マーケティング 2018.08.31 Bigbeat LIVEレポートVol.4- 第一線で活躍するマーケターたちのホンネQ&A



Bigbeat LIVEの3rd Session「ライフとビジネスを“分けない”マーケターの挑戦」についてお届けしている本レポート。後編では、全力でマーケティングを楽しむ登壇者3人の頭の中をもっとよく知るために、ホストの小島さんが軽快に切り込んだパネルセッションの模様をお届けします。
(取材・執筆:野本纏花)
 

“好き”の気持ちを原動力に

小島氏:みなさん本当に楽しそうですよね。3人のバックグラウンドや、どうやってマーケティングに取り組まれているのかおかわりいただいたと思うので、ここからはパネルセッションということで、僕からいくつか質問を用意してきましたので、◯×で答えてください。まずは「マーケティングはお好きですか?」



小島氏:みなさん◯で良かったです(笑)とはいえ、もしマーケターでなければ何になっていましたか?

青山氏:鞄職人の父の仕事を継ぐ、とか友人と同じく写真家になるといった感じで、もっと身近なものに飛び込んでいたと思います。僕が就活していた2006年頃って、インターネットでモノが売れ始めた時代で、タイミングが良かったんですよね。そうでなければマーケティングには行っていなかったと思います。

小島氏:インターネットでモノが売れることにフィーチャーすると、AmazonのようなEC事業者に入ろうというのがストレートな気がするのですが、マーケティングにフラグが立ったのは、何がキーだったのですか?

青山氏:自分が好きだとか自分がいいなと思うものが、もっと世の中に広がってほしいと思っていたので、いろいろ調べるとそれがマーケティングだったんですよね。

小島氏:なるほど。同意者や賛同者を得るのがもともと好きだったということですね。僕の周りにもオススメ上手のマーケターが多いので、よくわかります。BMXチャンピオンとしては、どうですか?

植山氏:やっぱり20代の頃は、BMXライダーとしてやって行きたいと思っていたんですよ。BMX命でした。でもBMXの大会を通じて、自分のミッション、つまり命の使い方を見つけたんですね。国内のBMXの大会に出ると、当時は1位か2位になるのが当たり前だったので順位は結構どうでもよくて、毎回自分で「今日はこの技を決めよう!」とテーマを決めていたんです。それを達成すると、一瞬で会場が大歓声に包まれるわけです。その状況を客観的に見たときに、「自転車を降りても、多くの人たちに笑顔と勇気を与えたいなぁ」と思ったんですよね。そんなことも思いながら、自転車周りのビジネスをいくつか立ち上げたのですね。その中の1つが自転車の輸入販売代理業のビジネスを立ち上げてみると、自分が動かなくてもお金が入ってくる仕組みができていく過程が面白かったんです。



小島氏:大事なところですよね。マーケターと営業の決定的な違いって、“自分の時間とスケールをどう切り離すか”ですから。1対1で相対してディールをクローズするのも大事なスキルなんですけど、マーケターは1対多をどう仕組み化するか。その大事さに気がついたんですね。

植山氏:インターネットを使うと1対Millionができるので、その仕組みを作るのが大好きです。

小島氏:鈴木さんはマーケティングに“出会った”系ですか?先にサイボウズが好きっていうところから始まって、サイボウズのファンとして、それを広めたいというところからスタートされているんですもんね。

鈴木氏:そうですね。「サイボウズが好き」というのが先にあって、それが仕事だったら、何でもいいやと。

小島氏:僕はパラレルでいろいろなお仕事をさせてもらっていますが、1つ決めているのは、好きなサービスや組織に入ることです。そうでないと本気度が上がらない。正確に言うと、コーチくらいはできるかもしれないけど、追い込まれたときに“俺が絶対になんとかしてやる”と思えない。好きなサービスや組織じゃなければ100%のパフォーマンスが出ないんですよね。好きっていうのはマーケティングにとって大事な原動力ですし、逆に好きという気持ちがなければ、なかなか続けられないと思います。
 

組織カルチャーの変革は採用から

小島氏:では次の質問です。「今の会社はベストですか?」…こちらも、みなさん◯ということで。鈴木さんはサイボウズラブなんですもんね。

鈴木氏:そうですね。でも青野(サイボウズ社長)に孫ができたら、また変わるかもしれませんし、他にも知らない素敵な会社があるかもしれないなとは思います。

小島氏:同じ会社でも変化を楽しむと。

鈴木氏:楽しみつつ、嫌になったらやめる、でいいかなと思っています。



小島氏:青山さんはFull Stack Marketerを目指すということで、どんどんキャリアアップしたいという思考ですか?

青山氏:そうですね。今、自分が実現したい世界に辿り着くまで、まだまだ距離があるなと思っているので、それが達成できてから考えるつもりです。

小島氏:今50歳手前の僕でさえ、あと20年は働かなければいけないわけですから、20年間ずっと同じところにいるって、考えられないんですよね。自分が飽きるとかではなく、20年間もそのビジネスが伸び続けるという状況がピンと来ないんですよ。ステージを変えるのは当たり前のことだと思います。植山さんはDropboxラブですか?

植山氏:もう楽しくてしょうがないです。僕がDropboxを大好きな理由が3つあって、まずは日本だけを見てきたのがアジアに広がったことです。BMXでいうと、「これまでずっと日本の大会に出てきたけど、これからは海外の大会にも出てやるぜ」と。

小島氏:そこで痛い目を見ても、面白い経験になりますよね。

植山氏:そう。痛い目を見ているときはつらいんだけど、「これで成長するんじゃないの?」と言い聞かせます。…楽じゃないけど。

小島氏:楽じゃないけど、つらくない。すごく大事な表現だと思います。つらいっていうと言霊で本当につらくなっちゃうので、僕も苦しいとかつらいって言葉が出そうになると、口を押さえるようにしています。

植山氏:それにDropboxはデータ環境が素晴らしいんです。データウェアハウスにアクセスしてSQLを書けば、個人情報以外のあらゆるデータを取って来れるので、それを分析して、プレゼンして、話を通すことができる。僕はデータが大好きなので、楽しすぎます!データで話をするアナリティカルな文化が合っていると思いますね。

もうひとつ、Dropboxの人はみんな良い人で、みんなが“What can I help you?”“What can I do for you?”と言って助けてくれるんです。僕が入社したときに、「お前の成功が俺たちの成功だから、オープンになってくれ。そうしたら何をしてやれるか、わかるから」と上司から言われたんですね。そういう文化が大好きです。

小島氏:僕が前にいたAmazonは、どこを切ってもベソスの血が流れているんですね。組織のカルチャーは、ほぼ採用にかかっています。カルチャーが早めにできていると、それにフィットした人を採用して、カルチャーに沿って育てられるので、カルチャーが強くなる。なかなか人の入れ替えは難しいけれど、組織のカルチャーを変えたいのであれば、採用に目を向けるのは大事ですよね。
 

ライフとビジネスを分けられるほど人間は器用じゃない

小島氏:「ライフとビジネスの成長を両立させるのは難しいですか?」難しいと思ったら◯、できると思ったら×でお願いします。……植山さん×、青山さん○、鈴木さんが◯なのは意外ですね。

鈴木氏:私、ライフがないんですよ。

小島氏:あぁ…ごめんなさい。質問する人を間違えちゃった(笑)青山さんも難しいと思いますか?



青山氏:今はビジネスとライフが合っているからいいんですけど、時間が限られている中で、例えばここから写真にも本腰を入れていくとしたら、と考えると、配分が難しいかなと。成果を出せなければ、悠長なことは言っていられませんからね。それに今は独身ですが、この先結婚したら難しくなるだろうな、というのもあります。

小島氏:家庭内稟議は大変ですからね。植山さんはどうやって通しているのですか?

植山氏:嫁もベンチャー企業にいたので、理解はあります。数字が上がるという条件さえクリアできれば。

小島氏:世帯収入という共通の指標が、ちゃんとあるんですね。

植山氏:何年か前に人生の優先順位を決めたんですよ。1番は家族、2番は自分、3番は世の中に対して価値を提供すること、4番が自分のスキルを高めること。

小島氏:仕事と家庭を分けて優先順位をつけるのではなく、人生の優先順位の中に両方がちりばめられている感じですよね。

植山氏:そうです。体は1つなので。

小島氏:僕もこれはとても賛成です。両立は難しい局面もあるけれど、仕事とプライベートを分けて軸を作ると、2つの軸の間で板挟みになるんですよね。人ってそんなに器用じゃないので、自分の軸は1本の方がシンプルです。もしくは鈴木さんみたいに“仕事が生活です”みたいな、ライフをなくすというハックをするか…あまりオススメはしませんけど(笑)

鈴木氏:私が勝手にそうなだけで、サイボウズとしては両立できているんですよ。そこだけは誤解のないように。

小島氏:鈴木さんはライフ軸に何かないんですか?

鈴木氏:うーん…40歳までに、あと3年しかないんで。(※「40歳で死ぬと思って生きている」とのこと)

小島氏:ライフやっている場合じゃないと(笑)まぁ何にせよ、軸をシンプルにするのは大切ですね。パラメーターは少ない方が、人生は豊かになります。
 

“社内≠常識”井の中の蛙にならないために

小島氏:「『外のモノサシ』を持つ工夫をしていますか?」(※外のモノサシ=自分を客観視、世界を俯瞰するための外部の視点)

鈴木氏:サイボウズのお給料の決め方が、“私を中途で採用したらいくらか”という感じなんですよ。「今年、何をしました」じゃなくて、「あなたは今どのくらいの市場価値ですか」で見られるので、毎年の給与査定が外のモノサシで返ってきます。

小島氏:会社として外のモノサシに触れる方法があるというのは、すごくいいですね。青山さんはマーケターの集まりに参加されたりしますか?

青山氏:そうですね。なるべく身銭を切るというのが、本当に大事だと思います。そうすると時間の濃度が全然変わりますから。あとは、勇気を出して外に発信していくことですね。合っているかどうかはわからないけれど、自分のトライ&エラーをまず出して、世の中に評価してもらうことはやっているつもりです。



小島氏:非常に優等生的で、みなさんもフォローしやすいやり方ですね。それでは、ありえない男、植山さんにも聞いてみましょう。

植山氏:あらゆるチャレンジをしていますね。自分の生活をRPGに置き換えているような感じで、くだらないことでも定量化すると、面白いネタになるんですよ。

小島氏:それって、自分を俯瞰して見ているってことですよね。外のモノサシを使わずに自分を客観視できるのは特殊能力ですよ。

植山氏:外のモノサシとしては、メンターを持つようにしています。本当にいいアドバイスをいっぱいもらえるので。仕事のメンターは僕の上司の上司ですね。人生のメンターも2人ほどいます。

小島氏:メンタリング制度はいい仕組みなので、まだ導入されていない企業の方はぜひやってみるといいと思います。全員にやる必要はなくて、やりたい人向けにちょっとやるだけで、すごい効果があると思います。やってみた人たちが「いい」と言ったら、自然とフォロワーが出てくるはずなので。特に今日この場に集まったみなさんにはBtoBマーケティングという共通の関心軸があるので、このあとのネットワーキングでぜひ多くの人と話をしてみたいただければと思います。


 

ロールモデルを見つけて、なりたい自分になろう

小島氏:それでは最後の質問です。「これまでの人生、仕事でフォローすべきロールモデルはいましたか?」…みなさん◯ということで、お一人ずつ聞いていこうと思いますが、まず鈴木さんはどんな人ですか?

鈴木氏:織田信長ですね。

小島氏:信長ですか…いろいろ規格外でドキドキしますけど(笑)信長をどんな形でフォローしていたんですか?

鈴木氏:会ったことはないのですが、本を読む限り、理性でバサバサ切っていきながらも、意外と商業も栄えさせているということで、感情的なところと理性的なところのバランスがかっこいいなと。

小島氏:青山さんに、もう少し常識的な回答を。

青山氏:(笑)僕は今の上司ですね。会社に誘ってくれた上司が、一番のロールモデルです。

小島氏:それは幸せなことですよね。

青山氏:はい。彼はマーケティングで会社を引っ張ってきた人なので、本当にいろいろと教えてもらえてラッキーでした。

小島氏:ちなみに会場の中で「俺にはロールモデルがいるぜ」という方は挙手していただけますか?



小島氏:結構いらっしゃいますね。絵も模写から始まるし、バンドもコピーから始まるじゃないですか。真似から入るのが一番行動を変えやすいので、“こうなりたい”という理想像があるのは、すごくいいことです。ちなみに植山さんは、メンターの人がロールモデルに近いですか?

植山氏:そうですね。Dropboxに入ったときの上司で、オンラインの売上の全責任を持っている人です。英語圏でオンラインのビジネスを伸ばせる人は、サンフランシスコに行けばいっぱいいるので、僕は“非英語圏でオンラインで商売するなら、こいつはすげー伸ばすぜ”という人になりたいですね。

小島氏:インターナショナルグロースができる人が少ないのは、本社からのオーダーに従うタイプの人が多いからですよね。施策が本国から降りてくるから、成功しようがない。

植山氏:僕は勝手にやって、圧倒的な結果を作ります。僕が立ち上げたDropboxのブログのPVは89万ですが、これって本社の6倍以上のトラフィックなんです。ウッシッシって感じですね。

小島氏:素晴らしい。

植山氏:ロールモデルにしている上司が、最近2つ素敵な質問をしてくれたので、それをシェアしたいなと思っていて。あるとき僕が彼に「俺の改善ポイントないの?」って聞いたんですね。すると「じゃあさ、ここにお前がいないとして、『植山周志って、どんなやつだ?』って聞いたら、どんな答えが返ってくると思う?たぶん『アジアでA/Bテストやってるやつだ』って言われるんじゃない?そうじゃなくて、『アジアの戦略をやっているやつだ』って言われるためには、どうしたらいいと思う?」って言われたんですよね。

小島氏:いい質問しますねぇ。

植山氏:もうひとつが、「もし、お前がアラジンの魔法のランプを持っていて、それを使ってジーニーに3つお願いができるとしたら、今やっているアジアの市場を伸ばすために何をお願いする?今度会ったときに、それについて議論しよう」と。つまり時間的・金銭的な制約を排除して考えろってことですよね。

小島:“なりたい自分を言語化しろ”ということですね。すっごい大事。日本の会社でもキャリアパスを書かせますが、あれを面倒がってはいけないと思うんですよね。なぜなら、書けないものには、なれない。なりたいものにしか、なれないからです。会場のみなさん、今日は身近なロールモデルになり得る3人のマーケターをご紹介しましたが、この中でフォローしたい人は見つかりましたか?本日はどうもありがとうございました。

小島さん パネルディスカッションスライドはこちら

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前編 登壇者のご紹介はこちら


※当日の様子は「#BigbeatLIVE」でたくさん発信されています。どうぞご覧ください。
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