マーケティング 2019.07.19 お客様と企業・社員を結ぶヒトを育てたい|大日本印刷 山口圭介氏


大日本印刷株式会社 包装事業部 IP第1営業本部 本部長 兼 営業革新推進室 副室長 山口圭介さん

〈Bigbeat LIVE 登壇者インタビュー⑫〉
印刷業界のリーディングカンパニーである大日本印刷株式会社。その基幹事業である包装事業部のIP第1営業本部 本部長 兼 営業革新推進室 副室長の山口圭介さんは、昨年のBigbeat LIVEに参加されて大いに刺激を受け、ある行動を起こした結果、社外での講演依頼が数多く舞い込むようになったといいます。大組織で長年勤めながらも、常に変革を求め続ける山口さんの仕事観について、詳しくお話を伺いました。
(聞き手:ビッグビート アカウントディビジョン マーケティングセールスディレクター 瀬川昌樹)

 

Bigbeat LIVEをきっかけに始めた「勝手にアウトプット」



——山口さんは弊社代表の濱口と同郷の高知県出身と伺いましたが、東京に出て来られたのは、いつですか?

山口さん

そうそう。濱ちゃんとは同い年なんだよね。1986年に大日本印刷の関西包装事業部に営業として入社しました。東京に転勤になったのは14年半前の2004年。東京に来てからも営業をしていて、2015年からの3年間はマーケティング企画本部長をしていたんだけど、今年からまた本部長として営業に戻りました。

一方で、2011年から「ヒトづくり部会長」として包装事業部1,200人対象の人材育成を兼務でやっていて、2013年から今年の3月までは「働き方の変革事務局長」になり、4月からは営業革新推進室 副室長をしています。

——なんだかすごいですね…いろいろ兼務されていらっしゃって。「ヒトづくり部会」で行う人材育成とは、どのようなものなんですか?

山口さん

「ヒトづくり部会」というのは、手弁当の教育委員会みたいなもので、分科会活動の一環なんですよ。“自ら考え、実践できるヒトを増やす”、まさに“半学半教”の精神で動ける“人財”の“共育”を目的としていて、職場ごとにバラバラに行われていた研修を束ねるとともに、キャリアデザインを教えています。

「サラリーマンといえども、会社に長くいるだけで勝手に課長になれるわけじゃないぞ!」ってね。
「キャリアとは“働くこと”を通じて、自らの“志”を実現する成長プロセスだから、自分の頭で考えろ!」と言い続けてきました。主にやっていたのは、新卒で入社して9年目くらいまでの“義務教育”です。去年Bigbeat LIVEでマーケターの話を聞きながら、人材育成と一緒だなと思っていたんですよ。

——それが山口さんの本業ではないんですよね?カリキュラムは独学で作られたんですか?

山口さん

そうそう。僕だけじゃなくて、仲間もいるからみんなで手弁当でつくりました。半分、趣味みたいなもんだよね。プログラムの最後は全国の9年目社員を箱根の保養所に集めて、一泊二日の合宿もするんですよ。


ビッグビート アカウントディビジョン マーケティングセールスディレクター 瀬川昌樹

——去年のBigbeat LIVEを受けて、何か行動を起こされたそうですが、具体的に教えていただけますか?

山口さん

植山さんの「勝手にアウトプットしたら人生が変わった」という話を聞いて、40ページくらいある“遺言”を作ったんですよ。3年間マーケティング企画本部長をやってきて、そろそろ異動の時期かなという予感があったので、3年間、部下たちに言い続けてきたことを残しておきたいという思いで書いたものです。
8割くらいを一気に書き上げた翌週に、営業本部長の内示が出て、リアル遺言になっちゃった。それを社外で知り合った人に、挨拶がわりに送るようにしていたら、社外からの講演依頼が増えたんですよ(笑)

——Bigbeat LIVEをきっかけに行動を起こしてくださり、さらに今年はご登壇いただけるなんて、すごく嬉しいです。

 

「組織力=ヒト×知恵×ネットワーク」



——ちなみに山口さんが部下の方たちに、最も伝えたいメッセージとは何ですか?

山口さん

「組織力=ヒト×知恵×ネットワーク」という方程式です。それぞれを分解すると…

ヒト = 一人ひとりの成長
知恵 = 様々なアイデアを出せるヒトづくり、対話の場づくり、組み合わせる仕組み
ネットワーク = 公私様々で自律的かつ強固なネットワークづくり


働き方改革も結局はここに通じていて、一人ひとりの“成果の出し方改革”だと言い換えられると思っています。仕事をするっていうのは会社にいることじゃない。本当のプロとは、自ら変化し、必ず結果を出す人だ、ということですね。

——御社ほどの大企業で、山口さんのように考え、行動していくのは、かなり険しい道のりではないかと思ってしまうのですが、山口さんを突き動かすモチベーションの源泉は、何ですか?


 
山口さん

うーん…高知県人やったからかも(笑)
“世の中を変えたい”みたいな野望はあったよね。ヒトづくり部会なんて、放っておいても誰もやらんもんね。「僕がやらな、誰がやるねん!」みたいな。そりゃこんなことしてたら、物議を醸すことも多いですよ。結果が出たら、「あれは良かったね」って言われるけど、社内で褒められたことは、あんまりないかもね。

要は、部活動と一緒なんですよ。めんどくさい練習なんかしたくないかもしれんけど、勝たなかったら次に行けないわけで。僕にとっては、腕立て伏せ100回するのを“懲役”と思うのか“筋トレ”と思うのかだけの違い。心の持ちようですよね。

——な、なるほど。

山口さん

「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損」っていうでしょ?僕はTOKYO PACK(東京国際包装展)の責任者を2回やっているんですけど、まさに学園祭。いろいろな軋轢があったとしても、会社の2年間の成果を出し切ったときの一体感は格別ですよ。お客様に褒めてもらえるのも嬉しいですしね。“やってみたら面白くなってきた”っていうのが仕事なんちゃうかなぁ。

 

マーケティングの大切さは、どこにいても同じ



——マーケティング企画から営業に戻られて、何か心境の変化はありましたか?

山口さん

何も変わりませんね。営業にいてもマーケティング企画にいても一緒。「お客様が必要とする価値や成果」と「個々の会社/社員の努力」を結びつけるための活動すべてがマーケティングだと思ってるから、これができるヒトを育てたい。組織人として、当たり前のことでしょ? 

ただ今は豊かな社会になって、価値観が多様化している中で、生活者の変化を見続けて、そこに合わせたものをつくっていく難しさはありますよね。かつて、誰もが「いつかはクラウン」と言っていた、右肩上がりの時代は終わったから。

正解なんて、自分で決めるものじゃないんよ。お客様が満足して喜んでくれるのが一番だし、ヒトは商品を買うのではなく価値を買っているから、そこに合理性はない。だからお客様のことを考える時間を増やす、価値を生み出す時間を増やす働き方改革が大切で、僕にとっては全部繋がっている話なんです。

——今のマーケターは引く手あまたで、転職される方も多いと思うのですが、山口さんは転職されようと思ったことはありませんでしたか?今後のご自身のキャリアについて、どのようにお考えでしょうか。
 


山口さん

たぶん200回以上は辞めようと思ってるよ。でもやっぱりこの仕事が面白いから、ここにいる。48歳で本部長になったときに、初めてこの会社に恩返ししたいと思うようになったんですよね。いろいろ経験させてもらったし、文句言ってもクビにならんかったし、面白い・優秀なやつもたくさんいる、良い会社やなと思って。だからこそ、僕にできるヒトづくりや仕組みづくりをがんばって、バトンを繋いでいきたい。この歳になったら、自分の得意なことに注力したほうが良いと思いますからね。

——では最後に、今年のBigbeat LIVEに向けて、意気込みをお願いします。

山口さん

僕は「組織力=ヒト×知恵×ネットワーク」教の教祖だといわれているので、この方程式はしっかりお伝えしたいですね。Bigbeat LIVEには、人の心に灯をともす キャンドルサービスマニアみたいな人達がいっばいいて面白い場所なので、ぜひ一緒に楽しみましょう!


[撮影]野村昌弘
[執筆]野本纏花  
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