マーケティング 2017.07.06 BtoB企業のブランディングを考える イマジナ関野吉記さん×濱口豊



8月1日開催の『Bigbeat LIVE』。「マーケティングで経営を変える」をテーマとしたカンファレンスイベントで、講演者として登壇していただく株式会社イマジナ社長の関野さんと濱口が対談を行いました。日本企業のマーケティングやブランディングについて、また『Bigbeat LIVE』が「ライブ」たるゆえんにまで話はヒートアップ!
 

プロフィール

関野 吉記さん
株式会社イマジナ代表取締役社長。社団法人グローバルブランディング協会代表理事。London International School of Acting卒業後、イマジネコミュニカツオネに入社。多くのコマーシャル、映画製作を手がける。その後、投資部門出向、アジア統括マネージャーなどを歴任。日本企業の海外進出において、その多くが製品力だけに頼って失敗するケースを目の当たりにし、バックストーリーを伝える力の重要性を痛感する。現在、企業の文化や独自性を明文化し社内外へ伝えていくことで、企業価値の最大化を支援している。『Bigbeat LIVE』では企業ブランドがBtoB企業にどのように寄与するかを語っていただきます。
 

伸びる会社には「ストーリー」と「想い」がある

濱口
『Bigbeat LIVE』では関野さんにご協力いただけることになり、心強いです。ありがとうございます。このイベントをやろうと思ったきっかけについてお話させていただきますと…。

僕の故郷は高知県なんですが、僕がいた頃は90万人近かった人口が、今では72万人に。仕事がないからなんですが、一方で東京は働き手がいない、過重労働で亡くなる人もいるという状況。

それらを目の当たりにしてここ数年、日本の未来について考えるようになりました。東京(都会)で働き、暮らす人たちの余裕と笑顔がもっと増えて、故郷である高知のような地域で働き暮らす人たちの活躍する場所がもっともっと増えて、その成果がドンドン世界に拡がってく。どうしたらそんな未来に近づけるのだろうか?もっと豊かでもっと平和なこの国の未来を子供たちの世代に引き継いでいくために、Bigbeatは広告会社としてなにができるだろうか?そんなことを考え続けながら、少しでも世の中のお役に立てるよう行動していくことが、自分たちの成長にもつながるんじゃないかと思ったんです。

そこで今回、決して何かを売りつけるために皆さんに集まってもらうわけではなく(笑)、自分たちの想いを一番聞いてほしい人たちに届けたい!ということで『Bigbeat LIVE』を企画しました。講演のストーリーを考えると、「ブランド」についての話が必要。できたらグローバルな視線や経験があり、かつ評論家ではなく実体験に基づいた話ができる方を!と探す中で、出会ったのが関野さんでした。当社の企画担当者より紹介された『ブランド力』『 世界で勝てるブランディンカンパニー』などの著書を拝読させていただき、『本来、BtoB企業にこそ企業ブランド力が不可欠』というご意見に「この方だ!」と思い、図々しくも突撃で会いに行きました。その節はありがとうございました。

関野
偶然にもお互いの会社が近かったですしね。笑
うちはもともと人事のコンサルティング会社からスタートしたんですが、何よりも大事なのは「ブランドをどう理解してどう体現していくのか」ということだと思っています。アメリカに進出している日本企業は1万3000社ぐらいあるんですが、失敗する会社も少なくはない。そういう企業は、ブランドのバックストーリーを伝える力がすごく弱いんですね。メディアで広告を大量に打てるような会社はいいんですが、予算がない会社はどうやってブランドの価値を上げていけばいいのかが問題です。

会社が伸びるにはストーリーや想い、ユーザーが製品を使った後に語れる何か、みたいなものがすごく必要なんです。コンセプト作りから社内に浸透させるまでを一気通貫でやらせてもらっていますが、限られた予算の中で頑張ろうとしている会社をお手伝いするのは楽しいですね。日本のいいものを世界に伝えるために、何かできればと思っています。

濱口
海外と日本とでは、ブランドに対する理解度や価値観は違うものですか?

関野
日本の企業もブランドや日本文化を大事にされているので、ものすごく違うというわけではないです。ただ民族が多様な分、海外のほうがプログラム化・ルール化が上手いんですよね。日本はこれまで暗黙の了解でやってこられたことが多かった。でも今は価値観の違う人が増え、昔とは違う教育制度で育った若者が台頭する時代。人のタイプが多様化してきたので、以前より仕組みづくりを徹底しなければならなくなっています。

マーケティングでもブランディングでも、しっかりした仕組み作りと、確固たる根拠に基づいたストーリー作りをちゃんとやっていかなければ、難しい時代になっていると思いますね。

たとえば弊社の書籍でも取り上げた株式会社にんべん様。これまで、タダで配っても見向きもされなかった出汁を、『だしバー』(日本橋だし場)という場をつくり1杯100円で提供したら1日に数百人のお客様が来るほど大評判になったんです。「ホッとする」「落ち着く」というコンセプトを提供してるからなんですよ。こんなふうに、企業の背景にある想いを戦略的に打ち出してブランディングすることで、復活する企業もあるんです。

見た目も大事。それ以上に内面を磨いて発想で勝負

濱口
ときどきブランディングの捉えられ方が少し違うな、と感じることがあるんです。ブランディングというとどうしても、外見を飾り立てて、美化することだと勘違いしている企業や広告会社があるんですよね。でも本当は、逆にいろいろ脱ぎ捨てて、すっぴんとまでは言わないけれど、その会社のあるべき姿をちゃんと伝えていくのが大事じゃないかと思うんですが。

関野
見せ方も、それはそれで大事だと思うんです。やはり見た目の影響はありますし、第一印象はとくに大切ですよね。そこはきちんと踏まえる。そのうえで、内面を重視しないと、企業として伝えるものがなくなると思います。

見た目だけをよく見せようと思うと、資金や資本が強いところのほうが絶対有利ですよね。その場合、体力のない会社にチャンスはない。そこを発想でどうするか、というところに面白さがあると思うんです。予算の都合上広告を打てないけれど必死で頑張っている、という会社をお手伝いするのは楽しいですね。

濱口
1億円のマーケティングコストでは、ゴールデンに十分なCMは打てない。でも1億円の使い方を改善することで、ブランドの伝え方やマーケティングは劇的に変わりますよね。

関野
もう一つ強く思うのは、BtoBの企業こそ、BtoC以上にブランディングをしっかりやるべきだということ。BtoCに比べて、一般の人の目にに触れることが少ないじゃないですか。BtoB、BtoCにかかわらず、優秀な人材の確保を考えれば“人”に対するブランド戦略は不可欠なんです。優秀な人材の採用は、会社が飛躍する大きなポイント。となると、多くの人にブランドのことを伝えて、知ってもらう必要があるんです。

そのためには戦略を立てて、ブランディングやマーケティングに、より予算を取るべき。そのほうが結果的に、コスト削減できるはずです。いろんな意味で会社の成長にもつながりますし。その上、優秀な人材も採用できる。こういう無形資産をいかに作れるかが、企業の価値だと思います。

道具は道具。大切なのは、「想いが伝わる」かどうか

濱口
1年ほど前から、二つのフォローウインドが吹いているなぁと感じてまして。一つは、働き方改革。労働生産性を上げなきゃと取り組む中で、手つかずの部分はマーケティングなんじゃないかと、多くの経営者が気づき始めている気がするんです。その証拠に一昨年に比べて、マーケティングやブランディングに関するセミナーや記事、著作が増えてますよね?

関野
間違いなくそうですね。

濱口
もう一つは、世界的なデジタルメーカーが「これからはマーケティングだ!」と毎週のようにカンファレンスを開いて啓蒙している、ということ。

関野
そうですね。営業マンに頼るという戦術がほとんど使えない時代ですから、「マーケティングから根本的に変えていかなければ」という風潮ではあります。フォローウインドですよね。そこで大事なのはやはり、仕組み作り。仕組みをしっかり整えて、その中で頑張ってくれる人たちがどれだけ育っていくのか。

濱口
注意すべきは、「デジタルツールを入れればなんとかなる」という考え。それで投資をすると、間違いなく失敗すると思うんですよね。デジタルツールに踊らされて、使えないマーケティングコンテンツが乱発されるようでは、マーケティングの進化はないと思います。

関野
ツールを入れたからうまくいく、というのは違いますよね。時代が流れても変わらない根幹的な戦略や想いがないと、厳しいですね。

濱口
ゴルフで例えれば、スライスするからってドライバーを変えたところでうまくいくわけじゃないのと同じですよね。スイング変えなきゃどうしようもないですよっていう話と一緒(笑)。



関野
道具も大事といえば大事なんですけどね。合う道具ならいいけど、それに巡りあうには相当時間がかかりますからね。今あるツールをうまく使いこなせる人材がいるかどうかという問題もある。

濱口
現時点ではなかなか難しいでしょうね。

関野
そうなるとやっぱりアナログとデジタルのいいところを上手く取って、バランスよくやっていくことでしょうね。人の心に響くかどうかも大切だし、システム的なものも必要。両方あったほうがいいんじゃないでしょうか。

濱口
結局、万事「人間がどう感じるか」ですからね。目の前にいる相手に伝えられないことは、デジタルでも伝えられませんから。

関野
まったくその通りですよね。営業もマーケティングも、まずはアナログありき。その考えを徹底していく仕組みを、デジタルの中でも共用できるということが、デジタルマーケティングなんだと思うんですよね。弊社のお客様のEC企業やデジタル系の企業は、売り上げが上がってきたところでアナログなことをやりたがるんですよ。なぜなら、やっぱりライブが最高だから。

音楽だってそう。画面を通して観るのと、ライブ会場で感じるのとでは全然違う。生で得られるものをデジタルにどう反映し、活用できるか。このバランスを取っていくことが、50年後100年後につながるんじゃないでしょうかね。そういう部分を大事にしていかないとならないと思います。デジタルに特化するというのは、まだ早すぎますね。

濱口
僕も、デジタルの反対語はアナログではなくライブだと思っています。それで今回のイベントも『Bigbeat LIVE』と銘打ったんです。とはいえデジタルを否定するわけではまったくなく、活用すべきだとも思っています。

関野
デジタル、必要ですからね。ライブとデジタルの相乗効果がなければ、と思います。

濱口
『Bigbeat LIVE』でも、ぜひお客様に生で感じていただきたいですね。当日の関野さんの講演、大変楽しみにしています。

関野
「ライブ」とつくからには、面白いことをお話したいですね!講演では、ブランディングの大切さと同時に、“成長実感”の必要性についても声を大にしてお伝えしたいと思っています。マーケティングの担当者がどう成長できているのか、どう伸びているのかを実感することって、大事なことなんです。その担当者が停滞したり、「システム運用しているだけじゃないか」と思ったりした瞬間、もう楽しくなくなってしまうわけです。やっぱり、人が成長を実感することって、すごく大事。それなくしていいものなんてできるはずがないんです。

成長実感できる人は企業に何パーセントくらいいるか、というデータがあるんですが、これだけしかいないのか、これ以外の多くの人がキャリアを選べないのか、と驚きます。まずはこの現状を根本的に変えていかなければ、面白い仕組みはできない。そういう、弊社にしか語れないことをお話させてもらえればと思っています。来ていただいた方に、「面白かった」「明日から使えそう」と言っててもらえるように。



濱口
講演の後、懇親会も予定していますので、お客様も交えてそちらでも面白いセッションをしたいですね。
高知の地酒もずらりと並びますので、お楽しみに!


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マーケティングで経営を変える。
Bigbeat LIVE ~「らしさ」で未来はグッとよくなる~

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日時:2017年8月1日(火)13:00-19:30(ネットワーキングパーティ含む)
会場:紀尾井カンファレンス 永田町駅直結・赤坂見附駅より徒歩1分
主催:株式会社ビッグビート 
費用:無料
協力:一般財団法人 高知県地産外商公社
メディアスポンサー: 株式会社日本ビジネスプレス

詳細は>> https://www.bigbeat.live/

 

※本イベントはおかげさまで大変盛況のうちに終えることができました。
サポートいただきました皆さま、ご来場いただきました皆さま、誠にありがとうございました。
当日の様子は開催レポートをご覧ください。


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