社長コラム 2023.06.29 B-Squareと肉うどん

先日はフランス旅行記のようなものを書きました。そこでも触れたのですが、円安などによる海外、特に欧米の物価の高さに驚きます。

故郷、高知でも人気のうどん屋さんがパリにあるのですが、そこで食べた肉うどんが1杯約4千円!(まあ、パリで高知のうどんを食べなくてもいいのですが…)うどんだけではなく物価は感覚的に3倍以上です。ちょっとしたランチが4、5千円します。


(パリで訪れたうどん屋さん)

あっ、海外旅行が高くて大変な話をしたいのではありません。私たち日本人の生産性というか労働の価値について考えてみました。

昨年発表された日本人の労働生産性は1時間あたり49.9ドルだそうです。約7,000円。これは残念ながらG7(先進7カ国)の中で堂々の最下位、OECDの国の中でも下から数えたほうが早いようです。

出典:公益財団法人 日本生産性本部 生産性総合研究センター

そして日本は税金もまあまあ高く、それ以外(社会保険など)も高いので労働分配率はさらに低めです。参考までに言えば、平均時給は1,200円くらい。ざっくり言えば7,000円生産して1,200円の給料を得るわけです。(正確な計算ではないです、あくまで目安)

しかし、ちょっと待って!私たち日本人は働いていないわけじゃないですよね。むしろまあまあ勤勉に働いてると思ってます。海外を旅行してちょいちょい感じるのは『我が国は本当にちゃんとしてるよなぁ。それも全て誰かの仕事で成り立ってるんだよなぁ』ということ。

例えば、電車やバスの運行時間、その車両内の清潔さ、空港で荷物が出てくる速さ。未だかつて日本の空港では荷物がなくなる経験をしていません。

そんなに一生懸命働いているのに、かなりルーズに見えるかの国々(どことは言いません)に生産性がダントツで負けてしまうのはなぜ?円安が元のレベル(1ドル100円くらい)になったとしても、パリの肉うどんは3千円近くする。つまり他国に比べ日本は給料も安いのです。労働生産性は最低、賃金も安い、円も安い。

2016年頃から働き方改革が叫ばれ、私たちなりに懸命に改革した結果が『肉うどん高くて食べられない!』ではなんとも悲しいではありませんか。

労働生産性が低いのはなぜか?どうしたら未来がより良くなるか?を少し考えてみました。

ヨーロッパと日本の新幹線を比べてみると、日本の新幹線は中も外も(例えば窓ガラス)ダントツに綺麗です。東京駅ではあのスケジュールの中、毎回かなり綺麗に清掃しています。当然、座席も進行方向に向いていますね。

ヨーロッパの新幹線(TGVなど)も、もちろん清掃はするでしょうがあそこまで綺麗ではありません。いや、ちょっと汚めでした。車窓から素晴らしい景色を撮影しても窓ガラスの汚れに邪魔されるくらいです。座席の進行方向は半分半分で50%の確率で後ろ向きに走ります。でも『まあこんなものか』と思えば大丈夫。

日本では新幹線だけではなく、こういった『素晴らしい、でもそこまでやらなくても全然OK』と感じることは多いかもしれません。駅のエスカレーターの手すりさえもピカピカです。

『生産性が低いからこれらを全部やめよう、欧米では…』というつもりは全くなくて、これらこそが日本人の美意識であり、文化を形成している根幹だと思っています。(まあやりすぎは、如何なものか?と思うこともありますが)

では、未来に残したい日本の文化や伝統を大切にして、変えなくてはならないのは何か?

一番肝心なのは政治を変えることですが、そこは自分ではどうにもならないと思うので、経済、ビジネスの視点で考えてみます。2つあります。

1つは、各企業がマーケティングを活用すること。

私は『マーケティングは選ばれることだ』とシンプルに考えております。まず、誰に選ばれるか、つまり最たる顧客は誰かを定義して経営、商売をすること。恋愛と同じで誰にモテたいのかをはっきりさせて、その方にモテるためにプランするのです。あの人にもこの人にもモテたい、とやってしまうとものすごい労力がかかり(製品やサービスで言えば機能をつけすぎて)結果モテない(売れない)こともありますね。

日本企業の経営において、マーケティングが遅れていること、欠如していると言っても言い過ぎではないことは、ここ数年いろいろなシーンで語られるようにました。またコロナ禍で営業機能が弱くなったこともあり、マーケティングの重要性は高まりつつありますが、それでもまだ不十分です。こういった思いは、過去に当社で主催したイベントBigbeat LIVEや書籍の出版、コラムなどでも随分と述べてまいりました。

関連記事:Bigbeat LIVE 2020


(「らしさ」で未来はグッとよくなる。というテーマで開催したBigbeat LIVEをまとめた書籍。Amazonにて発売中))

もう1つは、日本経済の多重下請け構造の仕組みを変えることです。

この取引構造は、主に製造業においては有効なことも多いかもしれません。事実、製造業の生産性は他国に比べても遜色ない、むしろ高いこともあるようです。製品に必要な部品などはサプライチェーンを構築して適宜調達し経営する方法は理にかなっています。

問題は、別のところ。大企業同士または官からの税金がらみの仕事において、大企業が受注して実際は下請け、孫請けが仕事するといった構造は、建設業界やIT業界のみならず、私たちの広告業界においても普通ですし、エンターテイメント業界においても多いようです。

東京オリンピックで色んなことが問題になり明るみに出ましたが、この構造から発生したのだと私は思っています。

言葉が悪いのを承知で書けば、日本の経済はピンハネ体質で回っています。どんどんピンハネされるから、実際の現場に回るお金が少なくなるのです。映画やTVドラマ、音楽などのエンターテイメント業界で、世界レベルのアーティストや作品が出づらい理由もここが大きいのではないか、と感じます。

例えば100億円の予算を組んでも、実際にクオリティを左右する現場には半分くらいしか使われない、いや半分ならまだまし、といった状況があちこちで起きているのではないでしょうか。

広告関係の仕事もネット時代となった昨今、ビジネスモデルは良い方に変化しているとは感じますが、今も一部大企業は大手広告会社にしか発注しない(できない)昭和スタイルな業界です。

大手メディアも同じで『口座のあるなし』が問われます。「オタク、口座ないよね?だったら電●回して!」みたいなことを何度も経験しました。時折頭にきて、「その口座とやらは銀行にいけば作れますか?やっぱ実印が要りますかね?」と負け惜しみ的嫌味を言ったものです。(心の中で)

あ、随分と長いイントロになってしまいました。

『俺らは懸命に働いてるのに、なんでパリで肉うどんが食べられないんや!責任者出てこーーーい!』
という人生幸朗師匠の漫才のオチではなく、だから当社はこんな選択をしているのです、という話がしたかったのです。

多くの企業がピンハネ取引をやめてマーケティングを活用すれば、肉うどんがパリでも心おきなく食べられる未来に変えられるはずです。(ざっくり言えば、ですよ)


(パリで食べた肉うどん)

私たちBigbeatは、B2B企業、中でもマーケティングを重要視してグローバルに経営されている企業様に選んでいただきここまでやってきました。IT分野を始めとした、変化の激しい先端テクノロジーで勝負している皆さまです。そんなクライアントの一番役にたつ広告会社でありたいと30年近くビジネスを行ってきました。

そして大変生意気な言い方に聞こえてしまうかもですが(本来は生意気でもなんでもないことですが)、下請けはやらない、下請けに出さない、をポリシーとしてきました。当社の理念、『関わったすべての人がHappyを感じる』を実現するために、創業からこれを大事にしてきたのです。

Bigbeatでは、直接クライアントの話を伺い、自分たちの力で製作したものを納品します。もちろんデザインやイベント施工などパートーナーシップは数多くありますが、それは下請けとは根本的に異なります。

そんな経営をする中で根幹として生まれたのがB-Square事務局サービスでした。B-Squareという自社開発したイベント&セミナーのオンライン管理システムと、それを運用してイベント準備をバックアップするサービスです。

広告会社の表に出ている顔はアカウント担当、つまり営業や案件によってはクリエイターであることが多いですね。もちろん当社も営業やクリエイターの果たす役割が大きいことは他社同様です。でも日頃はあまり見えないけれど、チームとしてみんなを支える熟練のメンバーが当社にはいて、毎日どっしりとど真ん中でサポートしてくれています。

B-Square開発の始まりは20年以上も前。以来、老舗鰻屋のタレのごとく継ぎ足しを重ね、時に壊し、私たちの大切なクライアントのご要望をお聞きしながら反映してきました。


ということでこの夏は、このニシタイで、B-Squareというサービスとそのシステムをずっと支え開発してきたエンジニアにスポットを当ててみたいと思います。カミングスーン。お楽しみに!



(Bigbeatの仲間のお子さんと一緒に。キミたちの未来のためにもうひと踏ん張り!)
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