マーケティング 2019.07.12 一石二鳥でみんながハッピーになる施策を!|ABEJA 永淵恭子氏


株式会社ABEJA 永淵恭子さん

〈Bigbeat LIVE 登壇者インタビュー⑩〉
BtoBマーケターの中には、「社会人スタートはマーケティングではなかったけれど、マーケティング担当となってマーケティングに挑戦し続けている」という方がいます。株式会社ABEJA(以下、ABEJA)の永淵恭子さんもその1人。

「ぎょり」のニックネームで親しまれ、今は主にマーケティングを担当されていますが、実は新卒で入社したIT企業では営業職だったそうです。そんな永淵さんが、どのような経緯でマーケターとなり、どのような実績を残してきたのか。そして、マーケターとして大切にしている価値観や心がけていることについてお伺いしました。
(聞き手:ビッグビート マーケティングチーム ディレクター 野北瑞貴)

 

「営業とマーケ掛け持ち」から「マーケティング専任」に



——ぎょりさんのバックグラウンド、現在どのようなことに関心があるのかをお話しいただけますか。

永淵さん(以下、ぎょりさん)
はい。前職は株式会社サーバーワークスでした。新卒で入社して営業を5年やって、その後マーケティング専任として1年間サーバーワークスで業務をこなし、その後ABEJAに入社しました。

——当初はマーケティングではなく、営業職を希望していたのですか?

ぎょりさん
そうなんです。最初からお話しすると、学生時代は情報系の専攻だったので、プログラミングも勉強したんです。でも当時、エンジニアとして活躍するには、「朝から晩までずーっとコードを書ける、圧倒的なスキルを持った人でないとダメなのだろう。自分にその力はない」と思い込んでいたんですよ。だとすると、無理だなぁって。
で、人と話すことが好きでしたし、将来の人脈を広げたいという思いもあって、営業職を希望しました。

——IT業界で就職することは決めていたのですか。

ぎょりさん
はい。でも学生時代に真面目に就職活動していなくて、ダメ学生だったんですよ。サーバーワークスも、「新卒募集 50人以下 朝遅め、IT 新卒営業」でググったら、一番上に出てきたので、面接を受けることにしたんです(笑)。

——なんと……! SEO就活だ(笑)。そして営業職から、なぜマーケティングに?

ぎょりさん
営業職を5年やりましたが、実はその間、社内にマーケティング担当がいなかったんですよ。でも、イベント出展やWeb制作、販促活動など、マーケティングに付随するような業務を誰かがやらないといけなかったので、そういうものを担当していました。サーバーワークスは、もともとはシステムインテグレーターでしたが、ちょうど私が入社する数年前ごろにAWS(Amazon Web Services)を中心にしたクラウドベースのシステム開発を手がけるようになって、クラウドインテグレーターとしてAWS関連のイベントやセミナーに協賛する形で参加することが多かったんです。

そのうち会社も大きくなって、入社した時の倍以上の人数になり、本当に仕事が忙しくなりました。営業とちょっとしたマーケティングの端くれのような業務の両方を掛け持ちすることも難しくなりましたし、私も中途半端にやるのは嫌だったので、「営業に集中するためにマーケティング担当者を入れるか、そうでなければ私をマーケティング専任にしてください」と社長に直談判したんです。そうしたら「じゃあ、永淵はマーケティング専任で」「あ、オッケーです」という流れになりまして。

——まさにスピード人事ですね。

 

単発で成果を出すことで、他部門からの協力を仰ぐ



——実際、マーケティング専任になってから業務内容は変わりましたか?

ぎょりさん
細かいアクションでいえば、マーケティングプランの策定や戦略の立案、Webサイトの刷新、ブランディングの刷新、
プレスの作成・配信、Web広告、イベントの出展や自社セミナーの開催、ナーチャリング体制を作ったり、本当にいろいろやりました。

——営業職と兼任していた頃と比べ、業務内容や仕事への取り組み方などに変化はありましたか。

ぎょりさん
楽しんでいた部分と……、あと「勢い」もあったと思います。当時はレポートラインの役員が上にいるだけで、実質1人でのマーケティングだったので、勢いでアイディアを出して、すぐ自分で動ける体制でした。

でも、もともと飽きっぽいので、成果が出ている施策があっても途中で飽きちゃって。「これ成果出ているんだよ、やりたくなーい?」と他事業部に持ちかけ、施策が回るようにして引き継いでもらったりしました。マーケティングって、中長期で考えないといけない部分もあるのですが、あまりほめられた話ではないですよね(笑)。

——成果があった施策とは?

ぎょりさん
当時、サーバーワークスのユーザーさんはとても多かったのですが、そのユーザーさんに対して定期的にプロアクティブなサポートをする仕組みがありませんでした。もともと、AWS絡みではなく、自社単独でセミナーやイベントをやることもなかったので、既存ユーザーさん限定でアップデート情報を定期的に伝えていくセミナーを企画したんです。これがかなり好評で、その成果は様々な形で部門に還元されました。これ、実はいまでも続いている施策なんですよ。

——営業部門ともうまく連携しながら進めていったんですね。

ぎょりさん
そうですね、マーケと営業の分断といったものもなく、仲も良かったですし。「なんか好き勝手にやっているなー」と思われていたかもしれませんけど(笑)。

そんな感じでいろいろやりましたが、やはり単発で目に見える成果がある施策だったので、営業の方もわかりやすかったと思います。もちろん、じっくり育てていく戦略も必要ですが、営業部門などが関わる場合、成果が早く見えやすい施策だと、協力体制も組みやすいかもしれませんね。

 

ABEJAではプロダクトマーケティングという新たなチャレンジに奮闘中



——その後、現在のABEJAに転職した理由を教えてください。


ぎょりさん
私、サーバーワークスの面接で「3年で辞めます」と宣言していたんですが、会社や仕事が楽しかったので、ずっと辞められなかったんです。でも会社が成長して古株のような立場になり、ヤバいと思うことが増えたんですよ。どういうことかといえば、私が何か提案したり相談したりすると、「ぎょりさんがそう思うんなら、いいよ。やりなよ」と、みんなが常にアグリーしてくれる状態になっちゃったんです。

誰も私を叱らない。気が強いから誰も何も言えなかったのかもしれませんが(笑)、それって会社にとっても、そして私にとっても良くない環境だな、と感じたんです。

——そこで現在のABEJAに転職したんですね。ちなみに、その時の検索ワードは?

ぎょりさん
クラウド分野はかなりやってきたので、新しい違うテクノロジーを主に扱っている企業に行きたいなと思いまして「AI ブロックチェーン VR 中途採用」で検索しました(笑)。その中で、AIが一番可能性がありましたし、同時に「どう成長するかわからない」という部分も面白かったので、AIに絞って転職活動をしたんです。その中からABEJAを選びました。

——決め手になったことは?

ぎょりさん
ちょうどABEJA Platformをリリースするというタイミングで、「一緒にやりましょう」と声をかけていただいたんです。私も、サービスや事業ではなく、プロダクトのマーケティングというのは初めての経験になるので、ぜひ挑戦したいという思いがありました。

ただ、実はもう1つ別の大手企業からもお話をいただいていて、どちらに行くかすごく悩んだんです。そこで、サーバーワークス社長の大石さんに「どっちに行ったほうがいいと思います?」って相談したんです。

——えええっ!

ぎょりさん
いま思えば大胆ですよね。でも大石さんはすごく親身になってくれて、「大手企業であれば、これから先、女性社員や管理職の割合を増やす動きが加速するから、むしろこれから先、いつでも入社できる可能性がある。出産や育児を考えた時、保障がしっかりしている大企業に転職するという手もある。でもチャレンジできるうちは、どうなるかわからないけれど伸び盛りで、いまのタイミングでないと入れない会社に入る方がいい。そっちの方が絶対に面白いから」と背中を押してくれたんです。

転職し、まさに今、大石さんのアドバイスを実感しています。私がABEJAに入社したのは2017年9月ですが、まだ1年半にも関わらず、すごく変化していますし。大石さんには本当に感謝しかありません。

——チャレンジできるうちは、可能性がある方でチャレンジする。いいですね。ABEJAさんではどのような仕事を?

ぎょりさん
正直なところ、イベント系の業務が非常に多く、これまでプロダクトマーケティングの実質的なことはあまりできていませんでした。ABEJA Platformのパートナーづくりやサイト制作などについては話し合っていますが、具体的な業務はこれからですね。

今は……そうですね、チャネルも見ますし、市場調査もやります。実際のお客様にもお話を伺い、導入後はフィードバックをいただくこともやっています。

カスタマーサクセスについても、いま仕掛けを考えています。うちは大きく分けると、ABEJA Platformのほかに、小売業向けのソリューションがあるのですが、ターゲットとしているユーザーが異なるので、ストーリーも全然違ってくるんです。汎用化できるサクセスのノウハウは既存の物を共有しつつ、ABEJA Platform独自のストーリーに必要な要素を洗い出し中です。楽しみにお待ちください(笑)。

 

大事にしていることは「使う人の身になって考えること」と「一石二鳥」



——ぎょりさんが、マーケターとして活動する中で、得意としていることは何でしょうか。また、どういうことを大事にして仕事をしていますか。

ぎょりさん
難しいですが、1つ言えるのは、アクションを考える時に、一石二鳥になるような施策を考えることでしょうか。ただの面倒くさがりかもしれませんが、1つのことに1つで対応するのではなく、1つのアクションで、いろんな部分に利があるような施策を考えます。常に一石二鳥を模索しているんですよね。残念なのは、それを論理的に人に伝えられないこと(笑)。これが課題ですね。

もう1つの質問ですが、大切にしていることは本当にたくさんあるんです。たとえば「マーケターとしての周囲と関わり方」という観点でいえば、製品を自分で触ってみることですね。

マーケティングにしても、カスタマーサクセスにしても、自社が売るものを理解していないと、半端な言葉になってしまいます。だからエンジニアに聞いて、自分でその製品を実際に動かしてみる。エンジニアと話しやすくなるポイント作りにもなりますし、営業にも「こういうところがいいよ」と伝えられたりしますし。「こうした方がいいかも」と提案することもあるのですが、「うん、まあ、ぎょりさんの意見だからね」で終わることもあります(笑)。



——使う人の気持ちになってみる、ということですね。今後のチャレンジと、Bigbeat LIVE参加者の方へのメッセージをお願いします。

ぎょりさん
自分自身のチャレンジとしては、まず説明力を身に付け、再現性をつくることです(笑)。あとは新事業拡大を図るメンバーの後押しを着実にできるように、市場調査を続けたり、コンタクト先を訪問したりと、裏でできることはどんどんやっていくつもりです。ABEJAはすごくユニークな、というよりカオスな会社で、予想外の斜め上なアイディアを出し、突進していく社員が多いんです。

参加者の方へのメッセージですが、私、マーケターの方はもっともっと外に出てきていただきたいんですよ。たとえばエンジニアであれば、普段の生活の中で「実は僕、エンジニアなんだよね」という感じで出会うことが多いのですが、マーケターの方と偶然出会う確率ってすごく低いんです。みなさん、あまり表に出ないのかもしれませんし、私が会える場所に行けていないのかもしれない。

私は前職でいきなりマーケティング担当になった時、外部のマーケターの方を訪ねて、マーケティングのイロハを教えていただいたので、すごく感謝していますし、悩んでいることやつまづいている部分って、意外と共通しているところが多いんです。外からいろんな情報を吸収するのは楽しいですし、役に立つことも多いので、ぜひBigbeat LIVEでお会いしましょう!

——ありがとうございました! 当日は、記事には書けない、いろんな裏話が聞けそうですので、皆さんぜひ楽しみにしていてください。




[撮影]野村昌弘
[執筆]岩崎史絵




 
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