マーケティング 2019.09.10 「共感 ∋ 共振」自分と他者の共感が交わる部分に鍵がある 【Bigbeat LIVEレポート④】

8月2日に開催され、大盛況のうちに幕を閉じたBigbeat LIVE。広告会社が主催するプライベートイベントでは、国内マーケターが集結する国内最大級のマーケティングイベントです。3回目となる今年のテーマは「Go for it!」。
このレポートでは、アドビ システムズ 株式会社の小沢 匠さんがホストを務めた2nd Stage「組織は『共感』で変わる」を前後編でお届けします。(「前編」はこちら
後編は、株式会社ABEJA 永淵 恭子さんのプレゼンテーション、そしてホストと登壇者3名によるパネルディスカッション、Q&Aセッションです。
 

カンファレンスは単なるイベントではなく全社戦略



最後の登壇者は、株式会社ABEJA Marketing Communication 永淵 恭子(通称:ぎょり)さん。

◆ぎょりさんプロフィール
株式会社サーバーワークスに新卒入社し、5年ほど営業に従事したあと、マーケティング専任となる。「新しいことに挑戦したい」と、AI/ディープラーニングなど最先端のテクノロジーを手がける株式会社ABEJAに入社。現在は、「ABEJA Platform」のマーケティングを担当し、パートナー構築、戦略策定、顧客支援など、多岐にわたる業務に日々奮闘中。
ぎょりさんのインタビュー記事はこちら


参加者5,200名を超える国内最大級のAIカンファレンス「SIX(シックス)」の実行責任者を2年連続で務めたぎょりさん。役員の下に付いて、いろいろなサービス事業部からリーダーを募る形で、全体を仕切りながら進めてきたと言います。

「自社カンファレンスって、リードを獲得する施策だと思っていませんか?」と会場に問いかけたぎょりさんは、「私もずっとそう思ってきたけれど、実際にやってみると全然違うことを実感した」と語りました。

自社カンファレンスを開催するには、戦略を立てて、関係者を巻き込んで、コンテンツを設計して実行しなければなりません。関係者とひとくちに言っても、来場者だけでなく、社員や役員、スポンサーなど、様々なステークホルダーが存在します。「これらの人たちから共感を得て、ひとつにまとめ上げるのがカンファレンスの醍醐味だと思っている。自社カンファレンスは単なるイベントではなく、期限も予算も決まっている、取り組みやすい全社戦略です」(ぎょりさん)

ぎょりさんが最初に手がけたSIX 2018は「ABEJA Platform」のお披露目の場。登録者数3,000人超えの中から抽選で900人以上の来場者が参加し、セッション数18、スポンサー数17という実績を残しました。自社カンファレンスは成功に終わり、ホッとしたぎょりさんに対してABEJAの代表が告げた言葉が「日本一のカンファレンスって言いたいんだよね」。

調べてみたところ、日本一のAIカンファレンスというためには、5,000人以上の来場者が必要です。つまり2.5倍の成長をしなければならないということ。BtoBのベンチャーで5,000人規模のカンファレンスをするなんて、聞いただけでも気が遠くなりそうです。

 

しかし、ぎょりさんは負けません。SIX 2018を振り返ったときに、1,000人を来場させることに精一杯で、カンファレンスに楽しく取り組むメンバーの笑顔や、お客様からの大きなフィードバックなど、ぎょりさんが作りたかったものを手にできず、自分が達成感を得られなかったことに気づき、「SIX 2019では来場者を増やすだけでなく、量も質も徹底的にやってやろう!」と強く決意したそうです。

その結果、SIX 2019は登録者数8,000人超、来場者数5,000人超、セッション数60超、スポンサー数20超と、すべてのKPIにおいて前年比2.5倍以上という目覚しい成果を達成したぎょりさん。しかし、「この数字よりも、ABEJAの掲げる“テクノプレナーシップ(Technopreneurship):テクノロジーを使ってビジネスにイノベーションをもたらす新しいタイプの起業家精神のこと”を体現する人たちの背中を押すことが、自分の達成感につながると気がつけたことのほうに、大きな価値があった」と振り返ります。

「私が背中を押すことでメンバーが達成感を持ってくれたら、サービスが拡充するし、サービスが拡充したら顧客満足につながる、そしてSIXの成功につながる。そしてSIXが成功すればといったように、私がやる気スイッチを押すことで、このサイクルがうまく循環するというわけです」(ぎょりさん)



とにかくメンバーのやる気スイッチを押しまくろうと考えたぎょりさんは、カンファレンスで表に立ってもらうメンバーの数を増やしたり、関わってみたくなるコンテンツづくりに注力したり、Backlog(プロジェクト管理ツール)で小さなタスクに落とし込んで渡したり、とありとあらゆる手段を尽くしました。

しかし、それでも乗り気になってくれないメンバーが大半を占めていたため、当初ABEJAのメンバー70人すべてを巻き込もうとしていたところから、一緒にやってくれる3人に絞ろうと方向転換することを決めたと言います。すると、その3人のやる気スイッチを連打し続けているうちに、その3人をサポートしてくれる人が社内外で現れ、共感の輪が広がっていったと言うのです。

「SIX 2018では社内からのフィードバックはまったくなかったのに、SIX 2019ではポジティブなもの、ネガティブなもの、たくさんのフィードバックをもらえました。中でも一番嬉しかったのが、背中を押す対象の3人のメンバーのうちの1人から、『達成感出まくりで、やりたいことが増えまくった』と言われたことです。この一言だけで、私の達成感は満たされまくりました」(ぎょりさん)


 
「私が得たい共感を、他のみんなとすべて重ね合わせるのは無理。自分が得たい共感と、他から得られる共感と、他が得たい共感の3つが重なり合っているところを攻めていくと、共感は広がっていくことを学びました」とぎょりさんは語り、プレゼンを終えました。

 
ぎょりさんからのメッセージ
「共感 ∋ 共振」
欲張ってすべてを得ようとせず、自分とパートナーやステークホルダーが共感できる部分を探して、そこに全力を注ぐ。それにより共感が生まれ、広がり、より強く大きいものになる。Never give up!!
 
 

小さなことからでも動き出すのがチェンジリーダー



ここからは小沢さんと登壇者3名が壇上に上がり、パネルディスカッションのコーナーです。まず小沢さんは会場に対し、「組織を何かしら変える必要があると思っている方、挙手をお願いします」と投げかけました。

多くの手が挙がる中、2人の方に具体的にどんなことを変える必要があると思っているのか聞いたところ、返ってきた答えがこちら。

・組織が慢性化している。新しいことをやろうという意識が減っていると感じている
・組織がサイロ化している。横のつながり、コミュニケーションが足りていない

これらの課題感を打開する方法について、片山さんがご自身の経験から次のように話しました。「私自身は人材業のあり方が慢性化していると思っていて、そこを変えるために、いろいろ会社に働きかけてきました。けれども、僕が『こうあるべきです』と突き進むだけではうまくいかなかった。そこで僕は本を使いました。自分が良いと思う本を「すごく良い本を見つけたので、よかったら読んでみませんか?」と上司に薦めることで、最近は少しずつ良くなってきた気がしています」(片山さん)

一方、田中さんの勤めるfreeeはITベンチャーなこともあり、変化のスピードが速いため慢性とは無縁の組織だとした上で、「弊社の価値基準に『アウトプット思考』というものがあります。端的に言えば、“ 悩むより、まずアウトプットしてみよう ”と。
アウトプットすることで、それに対する何かしらの反応が得られると思いますので、慢性的であれサイロ化であれ、課題があると感じているのであれば、まずはアウトプットしてみることがひとつのキーポイントになるのではないでしょうか」と田中さんからアドバイスがありました。

ぎょりさんは慢性化していること自体が問題なのではなく、その背後にある理由が大事なのではないかと疑問を呈します。「恋愛でも新鮮さを求めがちですけど、2人の関係が安定しているとも言えるわけで。別に慢性化していること自体が悪いことだとは思いません。もし、その停滞感が嫌なのであれば、転職先はいろいろあるので、迷わずに飛び込んでもらえたら」。

 

共感で組織を変えたいなら、すぐにアクションを!



次に小沢さんは、「組織を変えるために、何かしらのアクションをしたことがあるという方は手を挙げていただけますか?」と会場に問いかけます。「組織を変えるためには、相手の状況をきちんと把握して、それと自分の伝えたいことの間にあるギャップを埋めていく必要があると思います」と語り、「片山さんは、何かそういう経験はありますか?」と尋ねました。

入社後5日目でマーケティング部が自分1人になり、レポート先が役員になったという片山さん。プレゼンにもあった、営業さんとのランチを重ねる中で、現場と会社のズレを感じ、「僕が変えなきゃいけない!」と使命感に駆られたそうです。「でもアプローチの仕方が良くなくて、うまく伝わりませんでした。相手の状況をきちんと把握したり、自分の伝えたいこととのギャップを埋めたりするためには、もっと僕の引き出しの数を増やす必要があると思うんですね。だから、もしタイムマシーンがあれば、大学に戻って、もう一度マーケティングをしっかり勉強したいと思います」(片山さん)



ぎょりさんは「先ほどのプレゼンに詰め込まれている」とした上で、「日々、ギャップしかないと思って生きていると、結構ラク」と答えました。これに対し、同じ外資系企業で働いている共通点を持つ小沢さんは、大きく共感されたようです。「外資で10年間サバイブしてきた身としては、その感覚はすごくわかります。ギャップがある度に『うわーギャップか…』と思っていたら、生きていけない。『ラッキー!オポチュニティだ!』と変換する必要がある。以前、チェンジマネジメントしている最中に大きな障害が発生して、お客様に謝罪する日々が続いたんですね。そのとき心が折れそうになりながらも、『怒られるなんて、つらいなぁ』と思うのではなく、『お客様の困っていることを知るためのオポチュニティだ』と思うことで、うまくいくことを学びました」(小沢さん)

続いて会場から田中さんに質問がありました。

Q. チームの解散危機に直面していたときは、数字でしっかり説明したのか、情熱的な共感力で突破したのか、どちらですか?

これに対し、田中さんはロードマップを綿密に練ることの重要性を説きました。
「コミュニティはわかりやすいアウトプットができるまでに、すごく時間がかかります。なので、『今は立ち上がりなのでこれくらいですが、ロードマップとしてはこの時期にこれくらいにはなっている予定で、必ずここに到達するために、今はこれをやっています』と上層部に直接伝えていました」(田中さん)

最後に小沢さんは、次のようにまとめました。
「『組織は共感で変わる』というテーマでした。今回、組織を変えなければならないという課題感がある人の数に対し、実際にアクションを取った人が圧倒的に少なかった。今日のチェンジリーダーたちの話を聞いて、ぜひ共感を使って組織を変えるアクションを起こしてみてください。来年は半数以上でも手が挙がるようになれば、私たちの価値があったと思っています。ありがとうございました」(小沢さん)
 
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