マーケティング 2022.07.07 BtoBだからこそ、もっと「好き」を大事に ― ニール・シェファーと語るBtoBマーケ

コロナ禍が始まってから2年以上が経ちます。その間、日本だけでなく、世界中で働き方や経営のあり方が大きく変化してきています。従来の当たり前が通用しなくなる中、これからのBtoBマーケティングはどのようにあるべきなのでしょうか。

そこで今回お招きしたのが、 PDCAソーシャル(米国)代表のニール・シェーファーさんです。ニールさんは、アメリカ・カリフォルニア出身のデジタルマーケターであり、『The Age of Influence』を著すなど、とりわけインフルエンサーマーケティングなどのSNSを活用したマーケティングを得意とされています。また、自身のTwitterアカウントのフォロワー数も20万を超えるインフルエンサーであり、日本のBtoB企業で15年にわたるセールス・マーケティング実績をもつ「日本通」でもあります。

そのような知見をもつニールさんから、日本や欧米のマーケティングがコロナ禍でどのように変化したのか、今後の働き方やBtoBマーケティングのあり方についてお話を伺いました。



 

出会いは Bigbeat LIVE 2017

私がニールさんに初めて会ったのは2016年で、その数年前から日本中に働き方改革の風が吹き荒れていました。これからの働き方や経営のあり方はどうあるべきなのか模索する中で、ビッグビートの新しい経営の中心として考えたのが「マーケティング」です。それをイベントで発信していくこと。サービスやツールを紹介するイベントではなく、マーケティングの考え方を社内外にも紹介していこうと考えました。

私は、企業のマーケティングを「選ばれること」と考えます。そしてマーケターは「誰に選ばれたいか、どんな点で、どのようにして選ばれるかを策定して、実行する」ことを担うわけです。

こうした考えに賛同いただき、アメリカで最先端のBtoBマーケティングを実践されているニールさんに「Bigbeat LIVE 2017」へ登壇いただきました。

 
「Bigbeat LIVE 2017」に登壇されるニールさん

当時、一般的に広告代理店は自分たちの主張を発信することが少ない中、「マーケティングは経営の最高の機能」と主張する「Bigbeat LIVE 2017」については、実は賛否両論もありました。

ですが、弊社も含めて当時の多くの広告代理店は大量の電話をして、アポから商談をして、受注するという、昔ながらのやり方が依然として主流でした。これではムダも相当あり、電話する方も大変ですけれど、電話をかけられる方も迷惑ですよね。これを「マーケティング」で変えていくのが我々の次のチャレンジだという確信がありました。

 

世界から見た、日本の BtoB マーケティング

コロナ禍を経た日本のBtoBマーケティングは、ニールさんから見てどの様に写るのでしょうか。コロナ禍でデジタルの活用が普及した様に見えますが、世界から見ればまだまだの様です。

ニールさんの紹介する調査資料によると、日本は個人のSNS利用時間が世界でも低い部類に入り、ビジネスベースでも日本より低いのは韓国のみだったといいます。この状況は、ビジネスのほとんどがFacebook上で成立しているタイのようなASEAN地域とは正反対です。
 
*ビジネスベースのSNSの利用率は、112ページに紹介されております

対談日当日に、永田町駅にGoogle広告の活用を促す駅広告を見かけましたが、アメリカではGoogle広告はもちろん、SEO対策、eメールオートメーション、SNSマーケティングまでが当たり前になっており、ニールさんからみると、いまだにGoogle広告の活用を訴求されている段階にいる日本は10年遅れという印象を受けたそうです。

私は、日本のこうした遅れの原因の一つに「BtoBマーケター不足」があると考えます。日本でマーケティング人材のための学習機会やマーケティング部署を充実させている企業が、はたしてどれだけあるでしょうか。

日本の経営者のなかには「マーケティングは広告代理店に任せれば大丈夫」と楽観視している方が少なくありません。このこと自体は我々のような広告会社にとってはチャンスである一方、グローバルでみるとこのマーケター不足は、日本が抱える大きな課題であると捉えています。

 

BtoBにも“人間らしさ”が求められる様に

では、BtoBマーケティングの最先端を行くアメリカでは、コロナ禍によりどのような変化がおきているのでしょうか。

ニールさんによると、BtoBのコンテンツに”人間らしさ”がより重視されるようになったのだといいます。たとえば、営業担当者がLinkedInでセルフィー(自撮り写真)を投稿したり、 IBMのInstagramや、マイクロソフトのTwitterアカウントでも、#PeopleOfMicrosoftとハッシュタグをつくり、多様なバックグラウンドをもつ社員を紹介したりしています。

この背景には、コロナ禍でお互いに会えない寂しさから、人と人の繋がりを求めるようになったことが大きいとニールさんは考えます。

「あるアメリカ大手企業のSNS分析によると、エンゲージメントの最も高いSNSコンテンツは『人』でした。写真は社長でも社員でも誰でも構わないのですが、やはり人と人の間でこそ、つながりはうまれるもの。会社のロゴだけでは信頼関係はつくれないですよね」(ニールさん)

私も、2016年頃から個人としても Facebookで投稿をはじめました。投稿内容の7割はビジネス以外の話題で、「経営者たるもの、余計なことを言うものではない」と、今でもお叱りを受けることもあります。ただ、ある時から「ゴルフやロックが大好きな経営者」だと、”らしさ”を外に出していくのも大事なのではと思うようになりました。

「自分の好きなことをオープンに発信するのは大賛成です。オープンであればあるほど、その人らしさが伝わり信頼に結びつきます。この信頼は仕事や会社の話だけでは決してうまれません。僕自身も日本や日本のラーメンが大好きなのですが、そのことを発信すれば『俺もラーメン好きだけど、ニールもラーメンが好きなんだ』と共感や信頼が自然と培われていくものです」(ニールさん)


ニールさんは世界的なマーケターであるだけでなく、大の日本通です。

さらにアメリカの若者は、自分が大切に思っていることや共感する、自分にとって好きな企業のサービスや製品を選ぶ傾向が高まっているとのこと。特にアメリカでは「Black Lives Matter」以来、企業がSDGsやダイバーシティなどを含め、自社の価値観を発信することが、より一層求められるようになりました。

こうした「好きなものを選びたい」という思いは、BtoBでも同じではないでしょうか。好きな企業、好きな担当者と一緒に働きたいし、好きな仕事をしたい。BtoBは企業間の取引のため、特に表立って「嫌い」と言われる機会は多くはありませんが、最終的には個人同士の関係で決まることも大いにあると思います。ニールさんもBtoBにおいても、個人の「好き」が重要だと指摘します。

「条件が多少合わなくても、その担当者やサービス・製品が好きであれば上司にお願いすることもあるはずです。BtoBと言っても、結局は『会社の中の人』と『会社の中の人』のやり取りですから」(ニールさん)

このように、企業もよりオープンになり、人を中心とした発信へと企業文化を大きくパラダイムシフトしていく必要があります。こうした変化を起こす方法をニールに訊ねると、「イベント」を強く薦められました。

ニールさんによると、ある医療系の外資企業は、自らの企業文化を変えるため、社内でブランディング、コンテンツマーケティング、インフルエンサーマーケティングなどのエキスパートを招いたヴァーチャルイベントを実施し、ドラスティックな意識変化に成功。あまりの反響に、社外向けのイベントとして展開することになったのだと言います。

「私たちは、外部の新鮮なアイデアや知識を定期的に取り入れつづけなければまりません。社内と社外の方が多く交わるイベントは、設計次第で、みなさんの考え方を一新させるだけの影響力をもっています。」(ニールさん)

社内外の方に向けて多様で新たなマーケティングの考え方を共有するイベントとして、”Bigbeat LIVE”を始めたのも、イベントによってこれまでの考え方を破壊し、作り直すきっかけになると思ったためです。

 

100万人にデジタルマーケティングの学ぶ場を

最後に、ニールさんに今後の展望についてきいてみると、「100万人にデジタルマーケティングの学ぶ場を創出する」という、頼もしい宣言がありました。

すでにニールさんのブログには毎月10万人以上の方がアクセスしており、最先端のマーケティングの概念や発想の価値を伝えています。その対象も企業の経営者やマーケターから、UCLA EXTENSION(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)やニュージャージー州にあるRutgers Universityの学生向けまで幅広く、ゆくゆくはマーケティングに関する学習コンテンツを無料で提供するNPOをたちあげ、世界中のマーケターのデジタルリテラシー向上に貢献したいと、その抱負を語ってくださいました。

また、アジアでも精力的に活動を予定されていています。日本国内向けでカンファレンスでの講演、数百あるマーケティングに関するブログコンテンツの日本語翻訳版の提供も視野に入れられているとのこと。

改めて、来日にあわせて今回の対談をご快諾いただいたニールさんに感謝申し上げるとともに、私たちビッグビートが、マーケティングやイベントを通じて、ますますお客様に選ばれる魅力的なコンテンツづくりができるよう、これからもみなさまと協働しながら挑戦しつづけていきたいと考えております。


対談はニールさんの出身地であるカリフォルニアのワイン「ブレッド&バター シャルドネ カリフォルニア」と共に


 
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