Bigbeat 2026.02.20 越境クリエイター・井上大平 ー異例のキャリアを重ねたクリエイターのデザインへの想い
14年前、筆者と同じタイミングで入社をした、“ほぼ同期”とも言えるクリエイティブプロデューサーのタイヘイさんが、7年の空白期間を経てビッグビートに帰ってきてくれました。
ここ最近は、お子さんの“推し活”に付き合って様々な分野の引き出しを増やしているという、3児の父でもある“クリエイター・井上大平(タイヘイ)“の素顔と、その経歴、そしてデザイン・クリエイティブへの想いを聞きました。

ビッグビート帰還へ、心を動かしたラブコール
ー まずは、おかえりなさいタイヘイさん!7年ぶりのカムバックに至った、復帰の経緯をぜひ教えてください。
タイヘイ:
2019年末まで7年間ビッグビートに在籍しており、今回7年ぶりのカムバックになります。
復帰のきっかけは大滝新社長からのラブコールでした!
大滝さんとはビッグビート退職後も定期的に連絡を取り合っては一緒に飲みに行ったりしていたのですが、社長に就任して間もない昨年の11月ごろ、水炊きを食べながら復帰のお誘いをいただきました。
でも凄くぎこちなくて、スーパー遠回しのラブコールだったので、思わず「全然告白してこないウブな中学生か!」と突っ込みそうになりました(笑)
ちょうど転職活動中だったため迷いましたが、「日本のIP」と「海外の仕事」が転職においての一番大きなキーワードだったので、「海外の仕事」という面で、ビッグビートはASEAN領域に力を入れていて海外案件にも挑戦できると感じ、ビッグビートへの復帰を決めました。
ー これからビッグビートでどのような役割を担われるのでしょうか?
タイヘイ:
大滝社長からの「ビッグビートのクリエイティブ力アップ」という依頼が現状の僕の最重要ミッションです!ツツミ師匠(※)がいた時代以上のクリエイティブを実現していく責務があると思っています。
ツツミ師匠と全く同じ業務をしているわけではないので、師匠を越えるということではなく、師匠に肩を並べるだけの「新しい領域での実績と価値をビッグビートで作ること」が自分の中でのやるべきことだと考えているということです。
(※)クリエイター 堤章男のこと | ニシタイ 西葛西駅前タイムズ
ー 具体的には?
タイヘイ:
ビッグビートの大切なクライアントに対して寄与できるような、クリエイティブ実績をつくれる案件の獲得に力を入れていきます!広告、映像、イベント、会社案内など、企業のブランディングの核となる領域を攻めたいですね。
よりハードな環境へ、挑戦し続けた20年
ー そもそもクリエイティブ・デザインの道に進んだきっかけはなんだったのでしょうか?
タイヘイ:
大学時代に居酒屋のオープニングスタッフとして働いたとき、内装づくりを手伝った経験が大きかったです。“文化祭みたいで楽しい!”と感じたのを覚えています。たまたまバイク事故で得た(両足複雑骨折&右手骨折の重傷の車いす生活という代償つきでしたが・・・)保険金が手元にあり、それを全額つぎ込んでダブルスクールで専門学校に1年通いました。そこで建設設計のほんの一部を学び、インテリアデザイナーを目指したのがクリエイティブ業界に足を踏み込んだ最初の1歩でした。
当時はいわゆる「一般的な就職活動」というものをせずに、建築系雑誌を読み漁っては、求人を出している事務所に作品を送りつけ電話しまくるという自己流で就職先を探していました。好きなコト、夢中になれること以外は選択肢にはなかったんです。20社以上に送って面接に進めたのは3社だけ。その中で一番大変そうな会社を選びました。
最初の何年かは“かばん持ち”ばかりでしたが、常に横目で先輩たちの仕事を見て技術を盗んでいきました。次第にデザインを任されるようになると、空間だけでなくグラフィックや広告などの仕事も舞い込むようになり、そういったデザインへの興味関心が強くなっていきました。
ー 素晴らしい行動力と決断力ですね!そんな経験を経て、ビッグビートに入社されるんですね。
ビッグビートに入社した理由はどこにあったのでしょうか?
タイヘイ:
広告の仕事をしたいと思っていたけれど、当時は転職に役立つ広告実績を持っていませんでした。
ビッグビートの業務内容が広告と「展示会・カンファレンス」などのイベント案件も多くやっている、というところでイベントの空間設計という部分で自身の経験を活かしつつ広告の仕事ができるのではと思いました。
採用メディアでの募集がきっかけだったんですが、そこに応募しただけでは実績から落とされるのではと考え、またもや作品集を直接送り付けるということをしました(笑)
当時のクリエイティブのボスであったツツミ師匠に面白がってもらい、無事面接につながりました。
※入社後、ハマロと
ー デザイナーとして入社してからディレクターへ、7年ほどビッグビートのクリエイティブを支えてくれたタイヘイさん。転職のきっかけはなんだったのでしょうか?
タイヘイ:
理由は2つあって、
ひとつは、広告業界にいるからにはド派手で!著名人起用して!子供たちからも「たっくん(子供からの呼び名)凄い!」といわれる、広告代理店のザ・クリエイターの景色を見たかったこと。
そしてもうひとつは、“戦略を考える力の不足を痛感したこと”です。
2018年の2回目のBigbeat LIVE(※)の時にとあるベンチャー企業から、「予算が○○あるから、年間の広告戦略を考えてほしい!」と依頼を受け、ビッグビートのクリエイティブ代表として打ち合わせに参加したんですが、相手が望むような広告戦略を考え提案することができませんでした。
自身の対応領域の狭さに驚愕し、このままではダメだ、修行をしなければと思い立ちました。
すごく悔しかったのを覚えています。
(※)Bigbeat LIVE 2018

※ビッグビート最後の日
ー その悔しさをばねに、次の新しい環境へと挑戦をしたんですね。次の職場ではどんな経験をされたのでしょうか?
タイヘイ:
国内の大手広告代理店、外資系広告代理店、クリエイティブ制作会社などの採用面接を受けました。その中でも、いちばん大変で修業になりそうな、自分をぼこぼこに鍛えてくれそうな会社を選びました(笑)
最初はプランナーとしてBtoC案件を担当。ビッグビートで培ったBtoBの知識や経験が全く活かせず、絶望的な思いで、自分よりも若いメンバーにボロクソに言われながら胃の痛い日々を送る毎日でした。
プランナー時代は、社内の営業&ストラテジックプランナーが考える戦略に基づいて実施される施策のプランを考える業務に携わりました。
2年目ごろから人気アニメ&ゲームイベントのプロデュースを担当し、念願だった自分の子どもたちからの「たっくんすごい!」が聞けるようになりました。自分が携わった仕事がメディアなどで取り上げられることも多くなり、「世の中に関われている実感」を得ることもできました。
4年目には会社内で引き抜きをもらい、グループ会社の2社に籍を置いて「営業&総合プロデューサー」の2足のわらじで活動、クライアントからも直接指名をいただくことも多くなっていきました。
環境を変えて、あえて過酷な状況に身を置くことが自分の成長の一番の近道だなと再確認できました。

※自身がプロデュースしたイベントで登壇することも
ー 常にハードなほうへ身を置く選択をするというのが、タイヘイさんのビジネスの根幹にあるんですね。
なかなかアグレッシブな社会人人生を送ってきたタイヘイさんですが、その中でもこれは忘れられない!という失敗談はありますか?
タイヘイ:
今までで一番の失敗は、社会人2年目に九州の方でパチンコ屋さんの新店舗を担当したときのことかな。地方でよく見かける、駐車場も建物も広くてデカい、飲食店もくっ付いているド派手な店舗でした。建物を建てるには、景観条例や広告条例など、役所の申請が必要なものがいくつかあって、その中の一つの「景観条例」に着工間近でNGが出てしまったんです。
役所へ行って朝から晩まで土下座をし訴えかけ、最終的になんとか了承を得ることができましたが、この経験から最低限失敗しないための知識や経験を身に着けること、事前準備や確認の大切さを学ぶことができたと思っています。
ちなみに当日は当時の彼女の誕生日だったんですが、その騒動でそれも忘れていたため、家に帰っても土下座をするはめになりました(笑)
「誰と働くか」を大切に
ー 転職活動をする中で、他の会社からのオファーもあったという噂も聞いていますが、なぜ最終的にビッグビートへの復帰を決めたのでしょうか。
タイヘイ:
これまでは何かを選択するときに「自身の成長のために何をしたいか?」を重要視していました。でも年齢を重ねるごとに「誰と何をするか?」ということが物事の決断をするときの基準になってきました。
例えるなら「超高級料理店で一人ご飯食べるより、大勢で釣りした後に海辺でみんなで食べるカップラーメンの方が好き」なんです。
一番の理想は「自分がワクワクできる物事を、好きな人とトライし続け、自身も必要とされ続けるコト」 なので、それをそれを叶えるためにどこで働くか?を考えたときにビッグビートで叶えたい、と思いました。
転職活動を始める際にやりたいと考えていたIPを活用した案件は現状ビッグビートにはありませんが、自身のネットワークで仕事を取りに行けばよいと前向きに考えました。それをやれる環境だというのも、ビッグビートの好きな文化のひとつです。
何よりも「誰とどこで働くか」、それが1番の決め手でした。
※大きなマグロの前でビッグビートメンバーに向け自己紹介をするタイヘイさん
ー タイヘイさんにとってデザイン・クリエイティブとは何でしょうか?
タイヘイ:
僕はいままでの経験から、大概何でもできると思っています。
「東京タワー&スカイツリーの色変えたい!」って言われたら実現させるし、「有名タレントを起用したい!」と言われればなんとかアサインします。
クリエイティブデザインというのは、表層部分の見た目だけではないと思っています。
製品としてのモノ機能、イベントなどの全体設計など、全てのビジネス課題解決をするための機能自体が「クリエイティブデザイン」だと考えています。 だから、東京タワーの色を変えたりタレントを起用することでビジネス課題が解決するのであればどんなに難しい要望でも喜んでやります。
全く課題解決に結びつかないのに「クライアントが好きそうだから」とか、「なんとなく流行っているから」という理由で提案していたこともありましたが、それは「クリエイティブデザイン」ではないというのが僕の思いです。
小さなノベルティを一つ作るにしても、企業ブランドを理解し、戦略的な視点で考え、ノベルティに意味を持たせ、課題解決の一つに寄与させる必要があると思っています。 今後はそうした提案を積極的に行っていきたい。
今までの経験を活かして、今ならかつて挫折を味わった、「年間の広告戦略を考えてほしい!」という要望にも、今ならより良い選択肢をもって応えられるような気がしています。
自身の力不足をバネに、あえてハードな方へ、波の高い方へと船を進め、キャリアを超えて“デザイン”に向き合ってきたというタイヘイさん。
デザイナーとしてモニターに向かい合うだけでなく、営業として時に泥臭い努力をしながら真摯にクライアントと直接向き合い続けたからこそ、指名という形で信頼を得てきたといいます。
そんな“越境クリエイター・井上タイヘイ”だからこそ表現できる、ビジネスをも動かす“デザイン”に、注目ください!

※休日はもっぱらお子さんの推し活付き合いに精を出しているそう
著者・小塚








