BigbeatLIVE 2021.02.26 これからの「価値」の源泉は、問題を見つけ出せる力【Bigbeat LIVE 2020 ~Day5~<後編>】

8月3日(月)~8月7日(金)の5日間、オンラインにて開催された『Bigbeat LIVE 2020』。
白熱した5日間の模様を、コピーライター小笠原の視点でお届けします!

5日間にわたる『Bigbeat LIVE 2020』のトリを飾ったのは、『アフターコロナの時代に求められるニュータイプとは?』と題した特別セッションで、スペシャルゲストの山口 周 さんに講演をいただきました。山口さんの著書『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』の中でも語られる、オールドタイプ・ニュータイプの違いから、特にマーケティングにおいてこれからの私たちに求められる思考・価値を考えるセッションとなりました。

【登壇者】
独立研究者、著作家、パブリックスピーカー 山口 周 さん



 

客観的な「正解」が、必ずしも価値になるわけではない

山口さんはこのセッションの序盤に、「正解のコモディティ化」という問題を提起しました。

「今までは正解を出せることが、優秀さを示すことと同義でした。学校のテストでも、高い点数を取ることができれば、優秀だと認められてきたわけです。ただ近年、 “正解を出せること=優秀” という考え方が、果たして本当にそうなのか?と感じるようになってきました」(山口さん)

山口さんはその例として、日本での携帯電話(=「ガラケー」と呼ばれるフィーチャーフォン)の進化・変遷に触れました。2007年当時、日本の携帯電話の市場は非常に活気があり、多くの日本企業が素晴らしいプロダクトを開発・展開していました。しかし、同じ年にアメリカのApple社がこの市場に参入してくると、それからわずか10年の間にその市場自体が蒸発してしまったのです。携帯電話はスマートフォンに形を変え、4兆円規模の市場が横に流れてしまいました。


写真:携帯電話の例をもとに「正解のコモディティ化」に触れる、山口 周 さん

山口さんはこの一連の事実を、「正解で戦ってしまったから」だと言います。顧客調査を行い、その調査結果に基づいて開発をしてきた携帯電話のメーカー群。世の中のニーズに合わせたところ、横並びでどれも大差ない機能・デザインになっています。一方で、ほとんど顧客調査をしないことで知られるApple社は、「自分たちがかっこいいと思うもの」を世の中に提案しました。顧客の求めること、すなわち客観的な「正解」(=理性・サイエンス)よりも、主観的な想い・考え(=感性・アート)がより強い個性を発揮し、選ばれる結果になったという事例です。

かつては「正解」を出せる企業が希少だったため、それ自体が価値の源泉でした。しかし、インターネットが普及した現代では、どの企業でも比較的簡単に情報を集め、分析できるようになったため、客観的な「正解」を出すという行為自体への価値が薄れてきています。また、これからAIが発達するにつれて、論理的な答えがある問題は広くAIが解決するようになるでしょう。
山口さんは「決して、理性・サイエンスといったものが不要というわけではなく、それ自体もとても大切なことなのですが、そのサイエンスを優先すべきところと、感性・アートを優先すべきところ、それぞれ必要になってくる」と話しました。

山口さんのこのお話を受け、COVID-19の影響によってロジカルな強みを持つデジタルの価値が高まる中、数値では表せない情緒的な価値も同時に見直されていると感じます。特に、私たちビッグビートのビジネスの主力でもあるBtoBのイベントにおいては、その場の空気や熱量、一体感が大きな意味を持つものでした。多くのイベントがオンライン化したことで、情報を届けることはできても熱量まで醸成できないというような、オンラインならではの課題も見えてきています。データや数値だけを重視した仕掛けをするのではなく、それらを活かすためにも裏側にはその企業らしさが表れたストーリーをつくることが必要で、そのストーリーの強さが周りにいる顧客や社員からの共感を生み、選ばれる理由になるのだと感じました。そして、それぞれのストーリーを紐解き、相手にわかりやすい表現で届けるお手伝いをすることが、ビッグビートの果たすべき役割なのだとあらためて自覚しました。

 

ありたい姿と現状から問題をつくりだす

ここまで山口さんからは、問題に対して何を提案するのかという視点で話されてきましたが、そもそもの「問題」についても意見が出ました。先ほども述べた通り、AIをはじめとする技術の発達により、誰もが「正解」を出せるようになりつつある今、「私たちがすべき仕事は、問題をつくること」なのだと、山口さんは語ります。



「世の中が問題をたくさん抱えている場合、例えば、部屋にいるとき快適な温度で過ごしたい、洗濯物を干すのが辛いなど、明確な課題がある場合は、エアコンや洗濯乾燥機などそれに応えるソリューションを出せば解決していました。しかし、便利なもので満たされていて、解決策が飽和している今は、問題を見つけること自体が難しくなっている。問題がある状態というのは、ありたい姿と現状が一致していない状態のことなので、まずはありたい姿を描いて、現状との差分を見つけ出すことが、問題をつくりだすことにつながります。」(山口さん)

このお話に続けて、山口さんからまた一つの例が示されました。
例として紹介された動画には、脳性マヒの男性が登場し、大抵のことは他の皆さんと同じようにできるのに、家具を使う場面では課題が山積みだと話します。日常的に使う家具も、使う人が変われば不便な部分がたくさんあるという問題に気づき、立ち上がったのはイケアでした。「ThisAbles」という名のプロジェクトでは、イケアの既存家具の一部に取り付けるだけで利便性を高められる無料のアクセサリを開発し、店頭で配布したり、3Dプリンタで誰でも簡単に制作できるようにしました。問題を見つけることができたからこそ、他の家具メーカーとは異なるイケアだけの価値を生み出すことができたのです。



この山口さんのお話から、今の状態を当たり前のものだと思わないことが、「問題」を見つけるヒントになるのかなと感じました。経営もマーケティングも、結局はこれからの未来をどうしていきたいのか、自社がどうありたいのかを定めることから始まります。そして、それは自社だけの未来だけでなく、周りにいる人たち、社会がどうなっていくとよいのかまで視点を広げて考えるべきことです。ビッグビートの理念である「かかわった人がHappyを感じる」状態になるために、特にお客様の経営・マーケティングの内側に潜んでいる問題の本質を見つけ出し、パートナーとしてお客様と共に解決へ進んでいく、そんな存在になりたいと強く感じます。



「マーケティングで経営を変える」を掲げ続けた、8月の5日間。この連載でご紹介をしたコンテンツ以外にも、当社のパートナー企業の皆様から提供いただいたコンテンツも含め、様々な角度からの気づきやヒントが詰まった5日間でした。
これからも私たちビッグビートが提供できる価値とは何か、常にその命題に向き合い続けながら、悩めるマーケターの皆様にとってお役に立てる存在でありたいと思います。次回のBigbeat LIVEにも、こうご期待!
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