BigbeatLIVE 2020.11.09 表現にも判断にも、その企業「らしさ」 が表れる【Bigbeat LIVE 2020 ~Day2~<前編>】
8月3日(月)~8月7日(金)の5日間、オンラインにて開催された『Bigbeat LIVE 2020』。
白熱した5日間の模様を、コピーライター小笠原の視点でお届けします!
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『Bigbeat LIVE 2020』の2日目は「マネジメント セッション」と題して、企業の執行役員クラス、行政のマネジメントリーダーの方々が登壇しました。「マーケティングと経営」「マーケティングと地域・行政」のそれぞれの視点から、戦略の描き方、要所での判断軸、組織づくり・コミュニケーションの取り方などの幅広いテーマに切り込みました。
事業の創造期・浸透期・拡大期における、それぞれの「マーケティングと経営」に焦点を当てたのは、『マーケティングで経営を変えるのリアル ~経営の視点、組織の視点~』のセッション。以下の3名が登壇しました。
【登壇者】
サイボウズ株式会社 社長室 フェロー 野水 克也 さん(★)
株式会社SmartHR 執行役員/VP of Marketing 岡本 剛典 さん
ワークスモバイルジャパン株式会社 執行役員 萩原 雅裕 さん
(★はモデレーターを担当)
企業の “らしさ” を確立すること
左から、サイボウズ株式会社 野水 克也 さん / 株式会社SmartHR 岡本 剛典 さん / ワークスモバイルジャパン株式会社 萩原 雅裕 さん
ビッグビートでは「マーケティング=市場・相手から選ばれること」だと定めています。それを実現させるために必要なことの一つが、「誰」に対して、「どんな価値」を感じてもらいたいかを決めること。そしてそれは、他社と比較しての自社の立ち位置・キャラクターを確立させることに繋がるというエピソードが語られました。
ワークスモバイルジャパン株式会社の萩原さんは、スタートアップとしてこれから事業を始めていこうとするとき、同社が狙う立ち位置をどこにするかを徹底的に考えたといいます。
「自社の競合はどこだろうと探ったときに、少し広い視点でグループウェアとすると、すでにMicrosoftやGoogleといった名だたる企業が先導していました。では、私たちはどこを尖らせようかと考えたときに、今までのソリューションでは届かなかった・今までITが上手く活用できてこなかった人たちをメインのターゲットにしようと定めました。そこから、その人たちに伝わる言葉・伝わる価値は何だろうと考えていきました。」(萩原さん)
このようにターゲットを定めた結果、競合他社のイメージが「かっこよさ」「クール」「(その製品を使うと)すごい自分になれる」という印象なのに対し、同社は「親しみやすさ」「柔らかさ」を前面に推して、ターゲットに寄り添う印象を持ってもらえるように意識したそうです。
同様に、サイボウズ株式会社の野水さんも創業時のことを振り返って、当時の市場で圧倒的なシェアを誇っていたロータスノーツや、大きなパワーを持つ企業であるMicrosoftと自社を比較したときに、「伝統的」「巨大な」「パワフルな」といったイメージに対抗するには「若さ・フレッシュさ」「元気の良さ」をアピールするべきだと考えました。
この2社のように自社の立ち位置やキャラクターが定まると、表現もそれに伴ってきます。その企業らしいコンテンツやデザインが生まれるのです。また、その企業らしさは根底に置きつつも、製品・サービスにもそれぞれの性格やイメージが表れてくると考えます。すべてが繋がって、企業のブランドが醸成されていきます。
ビッグビートのキャラクターは「明るい」「元気な」「三枚目」。良くも悪くも「かっこいい」「スマート」「器用」のような言葉が当てはまる私たちではありません。Bigbeat LIVEでも、ビッグビートらしさをベースにしたコンテンツ・デザインはどんなものかを考え、何度も意見をぶつけ合ってきました。私たちは広告会社として、自社はもちろん、お客様である企業それぞれの “らしさ” が表れるアウトプットを提供できる存在でありたいと考えています。そして、そんなアウトプットを積み重ねることで、お客様も私たち自身も、市場から選ばれ続けていくのだと信じています。
“らしさ” は判断にも表れる
このセッションでは「判断をする」ことについても興味深いお話がありました。登壇者全員が執行役員クラスの方々ということもあり、様々な局面での判断をどのような軸で行ってきたのか、参加者から質問も挙がるなど関心が寄せられました。萩原さんは「経営者の想いや指針」を最優先に据えて判断することがあったといいます。自社サービスについて、どこか特定の業界・業態に特化して使われるのではなく、幅広く社会全体のプラットフォームとして定着させていくという強い信念を経営者が持っていたため、どれだけ夢物語のような話であってもその信念を貫く判断をしてきたようです。「正直、正しい判断ができたかどうかわからないこともたくさんあった」と、萩原さんは語りました。
野水さんの場合は、何か判断に迷ったときは「王道はどれだ」と自分に問いかけたそうです。王道とは、一般的なという意味ではなく、自分自身が太陽の下で堂々と「正しい」と宣言できる道という意味。他の選択肢と比べてスピードが落ちようと、手順を飛ばそうと、自信をもって正しいと言えることを見つけようとしてきました。
サイボウズでは「公明正大」な文化を育んでいる
株式会社SmartHRの岡本さんからは、その判断の結果が「三方よしになるか」を考えたとのお話がありました。その中で、「 “こうしたい” という自分の意思が判断を鈍らせたり、邪魔をする瞬間もありました」と、岡本さんは語りました。そんなときには一度冷静になって、一歩引いて大局的に捉えることを意識したそうです。
このように三者三様の答えがありましたが、私はやはりその企業の “らしさ” が根底にあるのではないかと感じました。特に「プラットフォームのポジションを取りたい」というワークスモバイルさんの目指す姿・立ち位置や、「公明正大を体現する存在でありたい」というサイボウズさんの文化は、まさに判断の軸にそのまま表れていると感じます。経営に近い立場での判断を重ねてきた3名だからこそ、自分の判断と企業の “らしさ” を照らし合わせることが多かったのかもしれません。
ビッグビートの代表濱口の判断基準は、「困難がありそうでも、よりワクワクする・面白そうな方を選ぶ」こと。現場に近い私たちは、「困難を乗り越えるのは、辛いし嫌だな…」と思う気持ちもある一方で、ワクワクする・面白そうな匂いにつられ、ついつい張り切ってしまう性分にあるようです。Bigbeat LIVEを実施する判断が下された会期2か月前から、困難だらけでくじけそうな瞬間も多々ありましたが、終わってみれば「楽しかった!」と胸を張って言えるような結果になりました。あのときの判断を正解にすることができたと、関わったメンバー全員が感じているのです。
その企業 “らしさ” を確固たるものにしていくためには、一定の時間が必要です。経営・マーケティングの戦略によっては、自社の “らしさ” を見つめ直したり、時にはアップデートをしていくことも必要でしょう。私も自社のマーケティングの一端を担う存在として、ビッグビートらしい表現にできているかどうか、常に振り返りながら進めなければいけないとあらためて感じました。特に “らしさ” というのは感覚で、言語化しづらい部分もあります。自分以外の誰かの目で見ても表現に表れているかどうか、検証も必要なのだと思いました。
2日目にはもう1つ、地域・行政でのマーケティングの実態に切り込んだセッションも行われました。その模様は後編でお届けしますので、ご期待ください。