マーケティング 2021.03.26 イベントの顧客体験とデータ活用から、エンゲージメントの創出へ【Play Now! レポート②】
オンラインイベントだからこそ、取得できるデータをうまく活用したい…。そう考えているマーケターの方は、少なくないでしょう。また、快適に視聴いただくための準備や、相手が知りたい情報を適切なタイミングで届けるなど、オフラインとは違った視点からのイベントの組み立て方が必要です。オンラインイベントでの顧客体験と、そのイベントを通してのデータ活用に挑戦された一例として、株式会社ヤプリ マーケティング本部 マーケティングスペシャリストの島袋 孝一さんのモデレートのもと、株式会社図研 コーポレートマーケティング室 マネージャーの福田 正人さんより、その実践を存分に語っていただきました。
写真左から:株式会社ヤプリ 島袋 孝一さん、株式会社図研 福田 正人さん
そこで、イベントそのものを「通年運用の顧客エンゲージメントの一部」と捉え直し、10月14日(水)~22日(木) に「ZUKEN digital SESSIONS 2020(ZdS)」と名称を改めてオンラインイベント化。オンラインならではの顧客体験づくりを徹底した結果、 ZIWと比較し、申込者は全体として25%増、イベントの目玉である講演の平均視聴数も増加しました。
このようなオンライン化の背景に、福田さんは「社内的にも『通年的な顧客エンゲージメント環境』の構築指令があり、オンラインイベントを単体ではなく、 継続的な仕組みの一部として機能させようと考えた」といいます。
それでは、オンライン化のプロセスの中で、どのようにしてイベントを「通年的な顧客エンゲージメント環境」の一環として新たに位置づけることに成功したのでしょうか?
例えば、イベントの要であるユーザーのお客様による講演は、最新の事例や技術が発表されるなど訴求力が高い分、コンテンツのクローズ性が高く、イベントの保秘力担保が必須となります。そのような講演は、事前収録したものをイベント当日に流す「疑似ライブ配信」を採用した他、「KODOU」でのコンテンツ設計から来場者管理まで一気通貫でおこない、「この人にしか視聴させていない」という保証しつつ、講演者の理解や関係づくりを進めていったといいます。
「システム周りはビッグビートさんにご協力をお願いし、私たちはデータ活用や顧客体験の深堀に専念することにしました」(福田さん)の発言を受け、ヤプリの島袋さんは「2020年はウェビナー戦国時代。Zoomやスマホ一台で簡単にオンラインイベントができるようになったものの、リッチな視聴体験はただのインカメラではできません。プラットフォームや配信システムのプロの集団と一緒のおこなうことは注力すべきコストであり、今やこうしたパートナー選びもマーケターの必要なスキルになってきています」と語ります。
まず、ZdSでは、オンラインチャットなど、イベント中での双方向性は今回は捨て、代わりにそこで起こった情報をリアルタイムで回収し、期間中にイベント外で営業担当がお客様に連絡をとってフォローアップするようにしました。
また、「展示ブース」も実施せず、そこで提供していた資料や製品情報などのマテリアルは通年運用している環境のほうで配布することにしました。
こうした方針を受けて、島袋さんは「やりたいことのコアを決めて、やらないことを決めるのもポイント」と、オンライン化の際の取捨選択の重要性を語りました。
福田さんは「お客様が我々のイベントにきて情報を取っていっていただく。その代わりに感想や視聴ログを残す。これはオフラインでは得られなかったリアルタイムのデータです」と、オンラインだからこそ得られるデータの活用に注目します。
そこでKODOUとSalesforceを連携させ、営業がお客様のログやアンケートをリアルタイムに把握し、タイミングを見て即座にコミュニケーションができるよう、システムを構築しました。こうすることで、例えば午前中の講演でのお客様の反応を見て、午後にその情報を踏まえて営業がコンタクトをとる、といったアクションが可能に。図研の技術者をはじめとした発表側としてもコンテンツへのフィードバックがすぐ取れるということで反応が良かったといいます。
さらに、イベント終了後は、イベントの情報を全て通年的なデータベースに入れることで、イベントを一発花火で終わらせず、イベントをトリガーとしてお客様との関係をより深めていくことが可能になりました。
島袋さんはこの取組に対し「こうしたデータ活用はデータマーケティングの誰もが意識はしているが、なかなか着手できていないこと。SaaS企業で取り入れられているThe Modelのように、ステークホルダーや社内外の関係者に何をどう伝えるのかを、配信システムと絡めて設計することが大切で、この図(上図参照)のように可視化させると、社内外のステークホルダーに説明するときに安全性の担保もでき、効果的ですね」と設計とデータ活用とのハイコンテキストな組立てに注目していました。
1.事前の社内説明会の実施
図研社では、お客様に適切にコンテンツを見てもらいたいという理由から、営業やマーケターなどに対し、講演の内容や目的などを、社内で徹底的に説明する機会を設けているとのこと。「コンテンツ担当者がプレゼンしあうことでお互いの理解が深まるだけでなく、イベント中の動線づくりの上でも役に立つし、講演後のフォローの際にも効いてくる」と福田さんはいいます。
マーケ部門しかコミットしないイベントなどもある中で、こうした説明会を持つことで全社ごととしてイベントを認識してもらうことができるように。
2.動線を意識した視聴フォーマットづくり
ZdSの視聴画面のレイアウトも、KODOUのテンプレートから多くのカスタマイズをおこないました。最も特徴的なのは、講演に関係する製品情報にもタッチしてほしいというねらいから、メイン動画画面の横に関連動画リンクを配置したことです(上図参照)。
こうしたインターフェースづくりについて島袋さんは「普段私がやっているモバイルでも共通しますが、見慣れたフォーマットに寄せることが大切。普段と逸脱する操作はユーザーのフラストレーションにつながります。顧客にとって説明のいらないインターフェースになっていることが重要です」といいます。
3.顧客エンゲージメントを意識したスケジュール設計
「お客様の性質を考え、9日間のイベントのうち、水木の午前のみを『ドラマ枠』と呼ぶ擬似ライブ12講演を配置し、24講演の『CM枠』では、オンデマンドで常時配信動画を自由に観られるようにしました」(福田さん)というスケジュール表は、さながらテレビの番組表のよう。
「ドラマ枠」は、図研社トップの講演を除き、お客様の導入事例や技術講演で、お客様から最も注目の集まるコンテンツ。一方、「CM枠」では、ドラマ枠のコンテンツに関連する製品・サービス・技術の開発計画の他、新製品ソリューションの開発のアイデアだしのフィードバックなどをいただくようなコンテンツとなっているとのことです。
「お客様が何を求めているかを描きながらコンテンツを組み立てるのに苦心されたのでは?」という島袋さんの問いに対して、「先ほどの視聴画面の説明でもご紹介しましたが、とりわけCM枠の関連動画の表示については、我々でLook Up Tableをつくり、ビッグビートさんにお願いをして、我々の意図を反映した形で関連動画のロジックをシステムに組み込んでいただいた」(福田さん)と、その緻密な舞台裏を明かしてくださいました。
実際に解析をしたところ、常時配信のオンデマンド視聴の6-7割が関連動画リンク経由で来たこともわかり、仮説通りの検証結果だったといいます。
4.顧客の視聴体験のサポート
オンラインならではの配慮として、お客様の視聴環境への考慮があげられます。「我々のお客様の多くがメーカーの設計部門ですから、ネットワークセキュリティが高いことは予測できていたので、テスト動画を事前に視聴いただくようにお願いしました」と福田さんは振り返ります。
こうした取組を受けて、島袋さんは「会社ごとに規約やネットワークセキュリティが異なり、ZoomやYouTubeが利用できないケースもあります。適切に視聴体験を提供するために、どのプラットフォーマーを選ぶかを含めて、事前テストなどで試すことは必須です。トラブル時のことも考慮して、やはりきちんとしたプロの方に任せるのが大切ですね」と強調します。
「既存のお客様ももちろん、新しい方のエンゲージメントがより大事になっています。また、イベントもその場その時という位置づけから、通年的なお客様のエンゲージメントのツールとしてイベントをとらえていきたいですね。また、オンラインイベント自体の機能強化というのもチャレンジをしていきたいところで、例えば、オフラインで実施していた『体験型プログラム』のオンライン化や、ログ解析による動的なお客様ごとの関連動画表示など、イベントを一つの装置とみたときの価値向上をより考えていきたいです」(福田さん)。
オンラインだからこそ工夫できたこと・実現できたことも多くみられた、今回のセッション。福田さんや島袋さんのようなマーケターの皆さんのご意見を伺いながら、ビッグビートは今後もKODOUの機能・サービスの拡充をはじめとして、BtoBイベントの実施でお役に立てるよう、貢献していきたいと思います。
写真左から:株式会社ヤプリ 島袋 孝一さん、株式会社図研 福田 正人さん
「通年的な顧客エンゲージメント」のためのイベント再構築
図研社(本社:神奈川県横浜市)は、製造業の製品設計・開発業務の高度化・最適を支援する各種ITシステムパッケージ開発や導入コンサルティングサービス、販売を主な事業内容しています。これまでは、既存顧客を主な対象としたオフラインイベント「Zuken Innovation World(ZIW)」を開催していましたが、2020年はCOVID-19という社会的状況から、見送りを余儀なくされました。そこで、イベントそのものを「通年運用の顧客エンゲージメントの一部」と捉え直し、10月14日(水)~22日(木) に「ZUKEN digital SESSIONS 2020(ZdS)」と名称を改めてオンラインイベント化。オンラインならではの顧客体験づくりを徹底した結果、 ZIWと比較し、申込者は全体として25%増、イベントの目玉である講演の平均視聴数も増加しました。
このようなオンライン化の背景に、福田さんは「社内的にも『通年的な顧客エンゲージメント環境』の構築指令があり、オンラインイベントを単体ではなく、 継続的な仕組みの一部として機能させようと考えた」といいます。
それでは、オンライン化のプロセスの中で、どのようにしてイベントを「通年的な顧客エンゲージメント環境」の一環として新たに位置づけることに成功したのでしょうか?
「配信パートナー選び」もこれからのマーケターのスキルに
「まず、オンラインイベントへの経験不足が不安要素としてありました」と福田さん。図研社にとって、今回が初めての本格的なオンラインイベントであり、人的・時間的なリソースやトラブル対応の想定などの課題が最初に立ちはだかりました。例えば、イベントの要であるユーザーのお客様による講演は、最新の事例や技術が発表されるなど訴求力が高い分、コンテンツのクローズ性が高く、イベントの保秘力担保が必須となります。そのような講演は、事前収録したものをイベント当日に流す「疑似ライブ配信」を採用した他、「KODOU」でのコンテンツ設計から来場者管理まで一気通貫でおこない、「この人にしか視聴させていない」という保証しつつ、講演者の理解や関係づくりを進めていったといいます。
「システム周りはビッグビートさんにご協力をお願いし、私たちはデータ活用や顧客体験の深堀に専念することにしました」(福田さん)の発言を受け、ヤプリの島袋さんは「2020年はウェビナー戦国時代。Zoomやスマホ一台で簡単にオンラインイベントができるようになったものの、リッチな視聴体験はただのインカメラではできません。プラットフォームや配信システムのプロの集団と一緒のおこなうことは注力すべきコストであり、今やこうしたパートナー選びもマーケターの必要なスキルになってきています」と語ります。
「やらないことを決める」という英断
パートナーが決まった後、「まず、集客対象はオフラインと同様としつつ、オフラインでできないことは深追いせず、オンラインならではの特徴を活かして、データ活用や顧客体験づくりをおこなおうと決めた」と福田さんは振り返ります。まず、ZdSでは、オンラインチャットなど、イベント中での双方向性は今回は捨て、代わりにそこで起こった情報をリアルタイムで回収し、期間中にイベント外で営業担当がお客様に連絡をとってフォローアップするようにしました。
また、「展示ブース」も実施せず、そこで提供していた資料や製品情報などのマテリアルは通年運用している環境のほうで配布することにしました。
こうした方針を受けて、島袋さんは「やりたいことのコアを決めて、やらないことを決めるのもポイント」と、オンライン化の際の取捨選択の重要性を語りました。
リアルタイムの収集データを活用するための設計を
では、ZdSでのオンラインならではのデータ活用とは、具体的にどのようなものだったのでしょうか?福田さんは「お客様が我々のイベントにきて情報を取っていっていただく。その代わりに感想や視聴ログを残す。これはオフラインでは得られなかったリアルタイムのデータです」と、オンラインだからこそ得られるデータの活用に注目します。
そこでKODOUとSalesforceを連携させ、営業がお客様のログやアンケートをリアルタイムに把握し、タイミングを見て即座にコミュニケーションができるよう、システムを構築しました。こうすることで、例えば午前中の講演でのお客様の反応を見て、午後にその情報を踏まえて営業がコンタクトをとる、といったアクションが可能に。図研の技術者をはじめとした発表側としてもコンテンツへのフィードバックがすぐ取れるということで反応が良かったといいます。
さらに、イベント終了後は、イベントの情報を全て通年的なデータベースに入れることで、イベントを一発花火で終わらせず、イベントをトリガーとしてお客様との関係をより深めていくことが可能になりました。
島袋さんはこの取組に対し「こうしたデータ活用はデータマーケティングの誰もが意識はしているが、なかなか着手できていないこと。SaaS企業で取り入れられているThe Modelのように、ステークホルダーや社内外の関係者に何をどう伝えるのかを、配信システムと絡めて設計することが大切で、この図(上図参照)のように可視化させると、社内外のステークホルダーに説明するときに安全性の担保もでき、効果的ですね」と設計とデータ活用とのハイコンテキストな組立てに注目していました。
顧客体験のための4つの準備とは?
「顧客体験づくり」の観点では、福田さんによると、次のような工夫があったといいます。1.事前の社内説明会の実施
図研社では、お客様に適切にコンテンツを見てもらいたいという理由から、営業やマーケターなどに対し、講演の内容や目的などを、社内で徹底的に説明する機会を設けているとのこと。「コンテンツ担当者がプレゼンしあうことでお互いの理解が深まるだけでなく、イベント中の動線づくりの上でも役に立つし、講演後のフォローの際にも効いてくる」と福田さんはいいます。
マーケ部門しかコミットしないイベントなどもある中で、こうした説明会を持つことで全社ごととしてイベントを認識してもらうことができるように。
2.動線を意識した視聴フォーマットづくり
ZdSの視聴画面のレイアウトも、KODOUのテンプレートから多くのカスタマイズをおこないました。最も特徴的なのは、講演に関係する製品情報にもタッチしてほしいというねらいから、メイン動画画面の横に関連動画リンクを配置したことです(上図参照)。
こうしたインターフェースづくりについて島袋さんは「普段私がやっているモバイルでも共通しますが、見慣れたフォーマットに寄せることが大切。普段と逸脱する操作はユーザーのフラストレーションにつながります。顧客にとって説明のいらないインターフェースになっていることが重要です」といいます。
3.顧客エンゲージメントを意識したスケジュール設計
「お客様の性質を考え、9日間のイベントのうち、水木の午前のみを『ドラマ枠』と呼ぶ擬似ライブ12講演を配置し、24講演の『CM枠』では、オンデマンドで常時配信動画を自由に観られるようにしました」(福田さん)というスケジュール表は、さながらテレビの番組表のよう。
「ドラマ枠」は、図研社トップの講演を除き、お客様の導入事例や技術講演で、お客様から最も注目の集まるコンテンツ。一方、「CM枠」では、ドラマ枠のコンテンツに関連する製品・サービス・技術の開発計画の他、新製品ソリューションの開発のアイデアだしのフィードバックなどをいただくようなコンテンツとなっているとのことです。
「お客様が何を求めているかを描きながらコンテンツを組み立てるのに苦心されたのでは?」という島袋さんの問いに対して、「先ほどの視聴画面の説明でもご紹介しましたが、とりわけCM枠の関連動画の表示については、我々でLook Up Tableをつくり、ビッグビートさんにお願いをして、我々の意図を反映した形で関連動画のロジックをシステムに組み込んでいただいた」(福田さん)と、その緻密な舞台裏を明かしてくださいました。
実際に解析をしたところ、常時配信のオンデマンド視聴の6-7割が関連動画リンク経由で来たこともわかり、仮説通りの検証結果だったといいます。
4.顧客の視聴体験のサポート
オンラインならではの配慮として、お客様の視聴環境への考慮があげられます。「我々のお客様の多くがメーカーの設計部門ですから、ネットワークセキュリティが高いことは予測できていたので、テスト動画を事前に視聴いただくようにお願いしました」と福田さんは振り返ります。
こうした取組を受けて、島袋さんは「会社ごとに規約やネットワークセキュリティが異なり、ZoomやYouTubeが利用できないケースもあります。適切に視聴体験を提供するために、どのプラットフォーマーを選ぶかを含めて、事前テストなどで試すことは必須です。トラブル時のことも考慮して、やはりきちんとしたプロの方に任せるのが大切ですね」と強調します。
イベントは「通年的な顧客エンゲージメントのツール」へ
今回のZdSを取組を通じて、どのような気づきとこれからの課題や展望が見えたのでしょうか。その一つに、福田さんは「ここ一年での顧客エンゲージメント環境の変化」があるといいます。「既存のお客様ももちろん、新しい方のエンゲージメントがより大事になっています。また、イベントもその場その時という位置づけから、通年的なお客様のエンゲージメントのツールとしてイベントをとらえていきたいですね。また、オンラインイベント自体の機能強化というのもチャレンジをしていきたいところで、例えば、オフラインで実施していた『体験型プログラム』のオンライン化や、ログ解析による動的なお客様ごとの関連動画表示など、イベントを一つの装置とみたときの価値向上をより考えていきたいです」(福田さん)。
オンラインだからこそ工夫できたこと・実現できたことも多くみられた、今回のセッション。福田さんや島袋さんのようなマーケターの皆さんのご意見を伺いながら、ビッグビートは今後もKODOUの機能・サービスの拡充をはじめとして、BtoBイベントの実施でお役に立てるよう、貢献していきたいと思います。