぜベトナムで起業を志したのか。現在のベトナムの勢いをどう感じているのか。そして、日本市場との違いや、今後の展望について伺いました。
さらに今回は、ベトナム出身で森さんと大学時代から友人の、ビッグビートのベトが登場。森さんの“推しポイント”を紹介します!
「能力を活かせる雇用機会をベトナムに創出したい」――創業の原点となった一人のベトナム人との出会い
デジタルマーケティングとEC支援を手がける Feedforce Vietnam は、2021年に設立されました。代表の森大輔さんのもと、現在は業務委託メンバーを含む7名体制で事業を展開しています。
同社の特徴は、Facebook、Google、Shopee、Lazada、TikTok Shop、Amazon、Shopify、LinkedIn、ZALO、KOLといった多様なチャネルを活用し、マーケティングのみならず、テクノロジーやクリエイティブ領域を含む総合的な支援を行っている点にあります。SaaSなどのソフトウェア開発の経験や、日本からの越境EC事業で培った知見を活かし、現在は広告代理業としてベトナムや東南アジア市場に対応したサービスを展開しています。
森さんが大切にしているのは、「メンバー一人ひとりがいきいきと、やりがいを感じながら働くこと」です。特に重視しているのは、「働く人の思考」と「会社の目指す方向性」との一致だといいます。
森さんは、どのようなきっかけでベトナムに強い関心を持つようになったのでしょうか。
そのきっかけは、大学時代にまでさかのぼります。
最初のきっかけとなったのは、大学1年生の夏休みです。筑波大学で国際関係を専攻していた時に、ボランティア活動の一環としてベトナムを訪れたことでした。
そこで出会ったのが、海外経験ゼロでTOEFL 111点という高スコアを持ち、モチベーションと論理的思考能力が高いベトナム人の友人です。友人のような高い能力を持つ人でも、当時の月収はわずか2万円ほどだったとのこと。そんな現実に直面し、森さんは強い衝撃を受けます。
「能力に見合う機会を提供したい」「ベトナムで質の高い雇用を創出し、価値あるサービスを現地と共に広げていきたい」(森さん)
この思いこそが、森さんが現在の事業を立ち上げる原点となりました。

※ボランティア活動時の様子
★ベト’s Comment★
語学力や専門スキルを持っているにも関わらず、正当な評価がされないのはとても残念です。だからこそ、森さんのように「能力に見合った機会」を提供しようと行動してくれる人の存在は、とても貴重だと思います。ベトナムの若者が、自分の力を発揮できる環境がもっと増えていくことを心から願っています。
語学留学と海外インターンを経て、ベトナム起業へ
ベトナムでのボランティア体験を経た森さんはすぐに行動を起こします。大学1年の終わりにあたる春休みの2カ月間と、その後の夏休み3カ月間を活用して、ホーチミン市師範大学へベトナム語を学ぶために留学したのです。ゼロからのスタートながら、初心者向けのマンツーマン授業で、約5カ月間にわたり学習をつづけました。「最初は発音がとても難しくて苦労しましたが、200〜300時間ほど学ぶうちに、徐々に聞き取れるようになりました」と森さんは当時を振り返ります。この語学留学によって、日常会話には困らないレベルの語学力を身につけました。

※ホーチミン市師範大学留学中の様子
さらに大学2年の春休みには、視野を広げるため、南アジア・スリランカにてインターンシップに参加します。NGO「International Movement for Community Development(IMCD)」の活動に加わり、奨学金支援や書籍を集めて大学に寄贈するプロジェクトに従事しました。
この経験を通じて、アジア圏内でも南アジアと東南アジアには大きな文化的な違いがあることを実感した一方で、ベトナムと日本には多くの共通点があると体感したといいます。

※スリランカでのインターンシップの様子
森さんは、同時期には中国に渡航したり、幼少期にアメリカ在住経験もありましたが、あまりにも規模が大きく、「自分がどのように貢献できるか、イメージが持てなかった」と語ります。こうした比較体験を経て、森さんは「先進国」よりも「成長途中にある国」、そして文化的な親和性のあるベトナムでキャリアを築くことを決意しました。
このような経験を経て、ベトナムへの思いを強くした森さんは、大学3年時には1年間休学。ベトナム・ダナンにあるIT企業の社内ベンチャーのお土産事業でインターンとして働きます。キャラクター商品の新規事業立ち上げを任され、商品企画から営業活動まで幅広く担当しました。社員と同じ立場でビジネス経験を積みました。
「いくつかの成功体験はあったものの、マーケティング・ITを中心とした力不足で悔しさを味わいました。たった1年ではほとんど何も残せないことを痛感しました。」


※Happy Danangでのインターン。発注・営業など多岐に渡る仕事に従事していました
こうした多様な海外経験を経て大学を卒業した森さんは、2017年、広告運用コンサルタントとして株式会社フィードフォースに入社します。その後、新型コロナウイルスの影響で計画は一時延期されたものの、2021年11月、森さんはホーチミン市で「Feedforce Vietnam」を設立。代表として現地での事業を本格的にスタートさせました。
「ベトナムでの起業にあたって、経営の難しさを経験として分かっていなかったので、当時はむしろあまり不安はなく、勇気を振り絞って決めたというよりは、ごく自然な流れではありました。」と森さんは当時を振り返ります。
数ある都市からホーチミンを拠点に選んだ理由については、「ダナンではインターンを経験しましたが、人口は約100万人で、ホーチミンよりも所得水準が3割ほど低く、外資の進出もまだ少ない。より市場としての可能性がある場所でビジネスをしたいと考え、ホーチミンを選びました」と話してくれました。
★ベト’s Comment★
最近はベトナムに興味を持つ人が増えてきていますが、十数年前のことを思うと、森さんがベトナムで挑戦されていたことは、本当に珍しいケースで勇気が必要な判断だったと思います。 現在、日本人の間でベトナムに対する認知度が高まっているのは、少なからず森さんのご尽力によるところも大きいと感じています。 これからもぜひ、ベトナムを盛り上げていただければと思います。
森さんが語る「ベトナム市場で成果をあげるために欠かせない視点」とは
2021年11月の起業から3年半が経過しました。ベトナムで本格的にビジネスを進める中で、森さんはどのような気づきや学びがあったのでしょうか。まず、日本とベトナムの違いについて尋ねると、森さんはまず「都市部における変化のスピード」を挙げました。
「都心ではスクラップアンドビルドのスピードが早く、半年で街並みが様変わりするのも当たり前。挑戦と撤退のサイクルが非常に速いのが特徴です」と語ります。ECやデジタルマーケティングの分野でも同様で、たとえばTikTok Shopのような動画コマースが急拡大し、流通額が前年比1.5倍といった成長も珍しくないといいます。
こうした市場環境において、森さんが東南アジア市場を考える上で重要だと語るのが、次の2つの視点です。
1つ目は、「ベトナムの“80%”をどう捉えるか」という視点です。ベトナムの人口は約1億人。そのうち、首都ハノイと商業都市ホーチミンに暮らすのは2,000万人程度で、残る8,000万人は地方に住んでいます。地方では可処分所得が都市部に比べて低く、ECの普及も限定的です。特にサプリメントなどの高単価商品は、都市部でしか売れにくい傾向があります。全国を一律に対象とするのではなく、「都市部の20%」に絞った工夫が、マーケティングの効率を高める鍵となります。 これは日本よりも全般的に貧富の差が大きい、他の東南アジア各国にも当てはまり、「都市単位のマーケティング」が必要になります。
2つ目は、「ベトナム単体でなく、東南アジア全体を一つの市場として捉える」という視点です。東南アジアは、人口約7億人の巨大な成長市場。販売戦略策定の際には、ベトナムだけでなく、マレーシアやタイ、インドネシアなど、他国も視野に入れた展開も重要になります。

※デジタルエージェンシーの経営者の皆さんと
★ベト’s Comment★
都市部の変化の速さやECの成長は、まさに今のベトナムを象徴しています。最近ではホーチミンにメトロ1号線も開通し、街の景色もどんどん変わっています。人々の生活も街の成長によって変わっています。例えば最近道端の屋台の15,000ドン(約80円)の飲み物でもほとんどキャッシュレス決済が可能になってきています。一方で地方とのギャップはまだ大きく、マーケティングは都市部に絞るのが現実的だと感じています。
最後に、今後の展望について森さんにたずねると、「現在のエージェンシーとしての仕事は好きですが、まずはしっかりと顧客貢献を重ねて売上を上げた上で、今後は労働集約型ではない事業開発にもチャレンジしたい」とのこと。かつてはEC運営のオペレーション効率化を目的としたツールを開発した経験もある森さんですが、「当時は有料化のフェーズでうまくいかなかった悔しさがある。今の技術、特に生成AIなども活用しながら生産性を上げ、必ずしもSaaSでなくとも、ストック型でスケーラブルな事業構築をしたいです。」と意欲を語りました。
30代を迎えた森さんの挑戦は、さらにスケールを広げてこれからも展開していきます。
執筆:上杉 公志
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