マーケティング 2021.03.31 クリエイター視点で切り込む、「選ばれるコンテンツ」にするヒントとは?【Play Now! レポート④】

昨年より数多くの企業がオンラインイベントに挑戦した結果、今では毎日あちこちでイベントが開催されるようになりました。手軽に情報が入手できるようになった反面、コンテンツの飽和状態も引き起こされています。どこかで見たイベントと同じようなテーマに講演者、同じような視聴画面…。参加者側の経験値がたまって見る目も養われてきた今、乱立するオンラインイベントの中で「選ばれるコンテンツ」をつくり、届けるためにはどんな工夫ができるのでしょうか。
このお題に対し、イベント担当者ではなく、情報を届ける「クリエイター」として、株式会社17(ジュウナナ)クリエイティブディレクター / CMプランナーの松尾 卓哉さんと、放送作家の松本 建一さんの2名をゲストにお迎えし、株式会社ビッグビートの野北 瑞貴のモデレートのもと、クリエイター視点からのディスカッションが行われました。




写真左から:株式会社ビッグビート 野北 瑞貴、株式会社17(ジュウナナ)松尾 卓哉さん、放送作家 松本 建一さん
 

オンラインイベントが離脱される、つまらない原因は?

本セッションは「ウェビナー視聴の実態調査」の現状共有からはじまりました。

ファストマーケティング社のアンケート調査によると、全体の7割が「直近3ヶ月でウェビナー情報が増えた」と感じるとともに、「ウェビナー情報が増えすぎて『選ぶのに疲れる』」と回答しており、参加者の「ウェビナー疲れ」の傾向がみられます。

 

また、申込したが当日キャンセルをした、参加したがつまらなくてコンテンツを途中退場した、という回答も半数近くと、期待値とのズレなどが顕著になっている現状がうかがえます。

  

イベントのオンライン化によって、どうしてこうした離脱が起こっているのでしょうか?

株式会社17のクリエイティブディレクター/CMプランナーの松尾さんは、「画面を通して見ることで、イベントの戦う相手が、Youtuberやテレビ番組などに変わった」とまず指摘します。「テレビでは面白いことを喋っても収録の1/3ほどしかオンエアされません。そういう環境で司会者や芸人、コメンテーターは、短いセンテンスで面白いことを話す訓練を相当にやっています。対して、セミナーではそこまでやる話者はほとんどいない。だから、離脱が起こってしまうのも当然」と、登壇者の話力の重要性が増してきていること、さらに、面白い部分を凝縮してコンテンツに仕上げていく「編集」の有無も大きいと指摘します。

放送作家の松本さんは、リアルイベントで感じ取れていた会場の空気や雰囲気といった周辺情報がカットされたことに加え、「ながら視聴や、他の誘惑が増え、気が逸れやすくなった」と、視聴環境の変化が大きいといいます。

 

実際に映像で“伝える”ために必要な考え方とは?

こうした環境変化の中で、離脱されないためのコンテンツづくりに必要な考え方とはどのようなものでしょうか。

松本さんはテレビにおけるコンテンツづくり「3つの注意ポイント」を紹介してくださいました。「ひとつは、タイトルを聞いた瞬間に面白く思えるかという『入り口』の部分。次に、そのさきの『結果』が気になるものであること。一番難しいのは、結果に至るまでをどうやって伝えるかの『プロセス』です」。

 

「美顔ローラーで三日間で小顔になるやり方を検証する」というテレビ番組では、「〇〇センチ痩せました」と結果はすぐにいわずに、面白い小顔体操を紹介したりや女優さんとの比較を持ってくるなど、その過程をいかに面白くするかにものすごく尽力したと松本さんはいいます。

一方、17の松尾さんは、オンラインイベントについて「初めから終わりまでの構成の詰めの甘さ」に触れます。イベントのフレームだけを決めてあとは講演者まかせ、という状態では不十分で、「TEDのプレゼンのように『後で見ても耐えうるコンテンツにする』というイメージで構成を詰めていけば、かなり変わる」といいます。

 

コンテンツ構成にあたっての工夫とは?

コンテンツの構成にあたり、17の松尾さんはCMを例に「最初の1秒でのつかみ」と「違和感を出すこと」が重要だといいます。「短いCMでは、10秒後に面白いシーンが出てるから辛抱して見てくださいという入り方では、2秒後には集中して見てもらえない状態になっている。最初の1秒で『何かが違う』という違和感が醸し出されていることを大切にしてつくっています」。

このセッションでは、「3人がこの並びで座っている時点で予定調和」「カメラが引いたり、背景が変わるとか、いきなり裸の人が横切るとか、『何が起こるかわからない』というライブの緊張感をもっと活かした方がいい」と松尾さんからセッション中にアドバイスが入る場面も。「脱・予定調和」のための「違和感づくり」を、松尾さん自ら実践してくださいました。

 

放送作家の松本さんは、構成づくりのヒントとして「コンテンツに二つの『?』を意識するといい」といいます。

コンテンツを区切って1〜10の流れがあるとすると、ひとつは1〜10全体をまたぐ「?」で、このセッションでいえば「どうすればコンテンツを光らせられるか?」。もうひとつは1〜2、2〜3…とつないでいく「?」。この細かい「?」が続いていくことで、参加者の期待の持続につながります。また、「タイトルの出方はこれでいいのか?」「文言はこれでいいのか?」「喋る順番は?」「全体の構成を最初に伝えた方がいいのか?」などをひとつずつ考えることで、全体の流れがグッとよくなるそうです。
そうした観点から松本さんがおすすめするのが、「プレバト!!」という様々なジャンルでの才能を芸能人が競うテレビ番組。「作品の出し方」や「ランキングの発表のやり方」など、テクニックが緻密に入っており勉強になるのだそうです。
 

「どうやって」届けるか!? 届け方の工夫とは?

最後に、コンテンツの「届け方」の工夫について、お二人から話をうかがいました。

放送作家の松本さんは、最近のテレビの視聴率の動向に触れ、「なぜこの番組をやっているのか、どういう文脈や歴史の元にこの番組をやっているのかがないとダメ。特番など文脈がない番組はほぼ視聴してもらえなくなっている」と「なぜそのイベントやコンテンツをやるのかに工夫が必要」といいます。

松尾さんは「相手に伝わらない前提で全てのことをチェックすること」と、全プロセスをチェックし、わかりやすく伝える工夫が必要と断言。『脱、予定調和!』という今日のタイトルも『オンラインイベントを面白くつくる方法』とした方がわかりやすく、興味を惹くのでは?」と、セッションタイトルひとつからもチェックができるといいます。

また、「どんなイベントも、プロはリハーサルをする。スティーブ・ジョブズはプレゼンのリハを何回もやって、背景の映像も動きと喋りに合わせて、自然とやっているようで、きちんと細部を詰めて仕上げている。だから、魅了するショーになっている」と、構成づくりに加えて、徹底した最初の準備とリハーサルが重要だとアドバイスをくださいました。


コンテンツのストーリーづくりや、相手の興味を引く情報の入れ方など、具体例も交えながら話されたこちらのセッションでは、講演中のチャット欄もコメントであふれ非常に盛り上がり、参加者側の関心の高さもうかがえました。「イベントのコンテンツ」としての磨き方・届け方の一つのアイデアとして、ビックビートからのご提案や、今後の自社イベントのコンテンツ制作にも活かしてまいります。
 
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