地域 2024.01.16 だからここにいる!バンコクで日本を想い、未来を創造する長谷川さんの『Think Local & Go Global!』

2023年12月、ASEANの温度を体感する旅「ビッグビート イン バンコク アロハロハツアー」が催行され、タイ・バンコクにビッグビートのメンバーが集結しました。

関連記事:Bigbeat in Bangkok!~旅のはじまり~

旅のメインプログラムとして用意されたのが、特別講演会「ASEANと関わらなきゃだめじゃん!と思える話」。お話してくださったのは来場者13万人の展示会「バンコク日本博」を主催する長谷川卓生さんです。

長谷川さんのASEANと日本への想いをお聴きしました。
(取材・執筆 ニシタイ編集部)



【プロフィール】
長谷川卓生さん
株式会社ジェイデュケーション 代表取締役
バンコク日本博実行委員会 代表
大学卒業後、ベトナム進出を支援するコンサル企業に就職、ホーチミン1年間の駐在を経て、1997年にタイへ。1999年タイ現地法人として留学サポート会社を立ち上げ、教育・人材事業、催事事業、旅行事業を行っている。


 

26歳、タイでの挑戦

タイにきて26年、人生の半分をタイで過ごしてきた長谷川さん。なぜタイで起業することになったのかを教えてくれました。

「日本はもっと東南アジア、ASEANと仲良くならないとと感じたことが、いまにつながっています」

長谷川さんは若い頃から海外に縁があったそうで、高校時代にはデンマークでの留学を経験。大学では法律学科に進み弁護士になりたいと考えていたものの「このままではダメだ」と1年で方向転換をして、オーストラリアへ留学します。初めての就職は、ベトナム進出を支援する日本のコンサルティング会社でした。

1990年代半ば、「中国の時代」と言われていた頃にベトナムに1年駐在した長谷川さんは、のびしろしかないホーチミンに暮らしながら、ASEANの現状や日本との関係を体感します。

それから長谷川さんは帰国と転職を経て、再びASEANへ。起業を視野に入れてタイに渡ったのでした。現地法人に就職して働きながら準備を整えて、1年半後の1999年に起業。奇しくもビッグビートと同じ3月15日が設立記念日です。

長谷川さんが立ち上げたのは、日本人向けにタイへの留学支援サービスを提供する会社でした。

「当時多くの日本人は欧米に目を向けていて、まだASEAN諸国へのネガティブな先入観があった」という長谷川さん。まずは日本の人たちにASEANの現状を知ってもらいたい、先入観を払拭したいという想いがありました。

事業を行う中で、タイの人たちの日本に留学したいというニーズを感じた長谷川さんは、日本への留学支援をスタート。タイからの日本留学支援に一本化しました。
  
そして留学支援を行う延長で、2002年10月に日本留学フェアを初めて開催します。


(長谷川さん講演スライドより)

これが現在の日本博につながるイベントの原点です。最初は、出展9校だったイベントが、長い年月をかけて進化していきました。
 

日本とASEANをつなぐハブ

2002年から毎年2回ずつ開催した留学フェアは、2008年には就職ゾーンを追加して「日本留学&日系企業就職フェア」に。2015年にはタイの日本大使館の協力も得て、日本文化を紹介する「ジャパンエキスポ」へと進化していきました。

現在は日本博として、留学、就職、トラベル、物販、コンテンツ、食、エンタメなど総合イベントになっています。2023年度は、7000平米の展示会場に300ブース、のべ129084名が参加する規模にまで成長しました。


(長谷川さん講演スライドより)

「旅行ゾーンが一番、食、アニメ・マンガのコンテンツも人気があります」

来場者の6割が20代、女性が多いという調査結果が出ています。ちなみにタイを始めとしたASEAN地域ではFacebookの影響力が強く、インフルエンサーの協力も得て告知、集客を行っているそうです。

イベントはBtoBのマッチングの場としても活用されており、日本からは地域の自治体など20団体とタイ企業34社が参加しました。








(日本博 Webサイトより https://nipponhaku.com/photo-gallery-2023/

長谷川さんとビッグビートが出会ったきっかけも、日本博でした。タイの現地法人 Bigbeat Bangkok Co., Ltd. を立ち上げた2018年に、初めて日本博に出展。これをきっかけに、長谷川さんとBigbeat Bangkok代表の金子は交流を深めてきました。


(左よりジェイエデュケーション 福石さん、ビッグビート濱口、長谷川さん、Bigbeat Bangkok金子)

2023年のイベントでは、Bigbeat Bangkokとの共同企画も実現。スタートアップ起業にフォーカスしたブースで、6つの自治体が日本と関わるキャリアの新しい選択肢を提案しました。


(長谷川さん講演スライドより)

「イベントは進化して紹介する内容も多様化してきましたが、留学ゾーンが大切な軸であることはずっと変わりません」

イベントも含めて、長谷川さんの手掛ける事業領域も進化していきました。留学支援から日本語学校の運営、人材紹介、催事、旅行事業まですべてつながって循環しています。

日本に興味を持ち、日本を選んで旅してもらい、日本で学んでもらう。それが自治体や企業の利益につながり、留学生は日本との関わりの中で生活や気持ちを豊かにすることができる。日本の企業で優秀な人材が活躍してくれたら経済も成長できる。みんなのHappyにつながる循環です。

『日本とASEANをつないで一緒に豊かな未来をつくっていくキーパーソンを育てる』ために必要なことを、長谷川さんは一つひとつ具体的に実践していました。
 

存在が薄れゆく日本

日本博は、長谷川さん率いるジェイエデュケーションで企画から出展者募集、集客までのすべてを担っているそう。当然のことながら、これだけの規模のイベントを主催するには、相当なエネルギーと資金が必要です。

「ここだけの話、人件費を除いて5300万円掛かってます。小さな会社にとってはとても大きい額。毎年本当に怖い!寿命が縮む思いです」

イベント運営の裏側を赤裸々に語ってくれた長谷川さん。それでもやるのは、一緒に頑張ってくれるバンコクの仲間たちと、何より日本の未来のためなのだと続けました。

ビッグビートも広告会社として数多くのクライアントのイベント企画運営を行っており、さらに近年は自社イベントも開催しています。長谷川さんが感じたようなキリキリする想いは、きっと多くの社員が感じたことがあるはずです。




(とくに深く頷く濱口)

それから長谷川さんは、タイからみえる日本の現状を教えてくれました。一つは、タイへの投資額のこと。2022年に、中国からの投資が日本の額を超えました。


(長谷川さん講演スライドより)

「タイにとって、だんだんかまってくれなくなる国(日本)と、かまってくれる国(中国)、というふうに見えますよね」

2つ目は、タイでの労働許可証を取得している中国人の数が日本人を超えたことです。2014年から日本がトップだった労働許可証(ワークパーミット)の申請数が、2022年に逆転しています。
参照:https://arayz.com/column/smbc_202302/

そして、タイ大学入試の第2外国語の試験を受けた人のうち、日本語を選択した人が韓国に抜かれて3位となりました。
参照:https://jp.yna.co.kr/view/AJP20220429002400882


(長谷川さん講演スライドより)

「タイではいま韓国コンテンツのほかに、中国の音楽やドラマなどのコンテンツ人気も高まっています。日本はどちらにも負けていますね」

これまでも日本の存在感が薄れつついくのをタイ・バンコクで感じてきた長谷川さんは、ここに来て、いよいよ『ヤバい!』と感じているそうです。だからこそ、これからもっと日本博で盛り上げたいんだという長谷川さんの言葉に熱がこもります。
 

だからASEAN

日本では少子高齢化、人口減少、人材不足など連鎖する様々な課題を抱えており、ASEANの国々と比べても課題先進国です。

「日本企業は海外展開しなきゃという課題感があるはず」

そんなときに目を向けるポイントの一つが、日本語学習者の多い国。10万人以上のエリアを見てみると、1番多いのは中国で、次にインドネシア、韓国、オーストラリアと続きます。タイは5番目で、そのほかにもASEAN諸国で多くの方が日本語を学んでいるのがわかります。


(長谷川さん講演スライドより)

またタイからの訪日客はASEAN近隣諸国の中でもダントツ、親日の国です。いまでも日本ブームは加速しており、日本博でも年々盛り上がりを見せていますが、関係性は確実に変わって来ているしまだまだ変えていかなければならないのだということが、長谷川さんの言葉から伝わります。

メイドインジャパンの時代から、コンテンツの人気が高まった1990年代。そして長い空白の期間を過ごして、再び日本への旅行と日本食が注目されるようになったのは2013年頃。


(長谷川さん講演スライドより)

「かつては安い賃金を求めて、たくさんの日本企業が製造の拠点をASEAN諸国においてきました。日本人の言うことをきいてくれる時代も確かにあったけど、これからは違います」

外の世界で日本の存在が薄れつつある中、日本が課題を解決して発展していくにはASEANと対等なパートナーにならなければならない、ASEANと共に発展していく方法を考えなければ!と長谷川さんは感じていました。

「これから日本だけで経済大国になることはもうないし、タイやASEAN諸国もまだ時間かかる。だから一緒にやろう、一緒に強くなる、それが日本を救う道だと思っています」

日本のものを買ってもらう、観光に来てもらう、働きに来てもらう。そのためには『選ばれる日本』にならないといけない。そのために私たちはどうすればいいのかというと、『Think local,Go global!』なのだと、長谷川さんはビッグビート代表の濱口の言葉を交えて説明してくれました。


 

選ばれる私たちになるために

長谷川さんは、コロナ禍を経て新しい挑戦を始めました。

「あるアンケート結果から、日本に旅行に行ったことがきっかけで日本留学を決めたという方が多いことがわかりました。だから日本への旅行も応援しようと考えたのです」

コロナ後、日本への旅行者はまだ完全に戻ってはおらず、このまま放っておいたら選ばれない国になる、と危機感を抱いた長谷川さん。選ばれるために選んだのが目的特化型旅行「自転車に乗るなら日本だよね」というサイクリングツーリズムの提案でした。

濱口は日頃より「マーケティングとは選ばれること。恋愛と同じ!」だと社員に伝えています。日本が選ばれるために、私たちが選ばれるために何をするか。

親日という漠然としたもので支えられる時代ではなくなっていくこれからは、「日本との新たな関わり方を具体的に提案することが大切」なのだと長谷川さんは考えます。

長谷川さんは、バンコクで日本を想い、日本がASEANの仲間と一緒に発展していくために自身は何をするのかを常に考え、具体的に行動し続けていました。

「ASEANと共創して、一緒に発展していく!選ばれる日本、私たちになるために一緒にがんばりましょう!」


ーー


ビッグビートでは、2016年から『Think Local & Go Global!』をスローガンとして掲げています。濱口のコラムでは「なぜここにいるのかを考え、自分の居場所を大切に外とつながっていくこと」そして「よりよい未来のために行動、変化しよう」という意であることが度々語られてきました。

今回、冬の日本を飛び出してバンコクに集い、ASEANの温度を感じながらみんなで見たのは、これまで知らなかったASEANの一面と、よりよい未来に向けて『砂利道をつくる』長谷川さんの姿。まさに『Think Local & Go Global!』を実践するリアルなお話でした。

ディープなバンコクを知るメンバーも、初めて訪れる社員も、5歳児から大学生までの子供たちも一緒に、わくわくする未来を見つめる時間となりました。


(長谷川さん、ありがとうございました!)

2024年のビッグビートの仲間は、その未来に向けてすでに動き出しています。まもなく東京オフィスにASEANからの仲間が増えるとの情報も!ニシタイ編集部では、引き続きビッグビートに密着し、新しい挑戦やその奮闘の様子を裏から表からお伝えしていきます。
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