マーケティング 2021.04.08 ハイブリッドもアバターも、やって気がついたイベントの可能性【Play Now! レポート⑤】

「オンラインイベントは、もっとおもしろくなる!」を掲げて、セッションを繰り広げてきた「Play Now!」。最後のテーマとして取り上げたのは、「イベントの未来はどうなっていくのか?」でした。2020年はオンラインイベントのテクノロジーや手法が急速に広がり、多くの企業でまずはやってみよう!とチャレンジがされてきましたが、2021年は「ハイブリッド」のキーワードも注目を集めるなど、ここからさらに新たなフェーズへと進んでいきそうです。

イベントの今を最前線で追いかけ続ける月刊イベントマーケティングの樋口 陽子さん、アバターを活用したイベント設計など、事業者側でイベントに挑戦し続けている株式会社マクニカの堀野 史郎さん、一般社団法人やコミュニティなどのイベントに携わってきたkipplesの日比谷 尚武さんの3名で、これまでの実践やこれからのイベントの在り方についての議論が交わされました。


写真左から:kipples 日比谷尚武さん、月刊イベントマーケティング 樋口陽子さん、株式会社マクニカ 堀野史郎さん

 

2020年、イベントは「カジュアル化・ファスト化」へ

いまだコロナ禍から抜け出せずにいる中、イベントはこれからもオンラインが主流となるのか、あるいはハイブリッドへ移行するのか。答えを見出せずにいる方も多いのではないでしょうか。

マーケティング業界の中で、イベントそのものについて話す場が、これほどまでに生まれていることに変化を感じている」という月刊イベントマーケティングの樋口さんの言葉からもうかがえるように、マーケティング業界全体としても、イベントのあり方の今後にますます関心が高まってきているようです。

樋口さんにとって、2014年の「イベントマーケティングサミット」のとあるセッションが、イベントのこれからに変化の兆しを見出してきた原体験とのこと。そこではイベントの場を「顧客の獲得より育成、BtoBマーケティングでの人間関係づくりの場」と捉え直し、「今後、勉強会や小さなイベントの重要性がますます高まるのでは」といった話があったといいます。

当時のイベントのスタンダードといえば、展示会でブースを構え顧客獲得するというもの。このセッションを通じて「イベントがカジュアル化し、新しいコミュニティが注目される潮目を感じた」と樋口さんはいい、これが2015年の『イベントマーケティング』創刊のきっかけにもなったといいます。

さらに、最近のイベントの特徴として「(イベントの)企画制作や舞台裏の人が表に立ち、ノウハウを共有し合うフェーズにきている」と樋口さんは続けます。
kipplesの日比谷さんも、イベントのカジュアル化・ファスト化の波を感じ、ここ数年はBtoBだけでなく、個人やサークルレベルの組織でも気軽にイベントやカンファレンスをやってしまう機会が増えているといいます。


 

「ノウハウ共有とネットワーキング重視」がオンライン化で加速

では、コロナ禍で登壇者のみなさんはどのようなイベントに取り組んできたのでしょうか。樋口さんは、2016年から「BACKSTAGE」という、BtoBとBtoCの方々が混ざり合うマーケティングイベントを開催しています。

ここでは、普段は舞台裏にいるイベントの仕掛け人や企画者が表舞台に立ち、業界のイノベーターから体験価値を学べるコンテンツの他にも、受付やステージの演出にもテクノロジーが活用されており、参加者がイベントに参加するだけで様々なネタが仕入れられるような仕掛けが、あちこちに散りばめられています。

「BACKSTAGE」は、イベントの開催スタイル自体をショーケースとして体験いただくことも役割の一つとしており、
2020年はコロナ禍の影響でリアル開催には悩んだと言うが、対策を整えて、リアルとオンラインのハイブリッド開催にチャレンジした回となりました。

それに伴い、これまで2トラックで行っていたカンファレンスパートは全体で約2ヶ月の開催期間になりました。リアル開催日の12月21日を起点として、前半を「BACKSTAGE2020まで待てない!!」と題し、ノウハウ中心のコンテンツを擬似ライブで3週間にわたり無料配信。後半は12月21日の本番と1ヶ月のアーカイブ視聴とし、本番ではリアルとオンラインの有料配信にしたところ、例年900名ほどの申込が、今回は1300名超に。



オンラインの特徴を生かそうと、空間だけでなく時間も超えて展開しようと考えた」と樋口さんは振り返ります。

また、ネットワーキングの時間も重要視し、「Jublia」というシステムでビジネスマッチングをしたところ、例年15%ほどだったマッチング率が30%近い水準になり、リアルの現場でも登壇者同士のネットワーキングの機会を用意するなど、「BACKSTAGE」ならではの場づくりが実現したとのことです。

 

オフィスをスタジオ化し、あらゆるイベントをオンラインへ

一方、堀野さんのマクニカ社では、2020年の4月、記者会見のオンライン化に早々に踏み切りました。ぶらさがり用にZoom会議室URLを複数用意するなどの工夫をし、その取り組みは広報会議にも取り上げられたそうです。

 

また、例年、2日間で約60セッションをおこなっていたライブイベント「Macnica Networks DAY」もオンラインへ移行。運営会社に依頼し、オフィスのセミナールームをスタジオ化。コンテンツもオンラインというメディアに合わせて4日間に拡大するという、一大チャレンジだったといいます。

この「オフィスのスタジオ化」を生かし、数千人規模の全社キックオフもオンラインでライブ配信へ。「参加している人の熱量を感じたいと配信会社に相談をして、表彰の場面では拍手の演出を取り入れたりした」と振り返ります。

 

アバターでのバーチャルイベントに新たな展開の手応えも



マクニカ社では、こうしたノウハウや経験の集大成として、「テクノロジーカンパニーとして新しいチャレンジをやろう」と「Macnica Exponential Technology 2020(MET2020)」を11月18日から約1ヶ月にわたり実施。サイバー空間上で参加者がアバターとなって会場を動く、マクニカらしい新しいイベントづくりが始まりました。会場内を自由に動けるアバターを活用することで、「バーチャルなんだけど、リアルイベントに近い体験が生まれるよう追求した」と堀野さんは語りました。

コンテンツは、DXやセキュリティ関係を中心に、社長自ら基調講演に登壇した他、8の特別セッション、17のメインセッション、37のミニセッションがバーチャル空間上で展開され、2000名想定のところ2500名の参加がありました。



ここでは、参加者が自らのアバターを選び、講演を視聴できるだけでなく、バーチャルなブースに立ち寄ったり、資料をダウンロードして、チャットで質問をすることもできるとのこと。

日比谷さんからの「アバターはスムーズにフィットするか?」という質問に対して、堀野さんは「もちろんコンシューマーゲームとは異なりますが、動きの違和感はありません。開発会社も自信を持って提供しているだけあってすごい技術持っているなと。今年も引き続き開拓をしていこうと、動き始めている」と今後への意欲を語りました。

オンラインイベントのアバター利用について、堀野さんは、とりわけ「 コミュニティ巻き込み型や営業参加型のオンラインツアーに向いている」という気づきがあったといいます。「例えば 個社向けの展示ツアーなどのように、マスよりも狭い範囲のイベントの方が、バーチャルで集まる場としてはうまく機能するのではないか」と、新たな活用の可能性に手応えを感じられていました。

 

必見!目的別のイベントマッピングを公開!

ここまでは、ノウハウの学びやネットワーキングを重視した企画や、最新のテクノロジーを取り入れたオンラインイベントの取り組みをみてきました。それでは、今後イベントを企画する際に、オンライン・オフライン・ハイブリッドなどを、どのように使い分けていくのがいいのでしょうか。

こうした問いを受け、「『目的明確度』と『重視ポイント』でみたマッピング」が公開されました。このマッピングは、登壇者3名が独自に作成し、「目的明確度」と「重視ポイント」の二軸でイベントを捉えたときのイベントの種類や傾向の分布をまとめたものです。



このマトリックスに照らし合わせ、オンライン・オフライン・ハイブリッドでそれぞれの性質的に向いているイベントを探りました。例えば、イベントに参加する目的や得たいことが顕在的で、知識を得る「学び」を重視するイベント、すなわち製品・サービスの機能を紹介するような「ソリューションサービス系ウェビナー」や、ITのサービスが並び機能を比較できるような「テック系展示会」などは、これからもオンラインで開催されていくのではないか。一方で、イベントに参加する目的や得たいことが潜在的で、「学び」を重視するイベント、すなわち具体的にモノを見て触って、体感することで理解が深められるような「体験系カンファレンス」は、オフラインで行われていくだろう、という考察がされています。
オンライン・オフライン・ハイブリッドでそれぞれの性質的に向いているイベント、というのをマップで示した形となります。


樋口さんは「ここ最近のBtoBマーケティングパネルの動向について、左下から右上に向かう流れ」、つまり潜在的な出会いを求める「展示会」のようなリアルイベントから、明確な目的を持った学びを重視する「ウェビナー」のようなオンラインイベントへの流れに落ち着いたと、現状を分析します。

こうした流れについて、堀野さんは「今までは東京にこないと参加できない人にとって、この状態は情報が手に入りやすいチャンス。また、営業コストの観点から地方への営業を諦めていた人にとっても、情報の出し方次第ではカバレッジが広がるのでは」とその可能性を語りました。

 

どうなる!? これからのイベント

本セッションの結びに、「どうなる!? これからのイベント」と題し、登壇者の3名にイベントのこれからについてフリップメッセージの発表いただき、このセッションはクローズとなりました。

 


日比谷さん:
「Clubhouseの登場で、生々しい発信やリアル感のある発信がカジュアルにできるようになったこともあり、参加者の目が肥えてきています。もう昔ながらのビジネスセミナーをやっても誰もきてくれません。これからは、生々しさやリアル感のあるコンテンツづくりがますます求められていくでしょう」。

 


樋口さん:
「潜在的な層に訴えかけたいのか、顕在化しているところをより深めていきたいのか。こうしたことを整理することで見えてくる選択肢があります。堀野さんのようなイベントの仕掛け人の方に話を聞く機会も増えた今、ノウハウを学びながら最適化して選択していける時代になっているのでは」。

 


堀野さん:
「イベントのオンライン化に伴い、アンケートツールを使って生の声を聞いたり、問い合わせのチャットでQ&Aをやるなど、非対面の中でどうやって熱量を伝えるか。みなさん試行錯誤しています。オンラインのテクノロジーを生かしつつ、熱量をどう伝えていくか。これからもトライし続けていきたい」。


堀野さんが仰ったように、まさにオンラインイベントの「熱量」や「共感」を高めることに着目をした今回の「Play Now!」では、まずはビッグビート自身がそれを考えてやってみるというところで、コンテンツの中身やイベントの演出にもこだわりました。この実践を経たからこそ、イベントづくりにおける多くの気づきやヒントが得られたと感じます。この気づきを一つでも多く還元して、イベントのさらなる進化や深化に貢献していきたいと思います。
 
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