地域 2020.01.22 世界の鯖江となるか。商工会議所発のマーケティング拠点がオープン
2020年1月22日、鯖江商工会議所1階にグランドオープンした「SABAE CREATIVE COMMUNITY(サバエ クリエイティブ コミュニティ)」。モノづくりに従事する鯖江の事業者のマーケティング活動を全面的にサポートする施設だ。
公益団体が地元のマーケティング強化のため、ハードをリニューアルすることにどのような狙いがあるのか。鯖江商工会議所 CXO(Chief Experience Officer)/経営支援課 課長 田中英臣氏に聞いた。
(写真右)鯖江商工会議所 CXO/経営支援課 課長 田中英臣氏 (写真左)ビッグビート マーケティングディレクター 野北
リニューアルするのは、商工会議所の1階部分だ。鯖江で作られた眼鏡や漆器などの新商品の閲覧・体感エリアや商談エリアにカフェを併設し、地元の経営者やクリエイター、県外・国外のデザイナーが気軽に集ったり、コラボレーションしたりする環境を整備。
3Dプリンターやレーザーカッターなど、プロトタイプ制作に必要な機材も用意されているので、モノづくりに従事するクリエイターのアイディアを具現化することもできる。
このプロジェクトに取り組む鯖江商工会議所 田中英臣氏は、「試作品制作や販売、市場調査、対企業や一般消費者に対する情報発信など、地元の企業がマーケティングの全プロセスを一貫して行うための8つのエリアで構成されています」と説明する。
SABAE CREATIVE COMMUNITYをプロデュースするのは、起業家・プロデューサーの黒崎輝男氏だ。黒崎氏はIDÉEの創始者であり、「ファーマーズマーケット」や「東京デザイナーズブロック」「NOHGA HOTEL」など、デザインを軸に新たな価値を生み出す「場」をクリエイトしてきた多数の実績を持つ。鯖江のモノづくりの根幹にあるデザインとも親和性が高い。
商工会議所という公益経済団体が、地域発展を目指してマーケティングのための拠点を作るというのは、全国的にも珍しい。
名目だけの建物を建設するケースもあるが、田中氏の取り組みのユニークな点は、建物というハードだけでなく、そこを活用する地元の経営者やクリエイター、広く地域住民のマインドシフトといったソフト面も踏まえ、「鯖江を世界的なイノベーション拠点にする」と明言していることにある。
「もっといえば、鯖江だけでなく、日本全体、世界全体の経済を浮揚させ、より良い世界を次の世代に残していくことを目指しているんです」と田中氏はいう。この壮大な構想には、田中氏のマインドセットを変えた「デザイン思考」との出会いがあったという。
いまでこそ鯖江市の活性化に全力で取り組む田中氏だが、もともと地元産業や地域経済に強い関心があったわけではない。学生時代は、オーディションを受け米国テニスアカデミーに留学していた。アカデミーでは元ランキング1位のアンドレ・アガシを指導したコーチについたが、実はここで、大きな挫折を経験したという。
「コーチからは、『19歳では遅すぎる。1年間である程度の結果を残せなければプロは無理だ』といわれました。
1年間、他の選手の何倍も練習しましたが、結果は得られなかった。プロのテニスプレーヤーはあきらめて、帰国しました」(田中氏)
その時、「テニスの世界では残念だったが、君は何らかの形で世界に戻ってくる」と言葉をかけられたそうだ。
帰国後は、留学費用を返済するために設備会社に入ってがむしゃらに働いた。返済が完了し、まじめな働きぶりから設備会社での責務が上がることになったが、その前に退職した。テニスとは違うが、元コーチにいわれた「世界に出る」ということを考え、その足がかりとなる新たな天地を求めたからだ。そこで田中氏が選んだのが、鯖江商工会議所だ。
「商工会議所は世界中にあり、日本国内だけでも500地域ほど拠点があります。これだけの規模の企業を一から作るのは難しい。自分の人生の残り時間を考え、これほどの保有資産がある場を活用し、世界とつながることで、新しいことができるのではと思いました」(田中氏)
商工会議所の会員数は、全国的に減少傾向にある。もちろん、事業所数自体が減少していることもあるが、メリットがない・魅力がないと考える経営者が少なくないから、というのも事実だ。
これだけの人、金、モノがあるのに、「メリットがない」と思われるのは非常にもったいない。そのためには、まず鯖江商工会議所の価値を高め、ネットワークを広げ、日本から世界経済発展のための拠点を作るべきだと考えたという。
商工会議所で働くまで、鯖江市の経済や活性化についてほとんど関心はなかった。モチベーションとなったのは、「やるのなら、世界一になる」という思いだ。地元の人たちが気付かないこと、役に立たないと思っているものでも、磨けば光る素材は必ずある——そこで田中氏が注目したのが眼鏡だ。
鯖江の産業はほかに漆器や繊維もあるが、眼鏡フレームの国内シェアは95%と他地域の追随を許さない。裏を返せば、眼鏡の国内産地は鯖江しかないということだ。
「ここ(眼鏡)を輝かせることで、鯖江という地域の強みをより明確に、分かりやすく訴求できると考えました」と田中氏は説明する。
ただ、大きな問題があった。それは、鯖江=眼鏡の町という認識が浸透しても、経済活性には必ずしもダイレクトに繋がらないことだ。地域情報を発信していても、なかなか経済活動に結びつかない。
それはまるで「『いい人だけど、付き合えない』という人間関係のようでした」と田中氏はいう。この状態を打破しようと、田中氏はモノづくりとしての鯖江の魅力・底力を広くアピールするプロジェクトに従事することを決意する。
そんな時、近畿経済産業局から推薦を受け、経済産業省の政策研修に参加することになった。ここで出会ったのが、米デザインコンサルタント企業のIDEOだ。田中氏はここで、デザイン思考という新しい概念に触れ、衝撃を受けた。
デザイン思考とは、大きく定義すれば課題解決のための思考プロセスだ。デザイナーがデザインを通じてユーザーの課題を解決するのと同じく、社会やビジネスの課題をデザイナー的な考え方で解決していくプロセスを指す。そのため、デザイン思考のスタートは「人」、つまり顧客/ユーザーとなる。
モノを作れば経済が回るのではない。そこに「顧客価値の実現」がなければ、いまの時代、経済は動かない——IDEOの徹底した顧客中心アプローチを学び、こう気付いた田中氏は、これまでの生産者視点での地域経済活性化ではなく、顧客視点に切り替えることにした。
とはいえ、地域全体で顧客視点に発想を切り替え、地域の魅力を伝えていくのは容易ではない。そこで田中氏は、まず地域の意識改革というソフト面からの施策に取り組んだ。
2017年8月、鯖江商工会議所は、鯖江市とともに、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)と相互連携協定を締結した。KMDは国内の大学・大学院でいち早くデザイン思考を取り入れたカリキュラムを組んでおり、デザイン思考に造詣が深い専門家がいる。田中氏は、こうしたKMDとの研修を地元企業の経営者を対象に実施することで、生産者視点から顧客中心視点のモノづくりへとシフトしていくことを目指した。
2018年には、研修形式だけでなく個社支援を加え、影響力のある地元企業を中心に、デザイン思考による新たな事業推進の支援を行った。それまで、グローバル型のアプローチにどこか腑に落ちないものがあった地場産業の人々も、影響力のあるトップ企業が変化し始めたのを見て、わずかではあるが意識改革が進んだという。
机に向かった研修だけでなく、実地の取り組みも行った。それが「TOKYO MEGANE FESTIVAL」というイベントだ。
鯖江の眼鏡メーカーはほとんどがBtoB取引で、実際に消費者の声を直接聞く機会はほとんどない。このイベントでは、表参道で鯖江の眼鏡を消費者やデザイナーに体感してもらい、実際に販売を行う。
東京で活躍する眼鏡スタイリストが選んだ製品に対し、メーカー側は「これが売れるのだろうか?」と考えていたが、売れ行きが好調なことを見て、いかに消費者と自分たちの間に視点のギャップがあるか、痛感した事業者も多かったという。
イベントに参加した事業者の多くは、デザイン思考によって目指すべき地域の姿を実感できるようになった。とはいえ、イベントは一過性のものであるし、イベントに関与しなかった事業者は、消費者視点の重要性を認知しにくい。そこで田中氏が考えたのは、消費者や企業、クリエイターと直に触れ合える拠点を地域に作ること。それがSABAE CREATIVE COMMUNITYだ。
実は2020年度は、福井で商工会議所青年部の全国大会が開催される年度で、開催中心は鯖江となる。奇しくも全国大会40周年という節目の年であり、全国から5000〜6000人の若手経営者が集まる。
「合わせて2020年はオリンピックイヤーでもあるので、国外からも日本に人が来る。この奇跡的なタイミングで、鯖江がどういう地域で何ができるのか、しっかりアピールできる施設が必要でした」と田中氏は説明する。
黒崎氏という著名プロデューサーを招いて拠点づくりを進めるのも、田中氏ならではの考えだ。「地域のなかにも優れた人はいますが、世界にはもっと天才がいます。テニスアカデミーでそれを実感しました。地域で一番でも、東京や世界にはさらに優れた人がいる。そういう天才の考えに触れ、デザイン思考で天才の考えを理解し、そこから地域が変わっていくサイクルを描いているんです」(田中氏)
とはいえ、斬新なハードが地域に根付くには時間がかかる。田中氏も、すぐに国内外の著名クリエイターやデザイナーが集まるようになるとは考えていない。時間軸を設定し、あらゆるレイヤーの人が集い、最終的には天才的なイノベーターやクリエイターがここをきっかけに新たな価値を創造することを目指している。
「それが本当の意味での顧客価値の実現であり、そうなってこそ、この地域が世界に向けてイノベーションを発信することができると思います」と田中氏はいう。
そんなSABAE CREATIVE COMMUNITYは、2020年1月22日にオープンする。
※写真は2020年1月時点のものです
[撮影]前田龍央(AURACROSS)
[執筆]岩崎史絵
公益団体が地元のマーケティング強化のため、ハードをリニューアルすることにどのような狙いがあるのか。鯖江商工会議所 CXO(Chief Experience Officer)/経営支援課 課長 田中英臣氏に聞いた。
(写真右)鯖江商工会議所 CXO/経営支援課 課長 田中英臣氏 (写真左)ビッグビート マーケティングディレクター 野北
鯖江商工会議所が地域のマーケティング拠点に!
2020年1月、福井県鯖江市にある商工会議所がリニューアルされ、「SABAE CREATIVE COMMUNITY」として新たなスタートを切る。鯖江市の特産品である眼鏡を始め、漆器や繊維など、鯖江の“モノづくり”を国内外のビジネスパーソンに広く知ってもらい、新たなイノベーションを興すことを目指している。リニューアルするのは、商工会議所の1階部分だ。鯖江で作られた眼鏡や漆器などの新商品の閲覧・体感エリアや商談エリアにカフェを併設し、地元の経営者やクリエイター、県外・国外のデザイナーが気軽に集ったり、コラボレーションしたりする環境を整備。
3Dプリンターやレーザーカッターなど、プロトタイプ制作に必要な機材も用意されているので、モノづくりに従事するクリエイターのアイディアを具現化することもできる。
このプロジェクトに取り組む鯖江商工会議所 田中英臣氏は、「試作品制作や販売、市場調査、対企業や一般消費者に対する情報発信など、地元の企業がマーケティングの全プロセスを一貫して行うための8つのエリアで構成されています」と説明する。
SABAE CREATIVE COMMUNITYをプロデュースするのは、起業家・プロデューサーの黒崎輝男氏だ。黒崎氏はIDÉEの創始者であり、「ファーマーズマーケット」や「東京デザイナーズブロック」「NOHGA HOTEL」など、デザインを軸に新たな価値を生み出す「場」をクリエイトしてきた多数の実績を持つ。鯖江のモノづくりの根幹にあるデザインとも親和性が高い。
商工会議所という公益経済団体が、地域発展を目指してマーケティングのための拠点を作るというのは、全国的にも珍しい。
名目だけの建物を建設するケースもあるが、田中氏の取り組みのユニークな点は、建物というハードだけでなく、そこを活用する地元の経営者やクリエイター、広く地域住民のマインドシフトといったソフト面も踏まえ、「鯖江を世界的なイノベーション拠点にする」と明言していることにある。
「もっといえば、鯖江だけでなく、日本全体、世界全体の経済を浮揚させ、より良い世界を次の世代に残していくことを目指しているんです」と田中氏はいう。この壮大な構想には、田中氏のマインドセットを変えた「デザイン思考」との出会いがあったという。
テニスプレイヤーから商工会議所へ
いまでこそ鯖江市の活性化に全力で取り組む田中氏だが、もともと地元産業や地域経済に強い関心があったわけではない。学生時代は、オーディションを受け米国テニスアカデミーに留学していた。アカデミーでは元ランキング1位のアンドレ・アガシを指導したコーチについたが、実はここで、大きな挫折を経験したという。
「コーチからは、『19歳では遅すぎる。1年間である程度の結果を残せなければプロは無理だ』といわれました。
1年間、他の選手の何倍も練習しましたが、結果は得られなかった。プロのテニスプレーヤーはあきらめて、帰国しました」(田中氏)
その時、「テニスの世界では残念だったが、君は何らかの形で世界に戻ってくる」と言葉をかけられたそうだ。
帰国後は、留学費用を返済するために設備会社に入ってがむしゃらに働いた。返済が完了し、まじめな働きぶりから設備会社での責務が上がることになったが、その前に退職した。テニスとは違うが、元コーチにいわれた「世界に出る」ということを考え、その足がかりとなる新たな天地を求めたからだ。そこで田中氏が選んだのが、鯖江商工会議所だ。
「商工会議所は世界中にあり、日本国内だけでも500地域ほど拠点があります。これだけの規模の企業を一から作るのは難しい。自分の人生の残り時間を考え、これほどの保有資産がある場を活用し、世界とつながることで、新しいことができるのではと思いました」(田中氏)
商工会議所の会員数は、全国的に減少傾向にある。もちろん、事業所数自体が減少していることもあるが、メリットがない・魅力がないと考える経営者が少なくないから、というのも事実だ。
これだけの人、金、モノがあるのに、「メリットがない」と思われるのは非常にもったいない。そのためには、まず鯖江商工会議所の価値を高め、ネットワークを広げ、日本から世界経済発展のための拠点を作るべきだと考えたという。
地元に不足していた「顧客価値」という考え方
商工会議所で働くまで、鯖江市の経済や活性化についてほとんど関心はなかった。モチベーションとなったのは、「やるのなら、世界一になる」という思いだ。地元の人たちが気付かないこと、役に立たないと思っているものでも、磨けば光る素材は必ずある——そこで田中氏が注目したのが眼鏡だ。
鯖江の産業はほかに漆器や繊維もあるが、眼鏡フレームの国内シェアは95%と他地域の追随を許さない。裏を返せば、眼鏡の国内産地は鯖江しかないということだ。
「ここ(眼鏡)を輝かせることで、鯖江という地域の強みをより明確に、分かりやすく訴求できると考えました」と田中氏は説明する。
ただ、大きな問題があった。それは、鯖江=眼鏡の町という認識が浸透しても、経済活性には必ずしもダイレクトに繋がらないことだ。地域情報を発信していても、なかなか経済活動に結びつかない。
それはまるで「『いい人だけど、付き合えない』という人間関係のようでした」と田中氏はいう。この状態を打破しようと、田中氏はモノづくりとしての鯖江の魅力・底力を広くアピールするプロジェクトに従事することを決意する。
そんな時、近畿経済産業局から推薦を受け、経済産業省の政策研修に参加することになった。ここで出会ったのが、米デザインコンサルタント企業のIDEOだ。田中氏はここで、デザイン思考という新しい概念に触れ、衝撃を受けた。
デザイン思考とは、大きく定義すれば課題解決のための思考プロセスだ。デザイナーがデザインを通じてユーザーの課題を解決するのと同じく、社会やビジネスの課題をデザイナー的な考え方で解決していくプロセスを指す。そのため、デザイン思考のスタートは「人」、つまり顧客/ユーザーとなる。
モノを作れば経済が回るのではない。そこに「顧客価値の実現」がなければ、いまの時代、経済は動かない——IDEOの徹底した顧客中心アプローチを学び、こう気付いた田中氏は、これまでの生産者視点での地域経済活性化ではなく、顧客視点に切り替えることにした。
とはいえ、地域全体で顧客視点に発想を切り替え、地域の魅力を伝えていくのは容易ではない。そこで田中氏は、まず地域の意識改革というソフト面からの施策に取り組んだ。
ワークショップや個社支援を通じ、デザイン思考をレクチャー
2017年8月、鯖江商工会議所は、鯖江市とともに、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)と相互連携協定を締結した。KMDは国内の大学・大学院でいち早くデザイン思考を取り入れたカリキュラムを組んでおり、デザイン思考に造詣が深い専門家がいる。田中氏は、こうしたKMDとの研修を地元企業の経営者を対象に実施することで、生産者視点から顧客中心視点のモノづくりへとシフトしていくことを目指した。
2018年には、研修形式だけでなく個社支援を加え、影響力のある地元企業を中心に、デザイン思考による新たな事業推進の支援を行った。それまで、グローバル型のアプローチにどこか腑に落ちないものがあった地場産業の人々も、影響力のあるトップ企業が変化し始めたのを見て、わずかではあるが意識改革が進んだという。
机に向かった研修だけでなく、実地の取り組みも行った。それが「TOKYO MEGANE FESTIVAL」というイベントだ。
鯖江の眼鏡メーカーはほとんどがBtoB取引で、実際に消費者の声を直接聞く機会はほとんどない。このイベントでは、表参道で鯖江の眼鏡を消費者やデザイナーに体感してもらい、実際に販売を行う。
東京で活躍する眼鏡スタイリストが選んだ製品に対し、メーカー側は「これが売れるのだろうか?」と考えていたが、売れ行きが好調なことを見て、いかに消費者と自分たちの間に視点のギャップがあるか、痛感した事業者も多かったという。
イベントに参加した事業者の多くは、デザイン思考によって目指すべき地域の姿を実感できるようになった。とはいえ、イベントは一過性のものであるし、イベントに関与しなかった事業者は、消費者視点の重要性を認知しにくい。そこで田中氏が考えたのは、消費者や企業、クリエイターと直に触れ合える拠点を地域に作ること。それがSABAE CREATIVE COMMUNITYだ。
地元で愛される拠点から、イノベーションを創り出す拠点へ
実は2020年度は、福井で商工会議所青年部の全国大会が開催される年度で、開催中心は鯖江となる。奇しくも全国大会40周年という節目の年であり、全国から5000〜6000人の若手経営者が集まる。
「合わせて2020年はオリンピックイヤーでもあるので、国外からも日本に人が来る。この奇跡的なタイミングで、鯖江がどういう地域で何ができるのか、しっかりアピールできる施設が必要でした」と田中氏は説明する。
黒崎氏という著名プロデューサーを招いて拠点づくりを進めるのも、田中氏ならではの考えだ。「地域のなかにも優れた人はいますが、世界にはもっと天才がいます。テニスアカデミーでそれを実感しました。地域で一番でも、東京や世界にはさらに優れた人がいる。そういう天才の考えに触れ、デザイン思考で天才の考えを理解し、そこから地域が変わっていくサイクルを描いているんです」(田中氏)
とはいえ、斬新なハードが地域に根付くには時間がかかる。田中氏も、すぐに国内外の著名クリエイターやデザイナーが集まるようになるとは考えていない。時間軸を設定し、あらゆるレイヤーの人が集い、最終的には天才的なイノベーターやクリエイターがここをきっかけに新たな価値を創造することを目指している。
「それが本当の意味での顧客価値の実現であり、そうなってこそ、この地域が世界に向けてイノベーションを発信することができると思います」と田中氏はいう。
そんなSABAE CREATIVE COMMUNITYは、2020年1月22日にオープンする。
≫「SABAE CREATIVE COMMUNITY」お問い合わせ先
鯖江商工会議所経営支援課 田中
〈TEL〉 0778-51-2801
〈E-mail〉 tanaka@sabaecci.or.jp
鯖江商工会議所経営支援課 田中
〈TEL〉 0778-51-2801
〈E-mail〉 tanaka@sabaecci.or.jp
※写真は2020年1月時点のものです
[撮影]前田龍央(AURACROSS)
[執筆]岩崎史絵