2017.01.01 特別対談 シニア・ソムリエ 濱田知佐さん

 







(2015.1.13公開)

濱口―
まずは、知佐さんおすすめのシャンパンでカンパイを。

知佐―
シャンパーニュは3つのブドウ品種でつくられるのですが、割合はそれぞれの醸造所で違います。
この『ポメリー・ブリュット・ロワイヤル』は、それが1/3ずつ入っているシャンパーニュ。
非常にバランスがよく、シャンパーニュのお手本と言えるものです。

では、カンパイ。


濱口―
うん、おいしい(一気に飲み干す)。
知佐さんは2003年のキュヴェ・ルイーズ・ポメリー ソムリエコンテストで優勝されたのですよね。

知佐―
そうなんです。そのご縁もあってご紹介させていただきました。

濱口―
ソムリエとして活躍される前は、国際線創成期の全日空でCAとして奮闘されたそうですね。

知佐―
当時は国際線が就航したばかりで、追いつけ追い越せとみんな必死で工夫していました。
出航前、成田のプレハブ事務所を出るときに玄関で男性社員が持ったカセットデッキから流れてくる
ロッキーのテーマで『チャチャンチャーン――』って感じで見送られたんですよ。
ロサンゼルスやワシントンDCなど週2便しかフライトがないから、
一度行くと簡単には帰ってこれないんです。

濱口―
それすごい世界ですね。今では考えられない。

知佐―
暗中模索の中、それでも自由にいろいろやらせてもらい、
チームでQC活動の社長賞をいただいたこともありました。
ここで培ったのはサービスマインド。
「ここにいるお客様のひとりひとりに人生がある。もしかしたら抱えているものがあるかもしれない。
このフライト中の数時間の間は、笑顔でいい時間を過ごしていただきたい。」
という思いでやっていました。

飲食店でも一緒です。
「たくさんのお店から選んできていただいたお客様に、
この『お食事の2時間』をいい時間にしたい。楽しんでいただきたい。
笑顔にしなくてはプロでないでしょ」と。

濱口―
CAも飲食店も、我々のイベントの仕事も一緒ですね。

知佐―
どの仕事にも必要なマインドですよね。
「このひとは何を求めているんだろう」
「何がこの会社のためになるだろう」
と、考えること。

濱口―
本当にそう思います。

知佐―
例えば、接待でのお店選びもそうですよね。
相手の方が何を好きなのかを勉強して、喜んでいただくお店選びをするといい。
レストランは予約の時点で勝負は始まっているんです。
「社長就任された年のワインを」とか、
「ドイツにいらしたのでその地方のワインを」などいろいろなことができる。
おもてなし……一期一会……お茶の世界と一緒ですね。

濱口―
SNSで公開されているプロフィール情報をもとにセッティングする、
なんてこともできますし。

知佐―
そうそう。ワイン・日本酒は特に便利。
お店もどんどん利用したらいいんです。そのためにソムリエがいるんだから。


プロが厳しいわけ


濱口―
ソムリエの勉強はCA時代に?

知佐―
そうです。きっかけはCA時代にワインが商品だったから。
自分のことばで伝えたい、きちんと伝えられるひとになりたい、と思ったからです。
ワインマニアでもワインおたくでもなく(笑)。
商品知識として持っておきたい、という気持ちで勉強しましたね。

濱口―
「プロ意識」ですね。

知佐―
もちろん、飲むのも好きです(笑)。

濱口―
たくさん飲んで、たくさん勉強したわけだ(笑)。

知佐―
それからCAを10年務めて退社したあと、
ソムリエの資格を活かしてワインスクールで講師をするようになりました。
そこで師匠でもあった田崎真也さんが経営するプロのソムリエを育てるスクールで、
受験対策の講師をやってくれないかと誘っていただいたのです。

濱口―
『田崎真也ワインサロン』の講師ですね。

知佐―
田崎さんの名前を汚してはいけないと必死でした。
講師として教えることが自分の勉強になりましたね。
ソムリエとしての最新知識はもちろん、まずは教えるためにチーズや日本酒のことを自分で学んだり。
それと、田崎さんは普段はとても温厚で優しい方なのですが
とにかくプロに対しては厳しかった。私もです(笑)。

濱口―
虎の穴だ。

知佐―
生徒さんは仕事を持ちながら勉強されているので両立が難しくなることがあります。
よく「時間がない」と言うのですが時間はつくるもの、「じゃ睡眠時間削ろうね」と(笑)。
厳しいですよね。でも試験に合格したあとの、これまでとは全然違う世界を見せてあげたかったんです。
 

コップ酒とおでん


知佐―
それからサロンのカリキュラム作りや経営も任せていただくようになり、
本当に自由にやらせていただきました。
経営はこのときが初めてでしたが、
実家が高知の角打ち(酒屋の店頭で酒を飲むこと)のある酒屋だったので
小さいころから店番をしていたんです。
「おんちゃん(おじさん)表面張力つけちょくきね」ってコップ酒ついで。
 


濱口―
高知のおんちゃんはそういうの弱いですよね。

知佐―
今でも覚えているのが、お店で売るおでんの具材を買ってくる手伝い。
買ってきた具材に竹串さして、値段つけて。
売れたらそれでまた買ってこいと。
どんどん売れて最後にお小遣いをもらえる。
商売っておもしろいと思った最初の思い出です。

濱口―
商売とはお客さんを笑顔にすることだって、高知の濱田酒店で学んだんですね(笑)。

知佐―
高知の角打ちでね(笑)。
高知は大学進学以来離れたままだったのですが、しばらく戻っていた時期があったんです。
このときはじめて市内だけでなく、いろいろな地域を訪れて「高知ってすごい」と感じたんですよ。
美味しい食べ物があって……酒があって……あと、ひとが適当(笑)。
好きなことしか言わないし、聞かない。
何かあっても「かぁん、かぁん(構わない、構わない)」と言う。
高知の文化ね。

濱口―
うんうん。

知佐―
そんな高知にいつでも触れられる場所をつくりたいと思っていた。
そんなときにアンテナショップの話がきて、これが私のやることだ!って。

濱口―
高知のアンテナショップ「銀座のまるごと高知」2Fのレストラン
「おきゃく」のプロデューサーに至るわけだ。
 

相手を楽しませること、自分が笑顔でいること。


知佐―
ここでも、やりたいって思うことを自由にのびのびと、全部させていただきました。
喧嘩しながら(笑)。

濱口―
お店づくりにもこだわったんですね。

知佐―
アンテナショップを「観光地」にするのではなく、
『居心地いいな』『また来たいな』と思ってほしい。
そういう思いで空間創りをしました。
土佐の和紙、土佐の杉やヒノキをつかって、
銀座で高知を感じられる、ほっとできる場所にしたかったのです。

濱口―
お聞きしていると、知佐さんはいつも『ひと』を想って動いている。

知佐―
ひとを楽しませるって、楽しいですよ。
ビジネスも相手を楽しませるマインドを持ってやればいいと思います。
そのためにはまず、自分が笑顔でいること。
そして話をよく聞く、半歩先の進んだことをすること。
一歩先はお客様にとってちょっと遠いんです。

濱口―
そうですね。2015年も笑顔の多い年にしたいですね。

知佐―
何かあったら「かぁんかぁん」て笑い飛ばしたらいい(笑)。
 

「ひとを喜ばせたい」とチャレンジや学びを続ける知佐さん。
素敵な笑顔とさりげない気配り、さらにおいしいシャンパンとで
とても楽しい時間を過ごした濱口でした。

おまけ


対談後記(土佐弁バージョン)
※実はこの二人、高知で小学校から中学、高校まで同級生です。

濱口―
昔から周りを喜ばせるがぁが大好きやもんな
やめちょいたら、って言うてもゴンゴン首を突っ込んでいくきね。

知佐―
そうやね、それで気がついたらおっいきもん背負うちゅう。

濱口―
『はちきん』やもんにゃ。

知佐―
高知で言うかわいらしい女性のことやね。

濱口―
……母ちゃんもはちきん、エラかったでね。

知佐―
うちは酒屋やったやろう、着物きいて軽トラ運転して配達しよった。
子供のころカニが苦手でね、あの風呂場とかにでるこんまいがが嫌いやったのよ。
ほいたら『女が怖いもんあったらいかん!』言うて、カニもって追い回されたき。

濱口―
(爆笑)
うちの母ちゃんは武闘派。なくなる前ばあまで姉ちゃんとつかみあいのケンカしよった。

知佐―
かわいいねぇ はちきんは(笑)。
こうなったら24金、純金めざすで。

濱口―
がはは! かぁんかぁん!
 

※編集部注
『はちきん』の意味につきましては、記するのをはばかられますので各自で検索いただけましたら幸いです。


濱田知佐さんにおすすめいただいた
シャンパン、『ポメリー・ブリュット・ロワイヤル / Pommery Brut Royal』と
『土佐のお酒、土佐鶴 天平印』を各1名様にプレゼント。

※応募は締め切りました。ありがとうございました。

知佐さんは2003年 キュヴェ・ルイーズ・ポメリー ソムリエコンテストで優勝。
フランスの「ポメリー」本社にて、フランス醸造協会会長Therry GASCO氏だけで行う
「ルイーズ」のベースとなるワインづくりの最終テイスティングにも参加し、
ヴィンテージワインの味を決められたとのこと。
ランスにあるシャンパンカーブには女性初の優勝者として知佐さんのお名前も
掲載されているそうです。
ポメリー・ブリュット・ロワイヤル »

また濱口と知佐さんの故郷、土佐を代表するお酒「土佐鶴」。天平印は手造りの
大吟醸原酒で、全国新酒鑑評会で金賞を撮り続けているそうです。
(こちらは高知県アンテナショップ「まるごと高知」にもございます)
土佐鶴 天平印 »

プロフィール

濱田知佐

濱田知佐さん

シニア・ソムリエ、利き酒師、焼酎アドバイザー、土佐酒アドバイザー、アクアマエストロ、チーズプロフェッショナル、野菜ソムリエの資格を活かし幅広く活躍中。全日空の客室乗務員にソムリエの勉強を始め、2003年 キュヴェ・ルイーズ・ポメリー ソムリエコンテストで女性初の優勝。パリの三ツ星レストラン「ル・サンク」では、世界ソムリエコンクール優勝者のエンリコ・ベルナルド氏と共に勤務。「ルカ・カールトン」では、伝説のシェフ アラン・サンドラス氏の料理とワインのメニュー決定会議に参加。田崎真也ワインサロン取締役支配人を経て、現在は銀座の高知県アンテナショップ「まるごと高知」2F、TOSA DINING おきゃくプロデューサーとしてレストランの立ち上げから携わる。「ベル・ジャポン」の「ベル・キューブ」「ブルサン」のアドバイザー。BSジャパン「辰巳琢郎の葡萄酒浪漫」にソムリエとして出演中。濱口とは、小学生時代からの同級生。

高知県アンテナショップ 「まるごと高知」 »TOSA DINING おきゃく »
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