マーケティング 2019.06.26 島袋流 マーケターのキャリア戦略|ヤプリ 島袋孝一氏


株式会社ヤプリ コミュニケーション本部 コミュニティマネージャー/マーケティングスペシャリスト 島袋 孝一さん

〈Bigbeat LIVE 登壇者インタビュー③〉
パルコ、キリンをマーケターとして渡り歩き、デジタルマーケティング業界の第一線で活躍する島袋 孝一さんが、次の転職先として選んだのは株式会社ヤプリでした。
アプリ開発・運用・分析をクラウドで支援する「Yappli(ヤプリ)」を提供する同社は、BtoBのIT系スタートアップです。一見、異色のキャリアに見えますが、そこには島袋さんの一貫した思想と、マーケターとしてのやりがいと成長を追い求めるチャレンジ精神がありました。
(聞き手:ビッグビート マーケティングチーム ディレクター 野北瑞貴)

 

島袋さんが今ヤプリにたどり着いた理由

― パルコでは、どんなお仕事をされていたのですか。

島袋さん

新卒で2004年に入社し、2016年までパルコにいました。パルコでは総合職だったので、最初は商業施設の運営に関することは何でもやっていました。僕がデジタルマーケティングをかじるようになったのが、2012年頃ですね。
ちょうどスマートフォンが出始めた頃で、iPhoneを持っているからという理由で、デジタルマーケティングの部門にアサインされたんです(笑)。

― その後キリンに転職されたのは、なぜですか?

島袋さん

キリンにはデジタルマーケティングの専門組織があったので、パルコでの経験を生かしながら、もっとデジタルマーケティングの専門性を高めたいと思いました。キリンではキリンビール・キリンビバレッジ・メルシャンというメーカーを横断した、デジタルメディアを通じて生活者と向き合うマーケティングを担当していました。

―パルコからキリンに転職されて、実際どんな違いがありましたか?

島袋さん

キリンのデジタルマーケティング部門は、僕が入った当時でも70~80人はいる大きな組織で、かつプロが集まるとても強い組織でした。パルコという中小企業でデジタル部門を0から立ち上げて、手弁当でのマーケティング経験しかなかった僕には、毎日が刺激的で驚きの連続でした。

―なるほど。では2年半でキリンを辞めてしまったのは?

島袋さん
大企業に所属するサラリーマンとして成功することを目指すなら、その手法や手段はあった。ただ、これから個人のキャリアを考えたときに、会社の看板に依存することなく、個人として、スピード感を持って成長していけるところに行きたいな、と思ったんですよね。
僕が30代前半とかだったら違う選択肢になったかもしれませんけど、今年40歳になるので、もう回り道をしている時間はないなと。

―だからスタートアップを選ばれたんですね。

島袋さん

自分の過去の経験を生かせそうなところをいろいろ当たっていたときに、もともと知人だったヤプリの社長にもご相談をしていて。去年話がすすみ、今年に入って転職しました。



―未経験の業界に飛び込むのは、怖くありませんでしたか?

島袋さん

「人生100年時代」と言われる時代だから、40歳での転職も珍しくなくなっていますよね。
それに僕は、わずかですがデジタルをやってきたので、業界に知り合いはたくさんいたし、市場のニーズがあることもわかっていました。ヤプリが掲げている「Mobile Tech For All」、つまり「モバイルテクノロジーの民主化」というミッションにもとても共感したので、個人的にはあまり違和感は感じませんでしたね。


 

BtoCの経験はBtoBで生かせるのか?



―ヤプリに転職されて、初めてのBtoBということでギャップを感じたことはありませんでしたか?

島袋さん

CMなどのイメージでパルコは完全なBtoCに思われがちですが、実はアパレルや飲食店などのテナントを抱える不動産会社としての側面があるので、ある意味BtoBでもあるんです。キリンもそう。僕は生活者に向けたデジタルマーケティングをやっていましたが、実際には生活者の手に商品が渡る前には、コンビニとか居酒屋さんといった企業が間に入るので、いわゆるBtoBtoCと言われるものなんですよね。なので、そこまでのギャップはないです。

唯一の違いとい言えば、初めての「IT企業」ということで、提案を“される側”と“する側”という立場は変わりましたけど、仕事でお会いする方も、実はそんなに変わらなくて、スッと入っていけている感覚はあります。

―これまでの島袋さんのキャリアの中で、一貫して大切にしてきたものはありますか?

島袋さん

“すべては生活者のために”という思想ですね。キリンでも当時は「企業主語」ではなく、「お客様主語のマーケティング」を目指そう、と社内でと言われていて、すごく共感していました。
ヤプリも、“アプリ”という生活者に近いところにあるものだからハマったのかもしれません。

―“お客様の顔が見える”というところがポイントなのでしょうか。

島袋さん

BtoBの場合、間に代理店さんが入ると顔が見えにくくなりますが、ヤプリは今のところ、ご契約者のお客様のほとんどは直販なので、顔は見えていますしね。代理店さん経由でも、手厚いフォローアップを行っています。



―現在「コミュニティマネージャー/マーケティングスペシャリスト」という役職になっていますが、ヤプリでの島袋さんの役割について教えてください。

島袋さん

ヤプリは完全なBtoBなので、展示会やオンラインの広告などでリードを獲得するマーケティングがあって、そこからインサイドセールスにつないで、フィールドセールスがクロージングする“THE MODEL”(営業プロセスマネジメントモデルのひとつ)の体制が敷かれているのですが、僕はそのラインから一歩外れたところにいて、部分最適になりがちなところを横断的に見るのが役割です。

あとは業界の啓蒙というか、まだ僕らが出会ってないお客様にも「ヤプリって会社があるぞ」と知ってもらうために、“ヤプリの輪”みたいなものを作るのも僕の役割ですね。

―コミュニティマーケティングですね?

島袋さん

そうです。厳密に言えば体制化された「コミュニティ」は今のところまだなくて、現在模索中です。既存の導入企業様のユーザー会は、また別で、CSチームが主導しています。
僕はマーケでも営業でもないので、無色透明・無味無臭。よくありがちな“製品説明するだけセミナー”はやらないので、「もっとヤプリのことを知りたかった」とアンケートに書かれちゃうくらい(笑)。

ヤプリのお客様は6~7割がリアルのお店を持っていたり、ECを運営されていたりして、僕が過去パルコやキリンで経験してきた立場と同じような方々なので、みなさんの課題感もだいたいわかりますし、悩み相談を受けることで何かお役に立てるのかなと思っています。実際、アプリを作るつもりがない方から、お問い合わせいただくこともありますしね。

―個人の看板でお仕事されている感じですよね。

島袋さん

そうですね。“会社に依存したサラリーマンじゃないほうがいい”という思いは、パルコ時代から変わっていません。特にヤプリは、業界でもまだ知名度がないので、一度自分をリセットして、“会社の看板なしにどこまでワークできるのか”を試せる絶好の機会だと思っています。

 

わからないことや新しい情報は、何でも自分から拾いに行く




―島袋さんご自身が働く環境としては、BtoCもBtoBもそんなに違和感がないと伺いましたが、マーケティングの手法に関しても、BtoCとBtoBに大きな違いはないと感じますか?

島袋さん

そうですね。僕はキリンの頃からクラフトビール体験会のコミュニティのお手伝いをやっていたので、手法論としてはBtoCでもBtoBでもあまり変わらない時代になっているのではないかと思います。もちろん、購買に対する意思決定など異なる点は、様々ありますが、プロダクトやサービスを人づけてに推奨してもらうことでの優位性、など、近似している点が多くあると思っています。

―島袋さんが専門にされてきたデジタルマーケティングは、次から次へと新しいツールや手法が出てきますよね。テクノロジーに振り回されないために、何か意識されていることはありますか?

島袋さん

基本的に、僕は情報をインプットすることが嫌いじゃないので、新しい情報は何でも自分から取りに行きます。わからないことは、その分野の第一人者に突然Facebookメッセージでコンタクトをとって、直接会いに行っちゃいますしね。
好奇心旺盛というと薄っぺらいけど、何でも拾いに行くマインドは持っておくようにしています。「島袋に聞けば、ググるよりも早くて深い情報がもらえるぞ」と思ってもらえたら、社内外で自分の価値が上がると思いますから。僕は欲張りなので、トランプのカードは多く持っておきたい派なんです(笑)。

―最後に、Bigbeat LIVEの来場者の方に向けたメッセージをお願いできますか。

島袋さん

BtoBのITベンダーのスタートアップに初めて来て、まだ半年しか経っていない僕みたいな人にも広く門戸を開いているイベントだと思うので、「BtoBマーケティング初心者です」って胸を張って来てもらいたいですね。みなさんと双方向でコミュニケーションできる場にしたいと思っています。僕も初心者マーク付けてみようかな(笑)。

同じビジョンを持った同士の方たちと出逢って、これから一緒に成長していけたらと思っているので、当日を楽しみにしています。

―ありがとうございました。
 



[撮影]野村昌弘
[執筆]野本纏花
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