マーケティング 2019.03.12 変化の時代、「選ばれる」企業になるために必要なこと|イマジナ 関野吉記氏(前編)
「ブランディングは大事」ということは何となく理解していても、具体的なブランディング戦略を立案したり、ブランディングに向けて積極的な投資を続けたりする企業はまだ少ないのが現状です。
なぜ企業はブランディングができないのか、ビジネス環境の変化が激しいこの時代、ブランディングができない企業はこれからどうなっていくのか——株式会社イマジナ 代表取締役社長 関野吉記氏と、ビッグビート 代表取締役 濱口豊が語り合いました。(取材・執筆 岩﨑史絵)
ブランディングができていないといい人材が集まらない
濱口:関野さんとは、約2年前、Bigbeat LIVE(2017年開催)への出演依頼をした際に初めてお会いしたんですよね。関野:そんなになりますかね。あっという間ですね。
濱口:そうなんですよ。2年も経つと、ビジネス環境もかなり変わります。
そこで今回は、関野さんご専門のブランディングと、そして私たちがテーマとしているマーケティングの観点から、この2年の変化について語り合いたいと思ったのです。
関野:かなり広いテーマですね(笑)。どこから始めましょうか。
濱口:たとえば経営観点でいえば、昨今「働き方改革」がいろいろな業界で話題となっています。働き方を変えるということは、これまでの経営と違うやり方でビジネスを成長させないといけません。
そこで「マーケティングで経営を変えることができるのでは」という思いから、2017年と2018年にBigbeat LIVEというマーケティングイベントを開催しました。
働き方改革とマーケティングは、一見すると異なるテーマかもしれません。しかし「変化のスピードが加速している」と考えると、この変化の流れのなかで「働き方」という課題が出てきて、その課題を解決するためにこれまでと違う経営のやり方を考えていく、すなわち「マーケティングで経営を変える」というアプローチもあり得るのでは、と思うんです。
このような形で、いまビジネス環境が変化するなか、ブランディングの役割や意義はどんな変化があるのか、関野さん自身でお感じになっていることがありますか。
関野:そうですね、働くという観点でいえば、この2年間で企業の採用活動はさらに苦戦していると思います。
きちんと自社のブランド価値を出していかなければ、たとえ東証一部企業といえど、いい学生が集まりにくくなっている。BtoC企業だけでなく、BtoB企業も自社のブランド価値をしっかり伝えないと、誰にも気付かれないということもあります。
当社では採用イベントを開催しているのですが、人事担当者だけでなく、必ず経営者にも参加してもらっています。
経営者が自社についてを学生に説明した時、「面白いね」と言わしめるようなコンテンツがないと選ばれないという事実に気付いてもらうんです。だいたい、経営者の話は概念的で難しすぎる傾向があります。ブランディングの前に、まずはそこに気付いていただかないと(笑)。
濱口:気をつけます(笑)!
企業の理念や価値を伝えることは難しいのですが、それを伝えることがブランディングですよね。そう考えると採用活動は究極のブランディングかもしれません。
100年続く伝統企業でも、なかなかブランディングできない理由
濱口:ただ、「理念を伝える」と一口に言っても、そう簡単なことではないですよね。
実は私、昨年ある経営塾に参加し、100年近い歴史を持つ企業の経営者の方々とお話しする機会があったのです。
ところが、そうした企業の経営者の多くが、自社の価値を外に出していくことにあまり気付いていませんでした。それだけの歴史があれば、いくらでもストーリーがあると思うのですが、実際にはなかなか難しいし、外に自社のブランド価値を出していくという発想もあまりない。
これって、どういう理由なんでしょう?
関野:理由の1つとして、その意識がないのでしょうね。意識がない方に、いきなり「ブランディング」といっても理解していただけないでしょう。
当社のクライアント企業でいえば、やはり「マーケティング」が先にあって、きちんとファンを持っています。
市場のニーズから見込み顧客を見つけ、ファンとして育てていくという作業を経て、初めて「ブランディングをやりたい」という気持ちにならないと。
濱口:ブランディング意識のない企業は、いまでも多いのですか。
関野:いいえ、そこは変化していますね。
地方の企業経営者も、「時代の流れが速くなっていて、これまでと同じことをやっていてはダメ」という意識を持つ方が増えています。従業員からしても、未来のない企業で働きたくありませんよね。
そこで、どのように社会貢献をして、やりがいのある仕事をどう作っていくのか、その価値をどのように伝えていくのか、経営者がこれまで以上に考える時代になっていますね。
先ほどの繰り返しになりますが、経営者自身がこうした変化に気付いているかどうかが肝心です。何十年何百年事業を続けていても、結局は、時代の変化に気付いてマーケティングやブランディングの意識を持たないと、なかなか変えられないんですよ。
選ばれる企業になるために
<濱口:100年も事業を続けていれば、それこそ価値を伝えるストーリーや物語はたくさんあると思うんです。で、もったいないなと。中食産業などは、少なくとも「食で社会に貢献する」と事業が目に見えるので、広告会社よりも価値を伝えやすい気がするんですよね。
関野:「ビジネスモデルとしてわかりやすいこと」と「わかりやすく価値を伝えられる」ということは、実はまったく違うんです。広告会社の場合、「そういうもやもやとした理念や価値といったものを、誰にでもわかりやすい表現で伝える」と、価値が明確なんですよ。
対して、惣菜や弁当を提供している中食産業は、自社の特徴や差別化価値を伝えにくいビジネスです。「身近な存在でありたい」などのキャッチフレーズがあっても、「だから?」となってしまう。
そもそも作業自体、ほとんどの企業では全部機械のオペレーションでマニュアル化されています。となると、あとはもう価格で勝負するしかなくなりますよね。
従業員からすると、全部機械任せなので、スキルも身に付かなければキャリアも積めない状態です。だとすると、給与額や待遇でしか選べないんです。人件費が高騰すると価格が上がるので、安い労働力に頼るのならば、海外の人材を入れるしかありません。これまでは、そういう状態でした。
しかし、今年の春以降、海外から労働力となる人材の受け入れが始まります。人手不足ですから、労働力の確保はどの企業も重要課題です。なので、自社の仕事のやりがいを高め、その価値を未来視点で伝えていかないとこれからの企業を支える労働力を海外人材に頼るということはできなくなるでしょうね。
濱口:海外の労働者も、せっかく働くのであれば、未来のある企業や国で働きたいはずですよね。
関野:だから働き方改革を含め、ブランディング、マーケティングなどにきちんと投資をしていかないと、もはや企業は生き残れないんですよ。そういう時代になっています。
濱口:これから未来に向かって企業はさらなる変化の波にさらされることになるんですよね。
そこでブランディングやマーケティングは何ができるのか、もう少し掘り下げて考えたいと思います。実は私も自社内のインナーブランディングに取り組んでいることがあるので、そのあたりの話も交えたいと思います。
(後編に続く)
今回対談いただいた、株式会社イマジナ 代表取締役社長 関野吉記氏をお招きし、
〈ブランディング×マーケティング〉をテーマにしたコミュニティイベントを開催します。
ブランディングの理解とヒントをつかむ貴重な機会。ぜひご参加ください!
『生・おきゃく』Vol.7
〈ブランディング×マーケティング〉3/25(月)開催!
様々なジャンルのトップランナーを招聘し、対談、セミナー、鼎談などを実施している、
マーケターのためのオフラインイベント「生・おきゃく」。
今回は、株式会社イマジナ 代表取締役社長 関野吉記氏をお招きし、
マーケティングとブランディングの親和性など、事例を交えながらお話いただく予定です。
【概要】
日時:2019年3月25日(月) 19:00~22:00(受付18:30~/懇親会含む)
場所:ビッグビート プレイスタジオ
(千代田区紀尾井町4-1 ニューオータニガーデンコート22F)
費用:2000円
定員:20名 ※先着順
主催:株式会社ビッグビート
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