マーケティング 2019.06.04 〈マーケティングトレース実践〉生・おきゃくvol.8レポート
生・おきゃく初の2Days&ワークショップ形式での開催となった「生・おきゃく vol.8 マーケティングトレース」。(4月23日(火)と5月8日(水)の2Daysで開催)
ゲストはマーケターの筋トレコミュニティ「マーケティングトレース」主宰の黒澤友貴さんです。
最初に黒澤さんがマーケターに必要な視点や思考についてのミニセッションを行い、そのあとは参加者が実際にマーケティングトレースを実践するワークショップを行いました。
●黒澤さんプロフィール
note
●参考記事
マーケティングトレース(マーケターにとっての筋トレ)とは何かについて
黒澤友貴さん×ビッグビート野北の「マーケティングトレース」対談
参加者の約9割が「実はマーケティングトレースを知らなかった」
黒澤さんが自身のマーケティングスキルアップのために考案した「マーケティングトレース」。現在はSNSやnote、各種イベント出演を通じてマーケティングトレースの普及に努めていらっしゃいます。イベント開始前、黒澤さんが参加者に「イベントを知る前にマーケティングトレースを知っていた方は手を挙げてください」と呼びかけると、意外なことに手を挙げたのは参加者8名のうち1名のみ。つまりマーケティングトレースを全く知らなかったにもかかわらず、「これはマーケティングに役立ちそう!」と直感し情報を集め、行動に移したということです。
高いアンテナと行動力を持つ参加者が揃い、いよいよ生・おきゃくがスタートしました。
マーケターに必要な「本質的なマーケティング思考」とは
はじめに、黒澤さんが自己紹介として経歴や実績などをお話されしながら、自身のキャリアから得た経験をもとにマーケティングにおける重要なポイントについて紹介いただきました。
「マーケティングはチャネル最適化やコンバージョンの話になりがちですが、マーケターがリスティング広告やSEOの知識をつけましょう、などのミクロな施策の話をしていても抜本的な改善にはなりません。大事なことは、本質的なマーケティング思考を取り入れていくことです」
本質的なマーケティング思考とは何でしょうか。それは経営者の思考や考え方だと黒澤さんは言います。
「マーケターには、市場を創造するなどのダイナミックな視点が必要。どうやって市場を捉えていくのか、それに対してどうやって市場を動かしていくのか。“観察眼を鍛える”ことが必要だと感じています」
黒澤さんはどうやってマーケターの観察眼を鍛えればいいのか、良い方法はないものかと考えるうちにマーケティングトレースという独自の手法に行き着きます。
営業や管理者にはMBA、マーケターには?
「マーケターって抽象的な職種ですよね。営業やマネジメント力をあげる方法としてMBAなどがありますが、マーケティングの能力をあげる方法というと、実はこれというものがありません。マーケターとして必要な能力を上げたい、マーケター同士が互いの思考などを共有しあえたら…という想いから『マーケティングトレース』を始めました」と黒澤さん。
そこには、自分を含めマーケターが経営レイヤーに近づき、マーケターとして本質的な仕事ができる人を増やしたいという熱い想いもあったそう。
続いてマーケターがより上流の、つまり経営のレイヤーに関わっていくためにはどういう仕事をしていけばいいのか、ということについてさらに具体的に解説し、参加者が深く頷く姿も多くみられました。
マーケターのキャリア形成とマーケティングトレース
黒澤さんはある本を引用し、マーケターのキャリアには6つの段階があると紹介します。
マーケティングキャリアの6段階
ステージ1:マーケティング業務の見習い
ステージ2:特定業務の担当者(ワーカー)
ステージ3:特定領域の専門家(スペシャリスト)
ステージ4:マーケティング施策の統合者(ブランドマネジャー)
ステージ5:ブランド・マーケティング全体の責任者(CMO)
ステージ6:マーケティングに強い経営者(CEO)
先のスキルアップの話と同様に、いざ経営レイヤーにいったときに力を発揮できるようなキャリアの作り方で体系化されたものがないと感じていた黒澤さん。例えば、チャネル最適化を担っている人がより経営レイヤーに近づくことができるようなキャリア形成メソッドです。
実はそのメソッドとしても活用できるのがマーケティングトレース。自分がどの段階であったとしても経営者視点でマーケティング施策を組み立てるため、繰り返しトレーニングすることで自然と経営者視点・思考が身に付き、結果どのステージにいても全体を捉えながらやるべきことが見えてくるようになるのです。
マーケティングトレースで磨く2つの思考
黒澤さんは、マーケターに必要な思考をマーケティングトレースで身につけようと呼びかけます。ここではその2つの思考をご紹介しますが、詳細はぜひ黒澤さんのセミナーへ参加したり、noteに登録したりして情報を収集してください。1. 三方よし思考
〈ポイント〉
市場の構造、組織の構造、顧客の構造、この3つをバランスよく読み解く。
2. 一気通貫思考
〈ポイント〉
戦略・戦術・実行のフェーズのうち、普段の仕事の中では実行フェーズにリソースが偏りがち。この3つのフェーズがどうつながっているのか考える視点を持つようにする。
成功している企業はこの2つの思考を体現していると言えます。マーケティングトレースを行う際、なぜこの企業は成功しているのか3つの視点から読み解き成功要因の背景を探ること、そしてフェーズ全体を見る視点をもつことが重要です。これにより「日々の仕事でも、その背景にあるものを考える思考を身につけられるようになるでしょう」と黒澤さんは語りました。
マーケティングトレースの基本フレームワーク
黒澤さんが初めてマーケティングトレースを行う参加者のために、トレースを行う際のインプット~情報編集テクニック~アウトプットまで一連の流れをまとめたスライドやExcelファイルを参加者に共有しました。
「フレームワークに捉われる必要はありませんが、これらをつかって読み取る・分析するスキルと考え方を身につけましょう」(黒澤さん)
マーケティングトレースを行う際のポイントは、大きく分けて以下の通りです。
① テーマ企業の設定~概要の把握・分析
② 企業の市場背景(環境)の把握・分析
③ 具体的な戦術・施策の分析
④ なぜそのマーケティング戦略を実現できたのかを分析
⑤ 成功要因の言語化
⑥ 自分がCMOだったら…という視点で戦略仮説をたてる
さらに参加者の皆さんがマーケティングトレースをイメージしやすいようトレース事例を紹介するなど、惜しげもなくデータを提供し、テクニックやポイントを赤裸々に語る黒澤さんの姿勢には「マーケターの力になりたい」という想いが溢れていました。
※黒澤さんのトレース事例はSNSやnote、有料noteなどにも100パターンほどアップされているとのこと!
いざ、マーケティングトレースを実践!
マーケティングトレースとは何か、トレースのポイントなどを理解したところでワークショップがスタート!
参加者は自分が決めたテーマ企業のトレースに入ります。
約30分のトレースを終え、あらかじめ数名ごとに分けたグループ内で現時点での分析・仮説を共有する時間に入ります。そこでは参加者同士が積極的に意見を交わしあう姿が見られました。
ミニセッションからワークショップと濃密な2時間を過ごしDay1は終了。
Day2までの約2週間をつかって各自仕上げていきますが、この期間は黒澤さんが「オンラインでフォローします」という贅沢さ!
互いの発表に期待感を抱きつつ、次回はいよいよトレース結果の発表です。
トレース結果のアウトプット
長いゴールデンウィークが明け、休日の余韻が残る5月8日に再び参加者が集合!
この日は、各々まとめたマーケティングトレース結果をアウトプットします。
参加者たちの初めてとは思えないマーケティングトレースに黒澤さんも感心しきり。
ところどころに入る黒澤さんのアドバイスや、他の参加者の意見を受けて、全員のトレース結果発表が終わるころには、みなさんマーケティングトレースのコツをしっかり掴んだ様子でした。
発表を終えると、プレッシャーからの解放か(?)笑い声があがる和やかな雰囲気に。
マーケティングに携わる者同士が共に学び、意見を交換し合ううちに、そこにはいつしか会社や世代を超えた一体感が生まれていました。
そのままネットワーキングパーティーへ!
本来、セッションを終えた後はネットワーキングパーティー(通称・おきゃく)へと移るのですが、なんと今回はワークショップを継続する形で「おきゃく」に突入!参加者たちがお酒を片手に、生・おきゃく名物の「鰹のたたき」(ビッグビート代表・濱口の出身地である高知より直送)を堪能し、パソコンに向かってディスカッションする風景にビッグビート社員も驚き興奮!
美味しいお酒とフードも手伝って、マーケティングトレース談義は大盛り上がり。
あっという間に終了時間を迎え、名残惜しい気もちを残して今回の生・おきゃく「マーケティングトレース」は幕を閉じました。
ここまで読まれた方は、マーケティングトレースをやってみたくなってウズウズしているのではないでしょうか?
黒澤さんも仰るように、フレームワークに捉われる必要はありません。成功企業を分析し、自身がCMOになったつもりで施策を練り、それを繰り返していくことで新しい気づきがきっとあるでしょう。
「時間はないけど興味はある」という方は、マーケティングトレースのコミュニティに参加することから始めてみるのもおすすめです!