Bigbeat 2021.07.27 マーケティング思考の設計・コンテンツで学生から選ばれる企業へ ー ビッグビート採用担当者の視点
2021年現在、企業の採用活動は昨年に続き、オンラインでのコミュニケーションが主流となっています。前回の記事では、コロナ禍で就職活動をしていた学生側の視点で、学生側の動向や企業に求めることなどを紐解いてきました。
2020年春、東京では初めての緊急事態宣言が発令され、企業側はそれまで予定していた新卒採用活動の急激な変更に迫られました。ビッグビートもまさにその状態で、手探りで行われた2020年の採用活動を終え、採用担当の大堀は多くの至らなかった点を痛感。その反省を生かし、2021年の新卒採用活動に臨みました。オンラインの採用活動で陥りやすい落とし穴とは?また、ビッグビートが学生から選ばれ続けるためにどんなことを大切にしているのか。採用担当の大堀に、新卒採用のリアルな事情を尋ねました。
ビッグビートで新卒採用を担当する大堀
「もともと対面での実施を前提にプランしたコンテンツから、特段何かを変えるということはなく、そのまま収録する形をとりました。オンラインで視聴してもらうからには、コンテンツの魅せ方も非常に重要な点だと今ならわかりますが、当時はそこに気づく余裕もなく…。社長と4名の社員が順番に登場し、PowerPointの資料を画面共有しながら淡々と説明するようなコンテンツになってしまいました。しかも、全編の長さは90分。伝えたいメッセージも不透明になってしまい、最初から最後まで視聴してくれた学生は、少なかったのかなと感じています。そのせいもあってか、例年の6割程度までエントリー数が下がってしまいました。」(大堀)
全研本社株式会社が運営する、店舗集客・マーケティング戦略情報に特化したWebメディア「キャククル」が行った調査(コロナ禍で新卒採用を実施している人事担当者・経営者・役員111名を対象)によると、オンラインでの採用活動を実施している中で、ビッグビートと同様に「説明会からエントリーにつながらない」と答えたのは約3割。その他にも多くの担当者が「オンラインだと相手の温度感もわからず、自社の魅力も伝えきれない」「双方向のコミュニケーションが難しい」といった課題を感じているようです。
引用元)https://www.shopowner-support.net/attracting_customers/recruitment/in-house-recruitment/entry-problem/
また、前回の記事の中で、学生一人ひとりが自分に向き合い、生き方まで考えて就職活動をしているがゆえに、そもそも就職活動をする学生の比率や活動量が下がっている、という事実をご紹介しました。大堀自身も面接に進んだ学生と話をする中で、学生たちの企業接触度自体が従来よりも少ないことを感じていたようです。
こうした学生の背景も考えると、企業にできることは、説明会をはじめとするオンラインでの情報の届け方で、何か工夫ができそうです。例えば、説明会にZoomを活用するような企業であれば、投票機能を使って学生からの反応をもらいやすくしたり、説明会の参加前・参加後の2回簡単なアンケートを取って態度変容を可視化したり。学生とのコミュニケーションをどう設計するかという点は、従来の対面での採用活動に比べ、より深く考えるべきポイントなのかもしれません。
「オンラインの準備期間が少なかった前年に比べ、2021年春の採用活動はオンラインでの開催を前提にフロー・コンテンツを考えました。特にこだわったのは、やはり会社説明会です。今年は企業の想い・メッセージがきちんと伝わることと、社員同士のつながりが感じられることのみを重視しました。約50分間の説明会の中で、Webを見れば知ることのできる『会社概要』や『事業内容』には一切触れず、司会が社長と対話をしながら経営への想いを引き出したり、年次の様々な社員が登場するパネルディスカッションを行ったり、とにかく社員同士が話をしているコンテンツをベースに企画していきました。この企画も私一人ではなく、新卒2~3年目の若手社員に相談をして、彼らを中心に一緒に作り上げてもらいました。」(大堀)
オンラインで行われた会社説明会のワンシーン。
対談形式のコンテンツで「らしさ」を伝え、最後には配信にかかわった企画メンバーも紹介されました。
前回の記事の中で、新入社員の鏡味が「実際の会社の雰囲気やどんな人が働いているのかをいちばん知りたかった」と話しているように、学生が興味を持っていた『社員同士のつながり』に軸を置いていました。それぞれのセッションを15~20分で設定し、間には3分程度の短い社風紹介動画を挟むなど、オンラインでも飽きさせない魅せ方にもこだわりが。2020年、ビッグビートが多くのお客様のオンラインイベントをサポートして得た知見も踏まえ、学生にどう情報を届けるかを考え詰め込んだ会社説明会になりました。
「この会社説明会への試みの結果、前年に比べ約4倍のエントリーがありました。エントリーの際のアンケートで『自分の知りたいことが詰まった説明会だった』という回答や『理念に共感できた』という回答をいただけたのが嬉しい収穫ですね。」と、大堀は語ります。マーケティングの基礎として、『誰に(Who)、どんな価値を(What)、どのように(How)届けるのか』という考え方がありますが、Whatにあたる部分を絞り、わかりやすいHowに落とし込めたことで、成果が上がったのだと考えられるでしょう。採用活動とマーケティングの交差する部分が、大堀の話から見えてきました。
オンライン中心の採用活動の中で、お互いに気持ちよく選考を進めるために、特に気を付けているポイントを大堀に尋ねました。
① 間の取りづらさも考慮して、面接は1対1で
オンラインになって顕著になったことのひとつが、3名以上の会議での間の取りづらさ。話のテンポ・相手の空気が感じづらいオンラインでの会議は、つい発言のタイミングが重なって、話を譲り合った経験が皆さんにもあるのではないでしょうか。ビッグビートでは従来も1対Nになることは避け、1対1での面接にこだわってきましたが、「学生の皆さんが話しやすい空気を作るためにも、オンラインではより1対1での面接の形式が適していると考える」と大堀は話します。
② 画面の中の見え方で、判断されてしまう
良くも悪くも、画面を通してしか相手の様子がわからない、オンラインでの面接。基本的に、大堀は安定した通信環境のあるオフィスから面接を行いますが、学生側の通信環境はそれぞれ異なります。どちらかの通信環境が優れないと、途端にスムーズな進行が崩れてしまいます。また、照明や背景など、画面に映る自身の魅せ方も、少なからず印象を左右しているものです。大堀は「初めて学生の皆さんにお会いする1次面接の冒頭は、一旦マスクを外した状態であいさつし、表情を認識いただいた後にマスクをつけて面接を進めるようにしています。またリアルなオフィスの写真をバーチャル背景に使い、少しでも当社をイメージしてもらえるようにしています。」と、その工夫を語りました。
オンラインでの面接は、主な業務を行う執務室内や、打ち合わせ・収録・配信を行うPlay Studioの一角で実施されることも。
面接中はマスクをつけながらにはなりますが、周りの明るさや表情などには気を配りながら進めます。
そのほか、最終選考の前に必ず人事からの雇用条件説明と先輩社員訪問を実施し、ミスマッチを減らす努力をすることと、合否を伝える時間・タイミングの配慮など、一人ひとりへの丁寧なコミュニケーションを心掛ける姿勢は、ビッグビートがコロナ禍以前から変わらず大切にしていることです。
オンラインで相手の態度や雰囲気が読み取りづらいからこそ、より細やかな心配りが相手にもストレートに伝わるのではないでしょうか。
今後の新卒採用活動について、大堀は「オンラインでの活動により、関東圏以外の学生さんや海外在住の学生さんのエントリーも増えています。この秋も海外留学経験者を対象とした2022年秋卒者の募集や、2023年卒の学生向けインターンシップも検討しています。まだチャレンジできていませんが、学生と社員を交えた小グループのオンライン座談会なんかも、頻繁に実現できたらいいなあ…と構想中です。」と話しました。
企業によって募集をかけるメディアも、選考の進め方も、情報の伝え方も異なる新卒採用活動。正しいルートがあるわけではありませんが、企業ごとに『誰に(Who)、どんな価値を(What)、どのように(How)届けるのか』というマーケティング的な思考で戦略を立てることで、学生からの見られ方も反応も変わってくるものだと思います。対面とオンラインでは情報の届き方も気を付けるポイントも違うことを意識するべきです。私たち自身、学生から選ばれる企業であるために、試行錯誤しながらも採用活動をアップデートし続けたいと思います。
2020年春、東京では初めての緊急事態宣言が発令され、企業側はそれまで予定していた新卒採用活動の急激な変更に迫られました。ビッグビートもまさにその状態で、手探りで行われた2020年の採用活動を終え、採用担当の大堀は多くの至らなかった点を痛感。その反省を生かし、2021年の新卒採用活動に臨みました。オンラインの採用活動で陥りやすい落とし穴とは?また、ビッグビートが学生から選ばれ続けるためにどんなことを大切にしているのか。採用担当の大堀に、新卒採用のリアルな事情を尋ねました。
ビッグビートで新卒採用を担当する大堀
オンラインにそのまま置き換えることしかできなかった2020年
2020年春、突如として新型コロナウイルスが猛威を振るい、従来通り対面での実施を予定していた採用活動を、急遽オンラインに切り替えた企業も多かったことと思います。まだZoomやTeamsなどのミーティングツールにもほとんど触れたことがなく、どうやって使うの?というところから企業も学生も悩みながら進んでいった採用活動。「2020年春は対面による説明会開催にこだわったがゆえに、オンライン開催に切り替える決断が遅れ、説明会の収録や公開準備にも時間がかかって大幅にスケジュールが遅れてしまった」と、大堀は語ります。「もともと対面での実施を前提にプランしたコンテンツから、特段何かを変えるということはなく、そのまま収録する形をとりました。オンラインで視聴してもらうからには、コンテンツの魅せ方も非常に重要な点だと今ならわかりますが、当時はそこに気づく余裕もなく…。社長と4名の社員が順番に登場し、PowerPointの資料を画面共有しながら淡々と説明するようなコンテンツになってしまいました。しかも、全編の長さは90分。伝えたいメッセージも不透明になってしまい、最初から最後まで視聴してくれた学生は、少なかったのかなと感じています。そのせいもあってか、例年の6割程度までエントリー数が下がってしまいました。」(大堀)
全研本社株式会社が運営する、店舗集客・マーケティング戦略情報に特化したWebメディア「キャククル」が行った調査(コロナ禍で新卒採用を実施している人事担当者・経営者・役員111名を対象)によると、オンラインでの採用活動を実施している中で、ビッグビートと同様に「説明会からエントリーにつながらない」と答えたのは約3割。その他にも多くの担当者が「オンラインだと相手の温度感もわからず、自社の魅力も伝えきれない」「双方向のコミュニケーションが難しい」といった課題を感じているようです。
引用元)https://www.shopowner-support.net/attracting_customers/recruitment/in-house-recruitment/entry-problem/
また、前回の記事の中で、学生一人ひとりが自分に向き合い、生き方まで考えて就職活動をしているがゆえに、そもそも就職活動をする学生の比率や活動量が下がっている、という事実をご紹介しました。大堀自身も面接に進んだ学生と話をする中で、学生たちの企業接触度自体が従来よりも少ないことを感じていたようです。
こうした学生の背景も考えると、企業にできることは、説明会をはじめとするオンラインでの情報の届け方で、何か工夫ができそうです。例えば、説明会にZoomを活用するような企業であれば、投票機能を使って学生からの反応をもらいやすくしたり、説明会の参加前・参加後の2回簡単なアンケートを取って態度変容を可視化したり。学生とのコミュニケーションをどう設計するかという点は、従来の対面での採用活動に比べ、より深く考えるべきポイントなのかもしれません。
届けたい情報を絞って、伝わりやすく設計すること
例年に比べて伸び悩んだ2020年の新卒採用活動を経て、大堀はこの春の採用活動でいくつかの試みを行いました。「オンラインの準備期間が少なかった前年に比べ、2021年春の採用活動はオンラインでの開催を前提にフロー・コンテンツを考えました。特にこだわったのは、やはり会社説明会です。今年は企業の想い・メッセージがきちんと伝わることと、社員同士のつながりが感じられることのみを重視しました。約50分間の説明会の中で、Webを見れば知ることのできる『会社概要』や『事業内容』には一切触れず、司会が社長と対話をしながら経営への想いを引き出したり、年次の様々な社員が登場するパネルディスカッションを行ったり、とにかく社員同士が話をしているコンテンツをベースに企画していきました。この企画も私一人ではなく、新卒2~3年目の若手社員に相談をして、彼らを中心に一緒に作り上げてもらいました。」(大堀)
オンラインで行われた会社説明会のワンシーン。
対談形式のコンテンツで「らしさ」を伝え、最後には配信にかかわった企画メンバーも紹介されました。
前回の記事の中で、新入社員の鏡味が「実際の会社の雰囲気やどんな人が働いているのかをいちばん知りたかった」と話しているように、学生が興味を持っていた『社員同士のつながり』に軸を置いていました。それぞれのセッションを15~20分で設定し、間には3分程度の短い社風紹介動画を挟むなど、オンラインでも飽きさせない魅せ方にもこだわりが。2020年、ビッグビートが多くのお客様のオンラインイベントをサポートして得た知見も踏まえ、学生にどう情報を届けるかを考え詰め込んだ会社説明会になりました。
「この会社説明会への試みの結果、前年に比べ約4倍のエントリーがありました。エントリーの際のアンケートで『自分の知りたいことが詰まった説明会だった』という回答や『理念に共感できた』という回答をいただけたのが嬉しい収穫ですね。」と、大堀は語ります。マーケティングの基礎として、『誰に(Who)、どんな価値を(What)、どのように(How)届けるのか』という考え方がありますが、Whatにあたる部分を絞り、わかりやすいHowに落とし込めたことで、成果が上がったのだと考えられるでしょう。採用活動とマーケティングの交差する部分が、大堀の話から見えてきました。
オンラインならではのコミュニケーションへの配慮
少子化の波はとどまることなく、コロナ禍によって学生の考え方・生き方も多様化する中、「学生から選ばれる企業になる」ことは、これからますます重要になってくるでしょう。企業それぞれにその方法を模索しながら、学生とのコミュニケーションを重ねていることと思います。オンライン中心の採用活動の中で、お互いに気持ちよく選考を進めるために、特に気を付けているポイントを大堀に尋ねました。
① 間の取りづらさも考慮して、面接は1対1で
オンラインになって顕著になったことのひとつが、3名以上の会議での間の取りづらさ。話のテンポ・相手の空気が感じづらいオンラインでの会議は、つい発言のタイミングが重なって、話を譲り合った経験が皆さんにもあるのではないでしょうか。ビッグビートでは従来も1対Nになることは避け、1対1での面接にこだわってきましたが、「学生の皆さんが話しやすい空気を作るためにも、オンラインではより1対1での面接の形式が適していると考える」と大堀は話します。
② 画面の中の見え方で、判断されてしまう
良くも悪くも、画面を通してしか相手の様子がわからない、オンラインでの面接。基本的に、大堀は安定した通信環境のあるオフィスから面接を行いますが、学生側の通信環境はそれぞれ異なります。どちらかの通信環境が優れないと、途端にスムーズな進行が崩れてしまいます。また、照明や背景など、画面に映る自身の魅せ方も、少なからず印象を左右しているものです。大堀は「初めて学生の皆さんにお会いする1次面接の冒頭は、一旦マスクを外した状態であいさつし、表情を認識いただいた後にマスクをつけて面接を進めるようにしています。またリアルなオフィスの写真をバーチャル背景に使い、少しでも当社をイメージしてもらえるようにしています。」と、その工夫を語りました。
オンラインでの面接は、主な業務を行う執務室内や、打ち合わせ・収録・配信を行うPlay Studioの一角で実施されることも。
面接中はマスクをつけながらにはなりますが、周りの明るさや表情などには気を配りながら進めます。
そのほか、最終選考の前に必ず人事からの雇用条件説明と先輩社員訪問を実施し、ミスマッチを減らす努力をすることと、合否を伝える時間・タイミングの配慮など、一人ひとりへの丁寧なコミュニケーションを心掛ける姿勢は、ビッグビートがコロナ禍以前から変わらず大切にしていることです。
オンラインで相手の態度や雰囲気が読み取りづらいからこそ、より細やかな心配りが相手にもストレートに伝わるのではないでしょうか。
今後の新卒採用活動について、大堀は「オンラインでの活動により、関東圏以外の学生さんや海外在住の学生さんのエントリーも増えています。この秋も海外留学経験者を対象とした2022年秋卒者の募集や、2023年卒の学生向けインターンシップも検討しています。まだチャレンジできていませんが、学生と社員を交えた小グループのオンライン座談会なんかも、頻繁に実現できたらいいなあ…と構想中です。」と話しました。
企業によって募集をかけるメディアも、選考の進め方も、情報の伝え方も異なる新卒採用活動。正しいルートがあるわけではありませんが、企業ごとに『誰に(Who)、どんな価値を(What)、どのように(How)届けるのか』というマーケティング的な思考で戦略を立てることで、学生からの見られ方も反応も変わってくるものだと思います。対面とオンラインでは情報の届き方も気を付けるポイントも違うことを意識するべきです。私たち自身、学生から選ばれる企業であるために、試行錯誤しながらも採用活動をアップデートし続けたいと思います。