マーケティング 2017.08.16 マーケティングで経営を変える。Bigbeat LIVE 開催レポート
かねてから「マーケティングは経営の最高機能」が持論の濱口。心強い味方(=講演者4名)の皆さんに支えられ、ついに『Bigbeat LIVE』が開催されました。マーケティングの銘シェフたちによるスペシャリテのような、ひと口で何度でも美味しく味わい深い内容。「マーケティングで経営を変える」というテーマに沿って行われた、イベントのすべてをレポートします。
(取材・執筆 ライター長田由香)
ビートルズのロックなナンバー「ヘルタースケルター」とともに、いよいよ『Bigbeat LIVE』が開演。参加登録も400名を超え、用意した席も最前列から最後尾まで埋まっています。
「ライブなので5人でセッションするように1曲を奏でられたら。高尚なセミナーじゃなく、ザワザワしたライブハウスのような雰囲気の中でやりたいと思います。ご声援をいただけるとテンションが上がるので、よろしくお願いします」と濱口があいさつすると、「ハマちゃんいいよ!」とかけ声がかかる一幕も。
経営とは、『社会からの支持を増やし続けること』であると語る濱口。つまりそれは、「ビッグビートがなくなると困るよ」「何か手伝ってよ」「もっと一緒に仕事しようよ」と、社会から必要とされ支持され続け、従業員が「もっとここで働きたい」「一緒にやりたい」と思ってくれる状態。そのために重要な機能となるのが、マーケティングであると言うのが濱口の弁です。また一方で働き方改革やこの国の未来を考えたとき、マーケティングをもっと経営に活かせばいいのでは?という思いへとたどり着いた経緯が語られ、『Bigbeat LIVE』が幕を開けました。
濱口のイントロダクションを皮きりに、4人×1時間の講演というなかなかの長丁場。来場者には飲み物が用意されていましたが、これが水、お茶と、ノンアルコールビール(笑)。濱口の出身地・高知県ではポピュラーな「ミレービスケット」も、全員に配られました。香ばしくて塩っ気のきいた、中毒性のあるおいしさです。講演は、続く登壇者へとバトンタッチ。
切るべきところはバッサリ切ってターゲットを絞り、ネット広告に巨額を投入。大手企業に対抗して奇抜な広告戦略で頭角を現し、会社が強大化するも、やがて離職率がアップ。伸び悩み・グーグルのグループウェアリリースを機に原点に立ち戻り、「世界中の組織のチームワークをよくすること」のみに徹する姿勢に舵を切る……「元はマーケティングに無知でブ●ック企業だった(笑)」と野水さんが語る、サイボウズの企業としての大きな変遷が明かされていきます。
「チームワークしかやらない・世の中のためにならないことはしない」という信念のもと、買収会社の売却・マネジャーの入れ替え・強力な働き方改革によって生まれ変わったサイボウズ。世界に通用する日本の企業クラウドをリリースすべく邁進し、開発に100億を投じて急激なクラウド事業への転換を株主やパートナーに謝罪しながらも、ブレない姿勢を貫いた結果……今ではグループウェアのシェアが10年連続日本一という勝ち組に。クラウドビジネスへの転換も成功。
「自分たちが新ワーク(ライフ)スタイルを実現せずして世界を変えられるわけがない」と、働き方改革もパワフルに推進。斬新で多様的なワークスタイルが明らかにされました。そういった社風によってファンがどんどん増加。ファンの方たちに支えられることが企業のブランディングにつながっていく、というソーシャル時代ならではの良好な関係に、納得しきりです。
このような戦略史・変遷を通じて得た“優良な会社の定義”で、話は締めくくられました。「売上よりユーザー数獲得が会社の安定性につながる」「使用者こそがブランドアンバサダー」という話も。生活を変えるのは自分たちだという意識を持つことの大切さや、時代の変わり目こそ誰よりも先にやるという観念の持ち方など、ハッとさせられる内容で、あっという間の1時間。プロジェクターに映し出された最後の資料には、「これからも新しいチームワークを体現し続ける!」という力強い一文が光を放っていました。
会場では出席者全員に関野さんの著書『ブランド力』が配られました。初版で10万部も発行したというこの書籍、出席者の方にブランディングのチカラを少しでも活用いただきたいという想いでご用意されたそうです。根底にあるのは、「自社の未来や社会への想い、そしてそこで働く人材の成長を知ってもらうことで、その想いに共感し自らの可能性を投じる優秀な人材が集まる。優秀な人材が集まる会社は伸びる」というセオリー。そのことから見ても、BtoBの会社が知名度を高めたりブランディングしたりすることは必要不可欠。「BtoBこそブランディングをしないと、多くの優秀な人材に出会えない」と関野さん。「『うちの会社はまだその規模じゃない』と言っている間に、いい会社がいい人をどんどん採っていく」という話に、大きくうなずく会場。「よい採用をしたければ、ブランディングを!」(関野さん)
優秀な人材が集まらない会社は絶対に伸びない。「ブランディングは、企業が生き残るための未来への投資なのです」と関野さん。今回の大テーマです。
また、自社ブランドの素晴らしさをどれだけ社員に浸透させられるかがカギ。企業のブランド力は社員から生まれる。よって、ブランディングはコンセプトに沿った人材をいかに育てられるか、人材育成から始まると言っても過言ではない。ブランドを生み出すのは社員であり、その社員一人ひとりの成長実感。この部分を強化するうえで大事なのは、「企業コンセプト・カルチャー=その会社が何のために存在するのか、どういう思いで経営されているのか、といった会社のバックストーリー」を明確化すること。それを社内に反映する“インナーブランディング”と、外にPRする“アウターブランディング”が、伸びる企業にとってはマスト。…といった核心の話が続きます。濱口も語っていた「企業の持つありのままの文化・独自性を伝えることは、見えない資産(=ブランド)になる。この資産の何がすごいかと言うと、税金がかからないという点」という話にも通じるものがあり、取り繕ったようなデザインやうわべだけのコピーでは企業の本当のブランドは生み出されない、ということがよく伝わりました。
こうして、成長企業のブランディングや、人材育成(インナーブランディング)の必要性が実例とともに語られ、関野さんの最後のメッセージは「経営者がブランディング、マーケティングを考えていない会社に、その先はない。そこに気づいて動くことができれば、BtoB企業は今からでも変わります!」。
関野さんが「これが今日一番持って帰ってもらいたい言葉」として語った、「やらない理由は星の数ほどあるけど、今すぐやる会社が勝ち残っていく。周囲が『やらない理由』を探して行動していないうちがチャンス!」という声に、背筋が伸びた方も多かったのではないでしょうか。
豊富な事例をお持ちなので、社名入りの実例を駆使した話は説得力が高く、多くの参加者が引き込まれていた様子。「関係者がいらっしゃったらすいません」と謝罪を交えながら、たくさんの成功事例・失敗事例が紹介されました。残念ながら書けません(笑)。
まずは世界ではどれほどデジタルマーケティングが進んでいるか、という話。グーグルとフェイスブックの広告が、全世界の新聞・雑誌の広告費用を上回ったという驚きの実例が飛び出します。ほかにも「多くの人がデジタル(SNS)を通じてパートナーや結婚相手を見つけている」という事例や、「BtoBにおける購入検討方法は8割強が検索エンジン」というデータなどを元に、アメリカにおけるデジタル活用の先進ぶりを紹介。
ウェブサイト、検索エンジン、ブログ、メルマガ、ソーシャルなどデジタルマーケティングにもいろいろあるけれど、そのすべての中心はあくまでもコンテンツ。コンテンツこそデジタルの生命線、とニールさん。しかもシェアしたくなるコンテンツかどうかが最重要。「次世代デジタルはソーシャルシフトの世界なのです。」と続けます。
ニールさんは、ブランド周知や商品PRにおける有効な手段として、有料ソーシャルやインフルエンサーによるブログを列挙。ソーシャルの拡散力について、強調しました。有料ソーシャルは広告としてはまだまだ安価で、拡散の加速効果がある、とも。また「BtoBにおいても60%の購買者が知り合いのレビューを重視」というデータから、新製品やイベントの告知にはインフルエンサーマーケティングが非常に有効と説きました。インフルエンサーコンテンツは寿命も長く、インフルエンサーのブログ記事は非常に重要。
また強力な戦略の一つであり、BtoB企業がぜひとも取り組むべきなのが、マーケティング活動に社員の声を利用する“従業員アドボカシー”。デジタルにおける企業の存在はオフィシャルなウェブサイトだけではなく、ソーシャルメディアによって従業員の数だけ広がるのです。
「次世代に何を残すか、毎日いろいろ考えてはどんどん実験してみることが大事。失敗しないと始まりません。今日の話でひとつでも何かヒントを見つけていただけたり、デジタルの理解を深めていただけたり、または次世代デジタルの可能性を感じていただけたなら、笑顔で2日後の飛行機に乗って帰国できます」という言葉で、ニールさんのスピーチが終了。次の登壇者 飯室さんも「自分も会社員だった頃は、企業でソーシャルというのはキビシイなと感じていましたが、それから1年半。今は企業でもという動きが出始めています。後からやるより、先に仕掛けたほうがいいですね」とバックアップしました。
歯に衣着せぬ物言いで「マッドドッグ」の異名を持つ方なので、がぜんワクワクが高まる…と思っていたら期待通り、やはりNGトーク炸裂。書けません(笑)。プロジェクターで使われた資料162ページは、B2Bhackのサイトからフルでダウンロードできるという周到ぶりです。「面白かったな~と学ぶだけではなく、必ず何かヒントを持ち帰って、すぐにひとつだけ行動を起こしてください。それがあなたの未来を創ります」という冒頭の言葉に、ここまで長時間講義を受けてきた皆さんの気持ちも引き締まっている様子。
特筆すべきは、デジタルは単なるツールでしかない、という話。あくまでも文化>戦略>ツール。実は大のツール好きという飯室さん(「サイボウズさんはツールではなく“チームワーク”」と注釈)。デジタルツールは使う人の技量によって有用かどうかが違ってくるもの。最高の包丁を買ったからと言って料理がうまくなるわけではなく、いいカメラを買えばプロカメラマンになれるわけでもない。まともなマーケティング戦略を持たずして自動化しようとしても無意味なのに、MA(マーケティングオートメーション)に振り回されるのはナンセンス、と飯室さん。
またこの日の話で最大の論点となったのは、顧客理解の大切さでした。自分たちを評価するのは上司でも経営者でもなく、お客様。ものの善し悪しを判断するのもお客様。「したがって、売り手目線から顧客目線に切り替える必要があります。自社製品より大事なのはお客様。お客様がまだ気づいていない課題や、ゴールと現状とのギャップを見つけ、自らを破壊してでも解決しないとイノベーションとは言えません。100億投資したというサイボウズさんのクラウドシフトがまさにそう。戦略の立案とは、顧客の成功を定義し、成功体験をデザインして実現することです」(飯室さん)
設計した成功体験を実現するのに必要なのは、まず文化を変えること。文化は「気づいた人が変えるべき」と飯室さん。コミュニケーションを取らないと文化は変わらないし、その場合のコミュニケーションは「自分が何をどうしたか」ではなく、「受け手がどう受け止めたか」がすべて。
また、人は「共感」したとき、初めて行動を起こすもの。顧客に共感し、徹底的に理解することでマーケティング戦略的なパートナーになることが重要。「ぜひ皆さん、マーケティングを変えて未来を創っていってほしいと思います。今スタートすれば、未来は変わります。ここにいるメンバーで5年後集まって、『あの時このライブの話を聞いたから、今のわたしたちがあります』と言えるよう生き残ってほしいと思います」というエールで、飯室さんの講演が終了。
このあとは懇親会へと場を移して、さらに各所で熱いコミュニケーションが繰り広げられました。そのシーンも含めたこぼれ話は、後日また公開予定です。お楽しみに!
(取材・執筆 ライター長田由香)
開幕。そして濱口、登場
ビートルズのロックなナンバー「ヘルタースケルター」とともに、いよいよ『Bigbeat LIVE』が開演。参加登録も400名を超え、用意した席も最前列から最後尾まで埋まっています。
「ライブなので5人でセッションするように1曲を奏でられたら。高尚なセミナーじゃなく、ザワザワしたライブハウスのような雰囲気の中でやりたいと思います。ご声援をいただけるとテンションが上がるので、よろしくお願いします」と濱口があいさつすると、「ハマちゃんいいよ!」とかけ声がかかる一幕も。
経営とは、『社会からの支持を増やし続けること』であると語る濱口。つまりそれは、「ビッグビートがなくなると困るよ」「何か手伝ってよ」「もっと一緒に仕事しようよ」と、社会から必要とされ支持され続け、従業員が「もっとここで働きたい」「一緒にやりたい」と思ってくれる状態。そのために重要な機能となるのが、マーケティングであると言うのが濱口の弁です。また一方で働き方改革やこの国の未来を考えたとき、マーケティングをもっと経営に活かせばいいのでは?という思いへとたどり着いた経緯が語られ、『Bigbeat LIVE』が幕を開けました。
濱口のイントロダクションを皮きりに、4人×1時間の講演というなかなかの長丁場。来場者には飲み物が用意されていましたが、これが水、お茶と、ノンアルコールビール(笑)。濱口の出身地・高知県ではポピュラーな「ミレービスケット」も、全員に配られました。香ばしくて塩っ気のきいた、中毒性のあるおいしさです。講演は、続く登壇者へとバトンタッチ。
サイボウズ流マーケティングは弱者の経営戦略史
テクノロジーはもちろん、エッジの効いた独自のマーケティング論に注目が集まるサイボウズ。グループウェアのナンバーワン企業から、社長室フェローの野水克也さんが登壇。“サイボウズ流マーケティング”について、「実は弱者の経営戦略史」とつまびらかに語ってくださいました。音楽とともに登場し、「ライブなのでジャケットを脱がせていただきます」と野水さん。切るべきところはバッサリ切ってターゲットを絞り、ネット広告に巨額を投入。大手企業に対抗して奇抜な広告戦略で頭角を現し、会社が強大化するも、やがて離職率がアップ。伸び悩み・グーグルのグループウェアリリースを機に原点に立ち戻り、「世界中の組織のチームワークをよくすること」のみに徹する姿勢に舵を切る……「元はマーケティングに無知でブ●ック企業だった(笑)」と野水さんが語る、サイボウズの企業としての大きな変遷が明かされていきます。
「チームワークしかやらない・世の中のためにならないことはしない」という信念のもと、買収会社の売却・マネジャーの入れ替え・強力な働き方改革によって生まれ変わったサイボウズ。世界に通用する日本の企業クラウドをリリースすべく邁進し、開発に100億を投じて急激なクラウド事業への転換を株主やパートナーに謝罪しながらも、ブレない姿勢を貫いた結果……今ではグループウェアのシェアが10年連続日本一という勝ち組に。クラウドビジネスへの転換も成功。
「自分たちが新ワーク(ライフ)スタイルを実現せずして世界を変えられるわけがない」と、働き方改革もパワフルに推進。斬新で多様的なワークスタイルが明らかにされました。そういった社風によってファンがどんどん増加。ファンの方たちに支えられることが企業のブランディングにつながっていく、というソーシャル時代ならではの良好な関係に、納得しきりです。
このような戦略史・変遷を通じて得た“優良な会社の定義”で、話は締めくくられました。「売上よりユーザー数獲得が会社の安定性につながる」「使用者こそがブランドアンバサダー」という話も。生活を変えるのは自分たちだという意識を持つことの大切さや、時代の変わり目こそ誰よりも先にやるという観念の持ち方など、ハッとさせられる内容で、あっという間の1時間。プロジェクターに映し出された最後の資料には、「これからも新しいチームワークを体現し続ける!」という力強い一文が光を放っていました。
ブランディングは未来への投資
続いてバトンを受け取ったのは、約2500社ものコンサルティング実績を持つ株式会社イマジナの関野吉記さん。「BtoB企業にこそブランド力が不可欠」という持論のもと、「HR(ヒトの力)+ブランディング(ブランドの力)+PR(伝える力)」の3つを一気通貫で担う同社の社長であり、ブランディングのスペシャリストでもある方です。会場では出席者全員に関野さんの著書『ブランド力』が配られました。初版で10万部も発行したというこの書籍、出席者の方にブランディングのチカラを少しでも活用いただきたいという想いでご用意されたそうです。根底にあるのは、「自社の未来や社会への想い、そしてそこで働く人材の成長を知ってもらうことで、その想いに共感し自らの可能性を投じる優秀な人材が集まる。優秀な人材が集まる会社は伸びる」というセオリー。そのことから見ても、BtoBの会社が知名度を高めたりブランディングしたりすることは必要不可欠。「BtoBこそブランディングをしないと、多くの優秀な人材に出会えない」と関野さん。「『うちの会社はまだその規模じゃない』と言っている間に、いい会社がいい人をどんどん採っていく」という話に、大きくうなずく会場。「よい採用をしたければ、ブランディングを!」(関野さん)
優秀な人材が集まらない会社は絶対に伸びない。「ブランディングは、企業が生き残るための未来への投資なのです」と関野さん。今回の大テーマです。
また、自社ブランドの素晴らしさをどれだけ社員に浸透させられるかがカギ。企業のブランド力は社員から生まれる。よって、ブランディングはコンセプトに沿った人材をいかに育てられるか、人材育成から始まると言っても過言ではない。ブランドを生み出すのは社員であり、その社員一人ひとりの成長実感。この部分を強化するうえで大事なのは、「企業コンセプト・カルチャー=その会社が何のために存在するのか、どういう思いで経営されているのか、といった会社のバックストーリー」を明確化すること。それを社内に反映する“インナーブランディング”と、外にPRする“アウターブランディング”が、伸びる企業にとってはマスト。…といった核心の話が続きます。濱口も語っていた「企業の持つありのままの文化・独自性を伝えることは、見えない資産(=ブランド)になる。この資産の何がすごいかと言うと、税金がかからないという点」という話にも通じるものがあり、取り繕ったようなデザインやうわべだけのコピーでは企業の本当のブランドは生み出されない、ということがよく伝わりました。
こうして、成長企業のブランディングや、人材育成(インナーブランディング)の必要性が実例とともに語られ、関野さんの最後のメッセージは「経営者がブランディング、マーケティングを考えていない会社に、その先はない。そこに気づいて動くことができれば、BtoB企業は今からでも変わります!」。
関野さんが「これが今日一番持って帰ってもらいたい言葉」として語った、「やらない理由は星の数ほどあるけど、今すぐやる会社が勝ち残っていく。周囲が『やらない理由』を探して行動していないうちがチャンス!」という声に、背筋が伸びた方も多かったのではないでしょうか。
豊富な事例をお持ちなので、社名入りの実例を駆使した話は説得力が高く、多くの参加者が引き込まれていた様子。「関係者がいらっしゃったらすいません」と謝罪を交えながら、たくさんの成功事例・失敗事例が紹介されました。残念ながら書けません(笑)。
BtoBコミュニケーションはデジタルで加速する
ここで、デジタルコミュニケーションの世界的なオーソリティかつパワーインフルエンサー、ニール・シェーファーさんの登場です。かつて15年間日本に住んでいたニールさんは、関西弁も得意。12年前アメリカに帰国する当時はソニー、NTTドコモなど最先端のイノベーションテクノロジーを誇っていた日本が、その後停滞していることを懸念しているニールさん。アメリカのマーケティングとの差がどんどん開いていることを危惧し、「僕の大好きな日本にまた、日本らしさと元気を取り戻してほしい! 少しでも力になれるなら…」と、ロサンゼルスから駆けつけてくれました。まずは世界ではどれほどデジタルマーケティングが進んでいるか、という話。グーグルとフェイスブックの広告が、全世界の新聞・雑誌の広告費用を上回ったという驚きの実例が飛び出します。ほかにも「多くの人がデジタル(SNS)を通じてパートナーや結婚相手を見つけている」という事例や、「BtoBにおける購入検討方法は8割強が検索エンジン」というデータなどを元に、アメリカにおけるデジタル活用の先進ぶりを紹介。
ウェブサイト、検索エンジン、ブログ、メルマガ、ソーシャルなどデジタルマーケティングにもいろいろあるけれど、そのすべての中心はあくまでもコンテンツ。コンテンツこそデジタルの生命線、とニールさん。しかもシェアしたくなるコンテンツかどうかが最重要。「次世代デジタルはソーシャルシフトの世界なのです。」と続けます。
ニールさんは、ブランド周知や商品PRにおける有効な手段として、有料ソーシャルやインフルエンサーによるブログを列挙。ソーシャルの拡散力について、強調しました。有料ソーシャルは広告としてはまだまだ安価で、拡散の加速効果がある、とも。また「BtoBにおいても60%の購買者が知り合いのレビューを重視」というデータから、新製品やイベントの告知にはインフルエンサーマーケティングが非常に有効と説きました。インフルエンサーコンテンツは寿命も長く、インフルエンサーのブログ記事は非常に重要。
また強力な戦略の一つであり、BtoB企業がぜひとも取り組むべきなのが、マーケティング活動に社員の声を利用する“従業員アドボカシー”。デジタルにおける企業の存在はオフィシャルなウェブサイトだけではなく、ソーシャルメディアによって従業員の数だけ広がるのです。
「次世代に何を残すか、毎日いろいろ考えてはどんどん実験してみることが大事。失敗しないと始まりません。今日の話でひとつでも何かヒントを見つけていただけたり、デジタルの理解を深めていただけたり、または次世代デジタルの可能性を感じていただけたなら、笑顔で2日後の飛行機に乗って帰国できます」という言葉で、ニールさんのスピーチが終了。次の登壇者 飯室さんも「自分も会社員だった頃は、企業でソーシャルというのはキビシイなと感じていましたが、それから1年半。今は企業でもという動きが出始めています。後からやるより、先に仕掛けたほうがいいですね」とバックアップしました。
マーケティングで経営を変える。顧客理解が最重要
トリを飾るのは、B2Bhack.com主催の飯室淳史さん。営業とマーケティング両方のトップマネジメントを歴任したGEヘルスケア・ライフサイエンス社では、全世界における同社のデジタルマーケティング戦略を日本から統括した経験もお持ちの、最強マーケッターです。歯に衣着せぬ物言いで「マッドドッグ」の異名を持つ方なので、がぜんワクワクが高まる…と思っていたら期待通り、やはりNGトーク炸裂。書けません(笑)。プロジェクターで使われた資料162ページは、B2Bhackのサイトからフルでダウンロードできるという周到ぶりです。「面白かったな~と学ぶだけではなく、必ず何かヒントを持ち帰って、すぐにひとつだけ行動を起こしてください。それがあなたの未来を創ります」という冒頭の言葉に、ここまで長時間講義を受けてきた皆さんの気持ちも引き締まっている様子。
特筆すべきは、デジタルは単なるツールでしかない、という話。あくまでも文化>戦略>ツール。実は大のツール好きという飯室さん(「サイボウズさんはツールではなく“チームワーク”」と注釈)。デジタルツールは使う人の技量によって有用かどうかが違ってくるもの。最高の包丁を買ったからと言って料理がうまくなるわけではなく、いいカメラを買えばプロカメラマンになれるわけでもない。まともなマーケティング戦略を持たずして自動化しようとしても無意味なのに、MA(マーケティングオートメーション)に振り回されるのはナンセンス、と飯室さん。
またこの日の話で最大の論点となったのは、顧客理解の大切さでした。自分たちを評価するのは上司でも経営者でもなく、お客様。ものの善し悪しを判断するのもお客様。「したがって、売り手目線から顧客目線に切り替える必要があります。自社製品より大事なのはお客様。お客様がまだ気づいていない課題や、ゴールと現状とのギャップを見つけ、自らを破壊してでも解決しないとイノベーションとは言えません。100億投資したというサイボウズさんのクラウドシフトがまさにそう。戦略の立案とは、顧客の成功を定義し、成功体験をデザインして実現することです」(飯室さん)
設計した成功体験を実現するのに必要なのは、まず文化を変えること。文化は「気づいた人が変えるべき」と飯室さん。コミュニケーションを取らないと文化は変わらないし、その場合のコミュニケーションは「自分が何をどうしたか」ではなく、「受け手がどう受け止めたか」がすべて。
また、人は「共感」したとき、初めて行動を起こすもの。顧客に共感し、徹底的に理解することでマーケティング戦略的なパートナーになることが重要。「ぜひ皆さん、マーケティングを変えて未来を創っていってほしいと思います。今スタートすれば、未来は変わります。ここにいるメンバーで5年後集まって、『あの時このライブの話を聞いたから、今のわたしたちがあります』と言えるよう生き残ってほしいと思います」というエールで、飯室さんの講演が終了。
このあとは懇親会へと場を移して、さらに各所で熱いコミュニケーションが繰り広げられました。そのシーンも含めたこぼれ話は、後日また公開予定です。お楽しみに!