マーケティング 2020.05.26 顧客と企業の関係は変わる?freeeの書籍出版から見る、顧客との新しい関係 | freee 田中 圭氏


書籍執筆に携わったメンバーでのオンラインミーティング中の1コマ

昨今の新型コロナウイルスの感染拡大により、BtoBの営業やマーケティングのオフラインからオンライン中心へ大きく変わっています。オフラインからオンラインへの変化によって影響を受けた要素の1つに、「企業と顧客との関係」があるのではないでしょうか。

従来はオフラインを中心に築いてきた顧客との関係が、オンライン中心になることでどう変化するのか。コミュニティリーダーと共に書籍「会計士・税理士はこれからどう生きるか~AI時代にも稼げる『働き方の未来地図』~」を出版するなど、顧客と強い関係性で結ばれているコミュニティ「freee"マジカチ"meetup!」コミュニティマネージャーを務める田中圭さんに、顧客との関係性の変化について伺いました。

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freee株式会社 
CommunityTeam CommunityMarketingManager 
田中圭さん

人材会社にて営業を経験後、医療法人に広報部署立ち上げメンバーとして転職。地域の方たちを対象としたイベントの企画・運営を担当する。2018年にfreee株式会社入社。パートナー企業とのオフラインイベント企画など中長期的なマーケティング施策に携わる。その後、freeeのコミュニティ「freee”マジカチ"meetup!」のコミュニティマネージャーとして、各地のコミュニティリーダーと協力してコミュニティ盛り上げに奔走する。

Twitter:@freee_kei
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顧客とベンダーから、公私混同の関係へ


ーーニシタイには以前もご出演いただきましたが、改めてfreeeのコミュニティである、「freee"マジカチ"meetup!」のご説明をお願いいたします。

田中さん:
ご無沙汰してます。過去に「freee"マジカチ"meetup!」の紹介動画を作成しているので、せっかくなんで見てください(笑)




ーー紹介動画を作られたんですね!雰囲気が伝わりやすいです。


田中さん:
そうなんです。コミュニティリーダーたちとのコラボ企画として作成しました。

「freee"マジカチ"meetup!」は弊社プロダクト「クラウド会計freee」のファンである会計人を中心とした方々のコミュニティです。現在は全国7か所(北海道・東京・名古屋・大阪・広島・福岡・沖縄)で運営されています。

ーーこうしたコミュニティの活動ではオフラインでの関係作りが多いと思うのですか、コロナ禍によって田中さんの周囲の状況はどのように変化しましたか?

田中さん:
元々、コミュニティのメンバーとは普段のやりとりはチャットを使うなど、オンラインベースでやりとりを行っていたので、実は仕事の面ではコロナ禍の影響はそこまで感じることはありませんね。ただ、meetupなどのオフラインでの接触が一切できないので、メンバーそれぞれとの親交の深まり具合は、オンラインだけでは弱く感じているのが正直なところです。

細かいところでは、今まで以上にテキストコミュニケーションにこだわるようになりました。オンライン下では、感情が見えづらいテキストコミュニケーションが中心となるので、言い回しに注意したり、相手のメッセージを聴く姿勢を示すことが重要だなと感じてます。

ーー現状、これからオンラインコミュニケーションが中心となると予想される中で、田中さんが感じる顧客との関係の変化などはありますか?

田中さん:
あくまでコミュニティマネージャーの立場としての話ですが、今まで以上にベンダーと顧客というビジネスだけの関係性から、「個人と個人」としての関係が重要になると思います。そういった意味では、コミュニティ界隈でよく言われる「公私混同的な働き方」がよりフォーカスされるのではないかと感じています。

オフラインからオンラインへの変化の1つとして感じるのは、コミュニケーションの回数の変化です。オフラインでのコミュニケーションと比べると、オンラインでは1回の親睦の深まり具合や情報量といったものはかなり減ってしまっています。そのため、必然的にコミュニケーションの回数を増やすことで、情報量や親睦の深まり具合をカバーしようという動きになると思います。

一方で、仕事上のやり取りだけでコミュニケーションの回数を増やしていくことは、内容が仕事のみに限られているのでお互いに疲れてしまいます。そのため、SNS上でプライベートなことも含めてコミュニケーションをしています。今後はこうした公私混同的な働き方、つまり仕事の面だけでなくパーソナルな部分もオープンにしていく姿勢が、営業やマーケターなど顧客接点を持つ様々な職種にも広がっていくと思います。


freee株式会社 CommunityTeam CommunityMarketingManager 田中圭さん

ーー田中さん自身はコミュニティリーダーとどのようなコミュニケーションをとっているのでしょうか

田中さん:
チャットだけではなくSNSなども積極的に使って、コミュニティリーダー・メンバーとコミュニケーションをとっています。それに加えて、コミュニティリーダー・メンバーとの向き合い方にも意識している点があります。普段やりとりをする、コミュニティリーダー・メンバーの多数が経営者の方でいらっしゃいます。
そのため、1人のビジネスマンとして接する中で学ぶことも多々あり、コミュニティリーダー・メンバーをとても尊敬しています。そのため、自分がコミュニティリーダーメンバーの「ファン」のような気持ちでコミュニケーションを取っています。

「完全に仕事」と割り切ると、先ほどのプライベートの話と同様に顧客との日々のコミュニケーションも上手くいきませんし、それだけではしんどい。コミュニティメンバーを尊敬しているからこそ、自分はベンダーの社員と顧客という関係だけではなく、「個人と個人」の関係で公私混同的なお付き合いができると考えています。

 

「共感」と「好き」が変化の起点


ーー「顧客とベンダー」から「個人と個人」という関係に変化するために、顧客から企業への視点で必要な前提などはあるのでしょうか?

田中さん:
「ビジョンへの共感」が必要になると思います。このコミュニティを立ち上げるときに、リーダーとしてコミュニティの中心に参画していただく方々には、freeeのビジョン(「スモールビジネスを、世界の主役に。」)や、コミュニティのロードマップなどを説明したうえで、そのビジョンに共感してくださった方がコミュニティリーダーに立候補いただいています。
なので、我々もコミュニティリーダーに対して、(こちら側だけの意思で)“やってもらう”という想いもないですし、コミュニティリーダー側もfreeeのために“やってあげている”という想いもありません。



コミュニティの活動でアウトプットされるモノも、ビジョン実現のためのアウトプットとして位置づけられています。例えば、アウトプットの1つとして、今回コミュニティを題材にした書籍をコミュニティメンバーとコラボして出版しましたが、そこでもコミュニティリーダーの方々に多くの協力をいただきました。

各章ごとにそれぞれコミュニティリーダーが共編というかたちで担当いただいており、内容も一緒に企画しながら進めましたが、制作途中では予定通りにいかないことも非常に多かったです。

ただ、こうした多くのアクシデントもコミュニティリーダーたちと「ビジョン実現のためのアウトプット」という意識と、同じビジョンを目指す「同志」という関係があったからこそ乗り越えられたと感じています。

ーービジョンへの共感が起きる方はどのような特徴がございますか?

田中さん:
「ビジョンへの共感」には起点となる「プロダクトを好きになってもらう」ことが必要です。コミュニティって、元々のベースがプロダクトを好きな人の集まりなんです。好きだからこそ、ロジックを超えて感情としてもっと知りたいと思う。そうでないと、まずビジョンにまで関心を持っていただけません。

コミュニティリーダーとして、freeeへの強い思いを持って活動していただいている矢野さんという方がいるのですが、freeeのプロダクトに対する好意が起点となって、コミュニティができる前からfreeeのプロダクトを積極的に周囲に勧めていただいていました。(写真のように、シンガポールや富士山頂にfreeeの水を持って行っていただくなど、社内でも有名でした)


それほどの活動をしている矢野さんならビジョンに共感していただけると思い、コミュニティができる際には声をかけさせていただきました。結果、今ではコミュニティを率先していくような存在になっています。もちろん、コミュニティリーダー・メンバーからはプロダクトへの期待があるからこそ、厳しいフィードバックもありますが、それもひとえにプロダクトへの愛だと思っています。


ーーコミュニティ経由で来た顧客はfreeeと相性の良い方が多いのでしょうか。


田中さん:
私の肌感覚での意見になってしまいますが、コミュニティのmeetupをきっかけにして、
freee認定アドバイザーになった方もいるので、コミュニティ経由のお客様は自社に相性の良い方が多い印象がありますね。同じ立場の方々が実際の活用事例や本音を言い合っている環境なので、freeeから直接接点をもつのと比べるとやはり熱量は高いと思います。

 

コミュニティの多様化と価値の向上


ーー現在もmeetup再開などの見通しが立ちづらいと思います。これから、コミュニティをどのように運営をしていくのでしょうか?

田中さん:
今の状況的に運営はどうしてもオンラインに移行せざるを得ませんが、オフラインでやってきたことを全てそのままオンラインに持ってこようとすると、様々な制約があるので上手くいかないと予想しています。

各配信ツールの特性などを活用しつつ、オンラインならではの価値を模索し、生み出していくしかありません。オンラインは企画と配信ツールの組み合わせでまた雰囲気や運営方法が変わってくるので、今まで以上にそれぞれのコミュニティのカラーが出てきて多様化していくと思っています。

ただし、今の情勢が落ち着いた場合、全ての活動がオンラインに完全に移行するということはないと思っています。熱量を伝播することや親睦を深める効果は、今のところオフラインの方が何倍もあると思います。ですので、今後はオフラインとオンラインを交互に開催したり、企画の主旨によって切り替えるなど、「ハイブリット型」のmeetupが主流になっていく思います。

同時に、コミュニティに興味があったけど、時間や物理的制約からmeetupに参加できなかった方々がオンラインで参加が可能になり、コミュニティ全体の参加者は増えるかもしれません。また、コロナ禍の影響で、より人とのつながりのニーズが増えたと思うので、今まで以上にコミュニティの価値や存在感が増していくのではないでしょうか。

ーー先ほど紹介された書籍を出版されるなど、「”マジカチ"meetup!」の勢いも増していきますね。

そうですね。タイトルからはそれほどコミュニティ要素は感じないかもしれませんが、かなりのボリュームでコミュニティリーダー視点から「”マジカチ"meetup!」について書かれています。

コミュニティリーダーになった経緯や、コミュニティに参加して得たこと、これまでのmeetup企画の経緯や裏側など、会計業界の方でなくとも、マーケターやコミュニティづくりに興味のある方であれば必ず何か参考にしていただける内容かと思うので、コミュニティに興味を持たれている方には、ぜひ手に取っていただきたいです。

ーーありがとうございました。
 
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