デザイン 2020.12.22 【BACKSTAGE 2020レポート】コロナ禍で”進化”&”深化”したイベントマーケティング
12月21日(月)に、BACKSTAGE実行委員会主催「BACKSTAGE 2020」が虎ノ門ヒルズフォーラムにて、オフラインとオンラインのハイブリッド形式で行われました。
全11セッションで構成された本イベント内の5つ目のセッションに、弊社代表濱口が登壇。質問も多くいただいた本セッションは、「コロナ禍で”進化”&”深化”したイベントマーケティング」と題し、Still Day One合同会社の小島さんモデレートのもと、サイボウズ株式会社の鈴木さんと、COVID-19によってB2Bイベントの在り方が大きく変化したこの難局をどのように突破したのか、イベント主催側・代理店側の両視点からディスカッションしました。
写真左:サイボウズ株式会社 プロモーションディレクター 鈴木 亜希子さん
写真中央:弊社 代表取締役 濱口 豊
写真右:Still Day One合同会社 代表社員 パラレルマーケター 小島 英揮さん
コロナ禍でも”イベント”を行った2社にとって何が一番チャレンジだったか?
サイボウズ社は、2020年11月11日~13日に幕張メッセにて「Cybozu Days 2020」という3000名規模の大型カンファレンスを実施。この時期のオフラインイベントの実施は、チャレンジングに感じられましたが、ぎりぎりまで丁寧な検討があったようでした。オフラインイベントを開催するかどうかの決定は、5月末(会場を抑える必要があるタイミング)。オンラインからオフラインへの変更は難しいが、オフラインからオンラインへの変更はそれに比べれば変えやすいという傾向もあると考え、判断をされていました。
ただ、オフラインでの実施を決めた後も、毎日色々なニュースが飛び交い、先が読めない中での決断と実施は、鈴木さんにとってのチャレンジだったと語ります。
日々情勢が変わる中でのイベントの企画実施は、主催者・運営スタッフ・来場者それぞれの安全も考慮し、ぎりぎりまで柔軟な対応を求められます。数週間前だろうが、切り替えなければならないときがあればそうするしかありません。12月に行われた大阪でのCybozu Daysは、オンラインに切り替えて実施されていました。(当時のアナウンス:https://note.com/cybozudays/n/nc933852e6c3e)
一方、代理店側の視点として濱口は、元々のビジネスのルールやニーズが変わってしまったこと、また、お客様のこれまでのマーケティング活動が周りの様子を見るために止まってしまったことがBigbeat LIVEへのチャレンジのきっかけであったと話します。
ビッグビートは2020年8月3日~7日までの5日間、オンラインにて「Bigbeat LIVE」を行いました。
毎年8月に過去3回行われていた当イベントは、元々2020年はオリンピックが被る時期ということもあり実施しないつもりでした。しかし、2月にCOVID-19が流行しはじめ、緊急事態宣言も影響し当社売上げの7割を占めるリアルイベントのサポート業務がほとんど0になる事態になる中で、濱口は実施を再検討。
この苦しい中でも「Bigbeat LIVE」開催に至った考えとして、濱口は「ピンチの時はひとつのことに絞ってやる。ピンチの時ほどGIVEを考える。発信する側に回らなければならない。」と語ります。「何かやらなければならない」という思いを持った51名の方にご賛同・ご登壇いただき、6月の実施決定から2か月弱で初めてのオンラインイベントの準備をしました。
「配信民主化」の波をどう見るか?
コロナ禍でオンラインイベントのツール・機材や、配信のノウハウが急速に普及された昨今の「配信民主化」の流れをどのようにとらえているのか、小島さんからの問いかけに対し、「ツールのおかげで一人でも配信ができるようになってきたオンラインイベントの大衆化は、業界の活性化が感じられ、むしろ追い風になっていると感じている」と語る濱口。コロナ禍で全てがとまったように感じてしまう方も多いかと思いますが、新しいエコシステム・経済圏もできていることが感じられます。サイボウズ鈴木さんは、場所を借り、備品を揃え、現場に立たなければならなかったオフラインイベントより、担当者が一人で自宅から配信ができるようになったのはとても楽になったと感じる一方で、「大規模なオンラインイベントはオフラインより失敗リスクがある」と話します。オンラインイベントは、単一障害点が多く、どこまで冗長化すれば良いのかを考えるのが難しいため、「絶対に失敗しないイベント」をつくるのは、オフラインよりもオンラインの方が難しいのではないかと、鈴木さんは考えます。
YouTubeやZoomなどの便利なツールに頼りきって配信すると、例えば権利関係のもので配信がストップしてしまう可能性があります。その中で、ビッグビートはなるべく外部の環境に依存しないプラットフォームを開発し、企画運営のサービスも付帯した「KODOU」というオンラインイベントプラットフォームサービスを提供することになりました。
イベントのオンライン化におけるLIFT&SHIFT
いままでのオンラインイベントをオンラインに対応していくLIFTが多い昨今、本来はSHIFT(最適化)をしなければならないのでは、という小島さんからの問いかけに対し、鈴木さんは、「6月頃まではオフラインでやっていたものをオンライン化しても目新しさがあったが、今は”ながら聞き”の人もいるので、そういう方々にコンテンツをどう届けるかを考えなければいけない」と話します。また、気になる歩留まりについては、オンラインでもオフラインでも大きく変わらないという見解を、両者ともに持っているようでした。
しかし、滞留時間を考えるとオンラインは離脱してしまう可能性が高く、例えば視聴画面内のアプリケーションのポップアップ通知が出てくるとイベントよりもそちらに意識が流れてしまう可能性があると話します。
その中でも、アテンションを継続させ、エンゲージメントを高めていくことが、これからのオンラインイベントのデザインに求められていくことになります。
いかに聞いてもらうかを考えている鈴木さんが最近注目しているのは「VR」だそうです。
オンラインで熱中するものとしてゲームを連想し、何がそんなに熱中させるかを考えたときに「自分で操作できること」がポイントなのではないかと、鈴木さんは考えます。没入感のあるイベントをデザインするために、これを企業イベントにも取り入れられないかと探っているそうです。
「進化:新たに取り組んだ事」と「深化:従来以上に深堀した事」
この一年で多くのイベント、大きなイベントに携わった両社。2社それぞれの進化と深化を振り返りました。まずビッグビートは、この一年で、
・オンラインイベントに対応すべく、会議室をイベント配信スタジオ「Rockup! Studio」に改装
・自力で5日間、初のオンラインイベント「Bigbeat LIVE」を開催
・オンラインイベントプラットフォームサービスKODOUの開発
を行い、デジタルを積極的に取り込んだことで、新しいビジネスのかたちを見つけ、進化していきました。
一方で、深化という点で、「イベントのデザイン(設計)が必要だということをあらためて認識した」と濱口は語ります。
このデザインというのは表面的なかっこよさではなく、イベントにどのような出会いがあってどのように人が動くのか、というプロセスも含めた設計のことを差します。
オフラインからオンラインへのLIFTでも、「なぜこれをやるのか」をきちんと考えなければ、オフラインの現場力でできていたものが消えていってしまいます。
ビッグビートもお客様も一緒に、この”デザイン”について考えることは、来年以降も大切にしていきたいポイントです。
サイボウズ鈴木さんは、変化に対しオンライン・オフライン両方に、より柔軟に対応できるようにしたことが進化だったと話しました。
先述のCybozu Days 2020での対応の通り、オフラインでの実施をベースに、日々の状況を正確にとらえ、安全にかつクオリティ高く実施していくこと。正確さとスピードを備えた対応力は、今後も引き続き必要になってくるのではないでしょうか。
深化は、オンライン化が進んだことで、オフラインの良さが何かを考える機会になったことだと振り返りました。オフラインの良さは、より密になれる(共感できる・場の共有ができる)点だと、鈴木さんは考えます。
今後オンラインについては、先述のVRなども含め、本質的なところをみながら、よりオンラインに適したかたちを考えていきたいとのことでした。
2021年イベントマーケティングはどうなる?
たくさんの変化があった2020年。もう以前のようには完全に戻らないと予測される中で、イベントを通じてお客様とコミュニケーションをする、イベントを通じてお客様を支援していく双方の立場から、2021年をどう捉えているか、小島さんから問いかけがありました。濱口は「あらためて2020年は、B2Bマーケティング自体が大きく変化した年だった」と振り返ります。
B2Bのマーケティングという大きなくくりの中での、イベントには、”リード”というキーワードがあります。今まではより多くのリードがとれるか、獲得単価はいくらか、という議論がなされていました。「リードを刈り取る」ではなく「リードが集まる場をつくる」ことがこれからのテーマになり、それは進化にも深堀にもなることだ、と強く語りました。
サイボウズ鈴木さんは、これからは「目的によってイベントの有り方が変わるのではないか」と話します。そのイベントでリード獲得をしたいのか、関係性を強化したいのか、それによって準備・提供するコンテンツを考えていく必要があると語ります。
最後は、小島さんから「コロナ禍でイベントマーケティングに閉塞感があった1年でしたが、2社の話を聞いて、次のあるべき姿をみつけて進んでいると感じ、変化の時代に新しいポジション取りやエコシステムもできているので、決して悲観するものばかりではない。二人の話を参考に前に進んでほしい」というメッセージで、セッションを締めくくりました。
あらためて光が当たった価値、2021年の深化へ
2020年は、“場づくり”について、見直す一年となりました。気軽に人を集めることができなくなってしまっただけで、こんなにも「イベントの意味」「ライブの価値」「要不要」を考えることになるとは思ってもいませんでした。
今年はできなくなってしまったことや予定通りに進まないことも多く、本当に大変でしたが、私たちビッグビートも、営業が、事務局スタッフが、エンジニアが、それぞれ一人ひとりができることを一生懸命考え、未来が良くなるように行動をしました。すると、オフィス内に配信スタジオができ、オンラインイベントを5日間開催し、新しいサービスが生まれました。そして、それをたくさんの方に選んでいただき、今年もたくさんのイベントのお手伝いをすることができました。
思い返せば今年のBigbeat LIVEは、4月に入社した新人を含め若手が特に活躍したと思います。社員全員が初めてのオンラインイベント。知識もスキルもフラットに、みんなゼロからのスタートです。全員が知識や技術の習得にそれぞれ奮闘し、年次関係なく相談や質問をし合い、お互いを認め合う姿が今年は多く見受けられたと感じます。
悲観的に捉えがちな一年ですがこのように紐解いてみれば、自分たちでできることも増え未来向きに進化・深化した一年だったと思います。
さあ、2021年はどんな一年にしていきましょうか?
今回濱口が登壇させていただいたBACKSTAGE 2020は、オンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッド形式での開催でした。今後はこのような形式でのイベントも増えていくと考えています。引き続き、“場づくり”のプロとしての視点から、お客様の「やりたい」をデザインしていくことに尽力してまいります。
また、2020年に溢れていた「コロナだから」を2021年には「コロナだけど」に変えて、新しいことにたくさん挑戦していく一年にしていきたいと思っています。
本イベントをご視聴くださった皆様、そして本レポートをご覧くださった皆様、ありがとうございました。感想などありましたらぜひお寄せいただければと思います。
本記事のセッションを動画でご覧になりたい方は、BACKSTAGE 2020へご登録の上、ご視聴ください。アーカイブ配信期間は12/25頃~1/31までを予定されています。