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BigbeatLIVE 2025.07.15 道なき道にこそ、自分が役立てる場所がある | "ピンときた"を大事に挑戦を続ける河尻 和佳子さん

2025年8月1日に開催される「Bigbeat LIVE 2025」。
今回ご紹介するのは、2つ目のセッション「コミュニティに関わったら、仕事も人生も動き出した。~遠くへ行きたければみんなで行け、の実践術~」にご登壇をいただく河尻和佳子さんです。

東京電力から流山市役所、そして中央省庁へと二度の転職を経験した河尻和佳子さん。
現在はコミュニティマーケティングマネージャーとして、全国の自治体や市民との新たな関係構築に挑んでいます。
本記事では、河尻さんに、前例なき道を選び続ける原動力とコミュニティを通じた変革への思いを聞きました。

前例のない環境への転職理由は「ピン」と来たから

東京電力で14年間、営業やマーケティングを担当していた河尻さん。
仕事は楽しく、一生勤めるつもりでいたものの、流山市が最大5年間の任期付き職員を募集しているという新聞記事を見て「ピンときた」ことで応募したそうです。
将来的には管理職のキャリアも視野に入る中での転職に、当時の上司からは「もう一度考え直したほうがいい」と言われたとのこと。

慰留を振り切って転職した流山市では、自治体では珍しい「マーケティング職」として着任。
前例のない取り組みだったため、「自分から動かないと仕事がないという状況に慣れておらず、1年目は辛かった」と振り返ります。
しかし、「待っていても誰も何もしてくれない」と腹を括り、「前例がないからこそ自分で全てのルールを決められる」という楽しさに気づき、5年任期を修了後に公募の面接と試験を受け直すという形で16年間勤めることになります。




16年勤めた流山市役所は天職だったと語る河尻さん。
しかし、次第にその環境の慣れに、ある種の怖さを感じるようになります。
「外から見たら自分ってどう見えているんだろう。私じゃなくても組織が回る」段階になったと感じたことも後押しとなり、新たな挑戦の場を探し始めました。

現在の職場である中央省庁は、当時まさに「創っていく」まっただ中にありました。転職を相談した知人10人中9人から「大変そうだから行かない方がいい」と忠告されたそうです。

ですが、新たな環境で自分を試したいという思いを抱えていた河尻さんは「正月休みの時にたまたま募集を見て、元旦に申し込んだ」という軽やかさで、自らその渦中に飛び込んで行ったと言います。

「周りの10人中9人に『行かない方がいい』と言われたら、もう行くしかないですよね。」



※16年間つとめた流山市を退職する日
 市民の皆さんが開いてくれたイベントには多くのひとが集まり、花束を持つ河尻さんを見送りました



安定した環境を捨てて、何度も前例のない道へ飛び込む河尻さん。
そのモチベーションの源泉は、「難しい環境だからこそ、より良くしていくために自分にできることがあるのではないか」という思いです。
そして、その純粋な思いをさらに加速させるのが、河尻さんならではともいえる「お役立ち度で目立ちたい」という欲求です。

大手企業などでは埋もれてしまうかもしれない自分でも、「改革の途上にある自治体や省庁のいち組織なら”あの人は役立っている”という目立ち方ができる」。
河尻さんは「実は、自分でやりたいことってそんなにないんです」と語り、誰かに「ありがとう」「いてくれてよかった」と感謝されること、自分のスキルが役立ったと実感できること自体が、何よりの喜びだと続けます。

「予測がつく快適な環境は、逆に怖いんです。『あの時は大変だったね』といつか振り返った時に笑って話せる、そのための踏み台になりたい。だから、いつも前例のない場所を選びたいと思っています」




コミュニティを動かすのは「楽しさ」

現在、河尻さんが新たに取り組むコミュニティマーケティング。
どうしたらより多くの人に伝わるのか、自分たちだけでなく一緒に伝えてくれる仲間を増やす、コミュニティをつくる挑戦を始めています。

河尻さんはこうしたコミュニティを「同じ思いや旗のもとに集う仲間たち」と定義し、上下関係がないからこそ「自分の正義を押し付ける”べき論”でコミュニケーションしないことがすごく大事。
その人にとってどうメリットがあるのか、何が楽しいのかという視点でアプローチすることが重要」なのだと、コミュニティをうまく回す秘訣を語ります。

「新しい挑戦に『面白い』と言ってくれる人は10人中2人。でも、その仲間と、周りをどんどん巻き込んでひっくり返していく過程が、たまらなく楽しいんです。遠くへ行きたければ、みんなで行け、ですね」

コミュニティマーケティングの本質は「自分が楽しくやっていると、外から見ても楽しそうに見えるから、巻き込まれる人も増えていく」ことにあると示す河尻さん。
「正しさ」ではなく、「楽しさ」でデザインすることが大切だと河尻さんは強調します。

「楽しさ」を軸に置く一方、河尻さんには組織人としての厳しい哲学もあります。

「納得できない仕事でも、まずは成果で応える」


そのスタンスがあるからこそ、河尻さんの語る「楽しさ」は、単なる理想論ではない深みと説得力を持つのです。

コミュニティの中に入って活動する河尻さんですが、意外なことに「人に会うのは、実は得意ではない」と大胆な告白をします。
それでも参加し続ける理由は、「人と話すことによって、自分だけの視点では分からなかった『自分らしさ』とか『自分のできること』が他者との関わりで分かる」から。
だからこそ、コミュニティに参加して「合わなかった」と感じた経験も、失敗にはならないと言います。

「正直、人と積極的に会うのは気楽ではありません。でも、他者という鏡に照らされて、初めて自分の輪郭が見えてくる。だから、大変でも人に会い、コミュニティに関わり続けるんです」

好きなことを仕事にするという考えが主流になりつつある現代社会で、「自分は何が好きなのか分からないので、何になりたいという目標もない」と語る河尻さん。
タイパ・コスパを重視するあまり、自分に合うか分からないコミュニティに入る最初の1歩を踏み出せない人も少なくない中で、河尻さんは「嫌いなことを避けていくという選択肢もすごく大事なことなので、実際に飛び込んで合わなかったというのはタイパやコスパが高い経験」だと示します。

人と関わることで道が開ける

『行き倒れて死ぬ』。それが私の最後の目標なんです」と笑う河尻さん。
「ピンと来た船に乗る」というスタイルを貫き、人生の最期まで働き続けたいという思いを持っています。
副業が可能な現在の組織を選んだのも、「課題があったり、困ったりしているところのお役に立てれば」という思いからで、活躍の場をさらに広げることに意欲を見せています。

そのために必要なのは、「アンテナを研ぎ澄まし続けること」だと河尻さんは語ります。
「『ピン』ときても、そこに理由はない。でも、その感覚は人と会ったり、コミュニティに関わっていないと鈍ってしまう」からこそ、これからもさまざまな場所に参加し続けるのです。

コミュニティマーケティングは単なる手法ではなく、人と人とのつながりの中で自分らしさを発見し、共に価値を創造していくプロセスそのもの。
河尻さんによれば、「らしさ」とは自分で定義できるものではなく、「他者と関わることで初めて認識できるもの」だと言います。
外のものさしに触れることで自分の可能性が広がり、それがまた新たな挑戦への原動力となっていく好循環の姿なのです。


今までも、そして現在も、河尻さんの根底にあるのは、「人の役に立ちたい」という純粋な思い。
そして、その思いを最大化させる「お役立ち度で目立ちたい」という欲求。これらを原動力に、あえて困難な渦中へと飛び込み、多様なコミュニティとの関わりの中で解決策と自分らしさを見つけ、逆境すら楽しんでしまう。
そんな河尻さんの生き方は、まさに「らしさで未来はグッとよくなる」というBigbeat LIVE 2025のテーマそのものです。

自分らしさを出しながらコミュニティと関わることで、新たな出会いや前例のないモノが生まれ、誰も見たことのない世界を見ることもできるでしょう。


※Bigbeat LIVE 講演者決起会にて、コミュニティセッションメンバーと


河尻さんとともに本セッションを盛り上げてくださる
他の登壇者の記事はこちらから

小島 英揮さん
▶▶▶パラレルマーケター小島さんの野望~コミュニティマーケティングとマーケターのキャリアパス、それぞれの「あたりまえ」とは?~

谷口 ちささん
▶▶▶職業人生は決して、単調な一本道ではない!~谷口さんが考える「キャリア」とは?~

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