BigbeatLIVE 2025.08.29 LIVE レポート | コミュニティという「ゆるい」つながりが拓く未来 ーSession2ー
8月1日に開催されたBigbeat LIVE 2025。
ご参加いただいたライターの皆さんに、いち参加者としての視点から
LIVEの振り返りとレポートを執筆いただきました。
+++
こんにちは、ライターの中島佑馬です。
8月1日に開催し、私も参加した「Bigbeat LIVE 2025」。
私が参加した中でぜひご紹介したいのがSession2のコミュニティをテーマとした講演です。
登壇者はコミュニティマーケティング推進協会 代表理事の小島 英揮さん、高知大学の谷口 ちささん、そして中央省庁で公務員として働く河尻 和佳子さんの3名。
全くキャリアの異なる3人が語る今回のセッションではどんなことが語られたのか。参加者の私の視点も交えながらレポートしてみたいと思います。
1人で早く行くか?みんなで遠くまで行くか?
セッションは、「早く行くなら一人で行け、遠くに行くならみんなで行け」というアフリカのことわざについての所感から始まりました。コミュニティに関わるビジネスに取り組む3名の答えは、意外にも全員「1人派」です。
「最速で結果を出したい」からこそ1人で行くことが多いという河尻さん。しかし、自分1人が持てる経験の量には限界があるため、思いもよらない企画や従来と異なるアプローチを思いつきづらいという所感を示しました。
また、経験を重ねることで成功の肌感がわかってしまい、面白くなくなるという点も挙げています。

河尻 和佳子 さん
本来はコミュニティに参加したくないと告白する河尻さんですが、流山市役所勤務時代に「崖から飛び降りるような気持ちで仕方なく」地域コミュニティに参加したことが転機となります。
いざ入ってみると同じ方向を向きながら進むスピードは各人に任されるという環境に居心地の良さを感じました。「自分のメリットで動けるので、チームやプロジェクトのような強制力はない。
仕事とは違って指示もできないが、そのゆるさや意見の多様性が時に大きな力になる」と話していました。

小島 英揮 さん
小島さんも本来は1人で行く人間。マネージャー時代の体験から「自分が人の3倍働いても、3人分以上の仕事はできないことに気づいた」のがコミュニティの力を意識するきっかけとなりました。
「最初は1人でどんどん行っちゃえと思ってるけど、それでは行けないところが結構あって、そこに行く時にはみんなで行かないといけない」と語る小島さん。
目的のために組織や立場を超えてフレキシブルに集まる人が寄り合う「場」こそがコミュニティだとしています。
谷口さんは最近まで「基本的に何でも1人でやってしまう」ために1人で行く派でした。しかし、物事に巻き込まれることで自分の物事も進んでいく感覚を体験し、1人で行くことに息苦しさを感じるようになります。
「他の人のテーマを一緒にやっていくと、だんだん自分のことも進んでいく」と、コミュニティでの関わりを大学院やゼミの学びに重ねました。

谷口 ちさ さん
谷口さんがこうしたコミュニティの力を感じたのは、小島さんによる勉強会に「巻き込まれた」ことがきっかけでした。
もともと谷口さんは興味を持った場所に足を運び、その場にいる人とつながり、SNSで相互フォローするといった形で関係を維持する「ゆるいつながり」を持っています。
こうしたつながりは「構造的空隙」という理論になっており、「いろんなネットワークの接続点にいると仕事が舞い込んでくる」のだといいます。
企業勤務から大学教員への転身も、複数のネットワークの間を旅するように移動してきた結果でした。
ちなみに、私のようなフリーライター業はフットワークの軽さが持ち味ですが、遠くに行きたいなら多くのコミュニティに入らなければならないし、巻き込まれることでより速く・軽くなるものもあるという新たな気付きがありました。
谷口さんの「構造的空隙」理論は業種を問わず、「コミュニティや関係人口は、自分を客観視するだけでなく、行き先を見つける手助けもしてくれる」という点で大きく共感します。
仲間にもロールモデルにもなる「関係人口」の作り方

小島さんは、フィンテック技術のオープンソースコミュニティでの経験を通じて、エンジニア、ベンダー、マーケターからなる「三方良し」のメカニズムを「関係人口」と呼んでいます。
この中でどのように仲間を作るかについて、3人の実践から信頼貯蓄の重要性が見えてきました。
「ここにいたいと思った場所で、思い切りコミットする」ことをポイントとして挙げる谷口さん。「ほとんどの人が『やります』って言ってやらない。
だからこそ、精一杯フォローしたりといった形でコミットしている人間に人は集まる」と語ります。
河尻さんは、コミュニティに参加していると「あなただからこの役割を頼む」といった形で依頼されることがあると語ります。
そのうえで、「自分らしさや強みって、関係人口の周りの人からもたらされるものだと思う」と、コミュニティにコミットすることで自己理解がもたらされるという側面を紹介しました。
「自分にとってポジティブなフィードバックが欲しいと思ったら、その場にコミットして信頼関係を作らないといけない」と改めて信頼関係の重要性を強調する谷口さん。
良いフィードバックがもらえない場合は思い切って場を変えるか、自分が正しくコミットできているかを問い直すことも必要だとしています。
小島さんは「コミュニティに行けば自分自身が見えてくることがあります。自分を助けてくれる人が見つかるかもしれないし、逆に自分が助けたい人も見つかるかもしれない」と相互扶助の仕組みに身を置くことの意義を説きます。
「趣味や仕事など複数のコミュニティに入って、多方面からのフィードバックをもらう」ことが望ましいとしました。
小島さん自身も「経営者」「マーケター」「社団法人代表」という複数の顔を持つことで、その交差点に仕事が舞い込んでくるといいます。
生成AIの台頭でSEOがLLMOに、マーケティングオートメーション(MA)ツールが自律型エージェントに置き換わるなか、コミュニティマーケティングは人の手で新たな顧客を呼び込み、企業やサービスの顧客ロイヤリティを上げる施策として注目されています。
複数の居場所を持つことは人として豊かな人生を歩むことにもつながり、コロナ禍以降のリモートワーク増加により、オフラインのつながりはより一層重要性を増していくものだと私自身も感じています。
「合わないなら抜けよう」というゆるさが革新を生む
セッション終盤の質問コーナーで、ある来場者からコミュニティの定義に関する質問がありました。「構造的空隙や社会関係の話が出ていたが、コミュニティの大きさとしてミクロとマクロ、そして中間のメゾというレベルがある。自分は所属したくないけれども所属しているコミュニティもあるし、自ら入っているコミュニティもある。そのレベル感をどう考えているか」という問いかけです。
小島さんはコミュニティの定義について、「もともとは地域の集まりのことを言っており、そこに本人が所属したいかしたくないかという意思は関係ない。
しかし今日話していたコミュニティはそうした地域とは異なり、考え方とか方向とか目的で合意している人の集まりのこと」だと説明しました。

谷口さんはレベル感について、正統的周辺参加という理論的な観点から補足します。「コミュニティに入る時って、いきなりその中心には行けない。
最初は周辺で様子を見ていて、だんだん何かができると中に入っていく。あるいは"このコミュニティは違うかな"と思って外に行く」という「自分がそのコミュニティの中で正当性を持っているかどうかのグラデーション」が重要だとしました。
「コミュニティに入ったから、すごく頑張らなきゃいけないということでもない。様子見で入ったって全然いい。とにかく一歩踏み出すことができればいい」と谷口さんは語ります。
小島さんはチームとコミュニティの対比から、「チームというのは必ず役割がある。コミュニティは役割を担わないことも許される。でも、役割を担うと居場所ができる」とつけ加えています。

地域や組織という枠を超えて、関心や目的でつながる緩やかな集まりであるコミュニティ。自覚的に選択し、参加の深さも自分で決められます。
その自由度こそが、コミュニティの可能性を広げているのではないでしょうか。教育の現場でも従来のような講義形式から参加型への転換が為されており、若い世代にとっては、つながりを強制されない「ゆるさ」が刺さるのかもしれません。
効率化や自動化が進み、生成AIが台頭する中で、人間にしかできない価値とは何でしょうか。それは、ゆるくつながり、モヤモヤし、越境し、予想外の化学反応を起こすことかもしれないと今回のセッションを通じて感じました。
コミュニティという「遠くへ行くための道具」を、私たちはもっと活用できるはずです。
一人で早く行くか、みんなで遠くへ行くか。その答えは二者択一ではありません。時に一人で走り、時にみんなの力を借りる。その柔軟性こそが、これからの時代を生き抜く鍵となるのでしょう。
執筆:中島 佑馬
撮影:野村 昌弘