BigbeatLIVE 2020.10.12 信念に裏付けられた「社長の腹のくくり方」【Bigbeat LIVE 2020 ~Day1~】

8月3日(月)~8月7日(金)の5日間、オンラインにて開催された『Bigbeat LIVE 2020』。
白熱した5日間の模様を、コピーライター小笠原の視点でお届けします!


『Bigbeat LIVE 2020』の初日は「リーダーシップ セッション」と題して、多くの経営者の方々が登場する1日となりました。
この日の注目のセッションは、4名の経営者・役員の方が登場する「社長の腹のくくり方」。セッションに参加する前は、このタイトルから、COVID-19による社会への影響に向き合うために、登壇者の皆さんがそれぞれに大きな決断や大きな変化を良しとして進めてきた…という内容のお話が語られるのだと予想していました。もちろん、そういったお話もたくさんあり、社会の変化に合わせて自社の取り組みをそれぞれに変えられていましたが、このセッション全体を通して強く感じたのは、経営者・役員の方々が進めてきた、「変化の裏側には確固たる信念がある」ということでした。


「社長の腹のくくり方」のセッションには、以下の4名が登壇されました。
 
【登壇者】
アステリア株式会社 代表取締役社長/CEO 平野 洋一郎 さん
株式会社INDUSTRIAL-X 代表取締役 八子 知礼 さん
シンフォニーマーケティング株式会社 代表取締役 庭山 一郎 さん
株式会社 東芝 執行役上席常務 最高デジタル責任者 島田 太郎 さん



(※シンフォニーマーケティング株式会社 庭山さんとの対談の模様は、映像ではカットされております。予めご了承ください。)

 

自社の信念を見つめ直す

COVID-19によって、私たちの働き方や暮らし方は大きく変化を遂げました。私自身、テレワークが当たり前になり、家で過ごす時間が格段に増えています。これまでは利用する機会の少なかったUber Eatsなどの宅配サービスや、Huluなどの動画配信サービスを使う頻度も増えました。
こうした社会の変化の中で、自社の持つ使命がより鮮明になった企業・経営者がいました。それは、株式会社INDUSTRIAL-X 代表取締役 八子 知礼 さんです。



株式会社INDUSTRIAL-X 代表取締役 八子 知礼 さん(写真右)
当日は生出演で、Day1のオープニングを温かく盛り上げていただいた


同社ではビジョンとして、「Digital Transformation・Physical Transformation・Human Transformation の3つのトランスフォーメーションを軸として、様々な業界の産業構造を未来に向けて大きく変革していくこと」を目指すと掲げられています。COVID-19の影響が広がったからといって、このビジョンが変わることはありません。しかし、社会全体がデジタルファーストになりつつある今だからこそ感じたことがある、と八子さんは語ります。

「例えば、COVID-19による自粛期間中、何か欲しいモノがあればインターネット通販で購入する機会が増えたと思います。自分は外出を自粛しながらも買い物ができますが、それはモノを届けてくれる物流の方々がいて、初めて成り立つこと。こうした事実を受け止め、これまでデジタルの恩恵をあまり享受してこなかった方々にこそ、デジタルのメリットを感じてもらえるような仕組みをつくりたいと強く感じるようになりました。この想いは、日本の産業構造を次の世代へ変化させていくために欠かせない視点だと思っています。」(八子さん)

世の中の情勢を同社のビジョンと照らし合わせたとき、特に Digital Transformation の部分で、誰に対して価値のある変革にしなければならないのかを考える一つのきっかけとなりました。

今の私にとってスタンダードな働き方になったテレワーク。しかし、テレワークの実施状況も業種ごとに大きく差が出ていることが、内閣府の発表している資料から見て取れます。(2020年6月21日発表時点)
 

https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/shiryo2.pdf

こうした調査結果を見て、私自身の当たり前=世の中の当たり前というわけではなく、それぞれに置かれた状況によって異なることをあらためて感じます。そして自分が思っている以上に、デジタルのメリットを享受している人たちが多くはない事実を突きつけられます。八子さんの掲げられるビジョンでは、このグラフには表れてこない多くの方々に向けた変革になるのでしょう。

COVID-19の影響によって、今後企業は「自社が社会からどう選ばれるのか」を見つめ直し、決めた方向に舵を切って進んでいくことが求められる状況になったと言えます。その企業の経営戦略やマーケティングが特に重要となってくるのです。逆に言えば、経営者やリーダー自身がビジョンを見失ってしまったり、ビジョンに対しての行動が曖昧になってしまうほど、周りにいる社員や家族、そして顧客もそれを感じ取り、目に見えない距離ができてしまう。結果的に、社会から選ばれる理由が弱くなってしまうと考えます。
八子さんのように、“世の中に対して自社がどんな価値を提供していけるのか” を考え続け、社会の情勢を見てさらに自社のやるべきことを明確にしていくことこそが、世の中の経営者の皆さんが最初に腹をくくるポイントになったのだろうと感じました。

 

信念があるから、次の一歩が踏み出せる

揺るがないビジョンを持ちながら、初めての取り組みに覚悟を持って進められたのは、アステリア株式会社 代表取締役社長/CEO 平野 洋一郎 さん。
各種データベース・業務システムのデータを連携させるソフトウェアや、モバイルアプリケーションの開発支援ツールなどの製品を持つ同社は、デジタルファーストが加速するこれからの社会に、大きなチャンスを見出していることでしょう。



アステリア株式会社 代表取締役社長/CEO 平野 洋一郎 さん(写真右)
対談終了後、共通の趣味であるギターで、即興のセッションを楽しんだ



「世界中の輝く企業や人をつなぐエキスパート」として社会に貢献するというビジョンと合わせて、平野さんがご自身の一つの軸として大切にされているのが、アメリカの科学者であるアラン・ケイ氏の言葉。
それは「The best way to predict the future is to invent it. ~未来を予測する最良の方法はそれをつくることだ~」というものです。

COVID-19の影響が顕在化していく中で、平野さんはこの言葉に信念を宿して、いくつかの取り組みを推し進めてこられました。
そのうちの一つが、早期からの全社テレワーク実施。国内外に複数の拠点があり、中国杭州市にもオフィスを構える同社は、現地の情報をいち早く察知することで、1月末より全社テレワーク推奨の判断が下されました。
もう一つは、創業以来初となる新卒採用の実施。学生の内定取り消しのニュースを目の当たりにした平野さんは、日本の未来に対して危機感を感じ、今動ける企業が動かなければいけないと強く感じたそうです。これまでは人材の教育面で不安を抱える声があり、新卒の採用活動を行ってこなかった同社ですが、世の中が新しく変わっていく中で、自社も変化を遂げていくための一つとして新卒採用を取り入れようと決意がなされました。

これらの取り組みを進めるのに、もちろん不安もあったと平野さんは語りました。

「特にテレワークについては、これまで少しずつ準備を進めてきたので、すぐにでも始められる状況にあったことはよかったのですが、全社員が一斉に、しかも長期間のテレワークとなることには、当然不安もありました。私自身、これまで予想も経験もしたことがありません。経営や事業にこれからどの程度の影響が出てくるのか、本当に未知の状況でした。」(平野さん)

新卒採用にしても、創業以来初めての取り組みとなるので、何度も試行錯誤がなされたことでしょう。それでも強い意志と覚悟で進めてこられたのは、確固たる信念を持ち続けていたからです。

日本国内で緊急事態宣言が発令された時期から、早くも半年が経とうとしていますが、未だにこれから半年先のことも見通せない状況が続いています。ビジネスシーンでは新しい働き方も定着し、個人の裁量や可能性が広がる一方で、業界・業種によっては苦しい戦いが続いているところもあります。どんな状況においても、根っこにあるビジョンや信念はぶれないこと。そして、ぶれない根から育つ幹や枝葉の部分は、日々変わりゆく社会に合わせて姿かたちを変えていくこと。この変化を恐れてはいけないと感じます。新しい芽や新しい枝を伸ばしていく場面では、うまく育つのか不安もあり、失敗をしたときのことを考えてしまいがちですが、育つかどうか・失敗するかどうかではなく、決めたことを成功させるためにできることは何かどうやったら実現できるのかを追求するべきなのです。
平野さんのお話から、私自身が、そしてビッグビートが選ばれる存在になるために、今できることは何かを常に考えて、トライ&エラーを繰り返しながら成功につなげていくことが重要だと感じました。
 

今だけにとらわれず、大局を見ること

グループ全体で約13万人の従業員を抱え、日本を代表する企業である株式会社 東芝で、執行役上席常務 最高デジタル責任者を務める島田 太郎 さん。インフラに関わるビジネスも多く、社会を止めないための活動は守りつつ、いかにリスクを避けるかという点で試行錯誤をされてきました。



株式会社 東芝 執行役上席常務 最高デジタル責任者 島田 太郎 さん(写真右)
ご自宅とオフィスで、オンラインでの対談が実現した



多くの企業がCOVID-19そのものに注目をする中で、島田さんの意見は、今年どうするかではなく、長期的な社会の変化を踏まえて判断をしていくべきだというものでした。

「例えば “高齢化” や “デジタル化” など、長期的な視点で必ず進行していくのがメガトレンドです。特にデジタル化でいえば、COVID-19というイベントによって、変化のスピードそのものが上がりました。こうしたイベントの発生は、実はチャンスの側面もあります。短期的なことばかり見ていては、少し大きめのイベントがあったときに、それに振り回されてしまう。長期的に見てチャンスと捉え、変化の波に乗るためには、それ以前からの準備が重要ですね。」(島田さん)

島田さんは目先のコロナ禍よりも、自社のビジネスモデル・サービスの考え方を変化させて、世界規模の市場で選ばれるためにはどうすればよいかを見据えていました。

「これまでの日本の産業の成功パターンは、 “高性能な製品・サービスを生み出して、できるだけ安く提供する” という考え方でした。しかし、GAFAに代表される世界トップクラスの企業では、世の中に新しいプラットフォームを提供し、そこで得られるデータ・情報をサービス化するというビジネスモデルが主流。製品・サービス自体の機能を重視する考え方と、サービスによって生み出される価値・効果を重視する考え方とで、ここに大きな違いがあります。特に東芝では、POSにそのヒントを見ています。昨今の状況下でデータの重要性が高まっている今こそ、これまでとは180度違う発想でのビジネスに取り組んでいくチャンスだと思っています。」(島田さん)

この島田さんの言葉にも、やはり自社の持つ信念・ビジョンがあり、COVID-19に関わらずどんな価値を提供して社会から選ばれるのかを考え、貫く姿勢が表れていました。そして、「長期的な視点で今を捉える」ことに大きなヒントがあると感じます。
私自身が今の状況を長期的な視点で捉えられているかというと、まだ十分にできてはいません。しかし、企業の経営・マーケティングを太く筋の通ったものにしていくこと、そしてそれらをオンライン・オフラインを含め様々な場所・手法でアウトプットしていくことは、これから先も変わらず求められるでしょう。ビッグビートで考えれば、このBigbeat LIVEも長期的な視点で行うマーケティング活動の一つです。ここからさらに、このイベントをきっかけに市場からどう選ばれていくのか、どんな価値を提供していくのかをもっと突き詰めて考える必要があると感じています。また、コピーライターとしての立場からは、言葉でのアウトプットが私にできる価値・貢献できる部分だと強く感じます。従来のマーケティング手法が必ずしも正解ではない状況だからこそ、今を大きなチャンスと捉えるべきだと、島田さんのお話から気づき、考えが深まるきっかけとなりました。
 

BtoBマーケティングのこれからをどう見るか

シンフォニーマーケティング株式会社 代表取締役 庭山 一郎 さんは、国内外のマーケティング事情に精通し、日本のBtoBマーケティングの業界そのものを牽引されています。そんな庭山さんも、このCOVID-19による昨今の状況を長期的な視点で捉えると、日本のBtoBマーケティングを進化させる大きなチャンスだと語ります。



シンフォニーマーケティング株式会社 代表取締役 庭山 一郎 さん(写真右)
庭山さんの著書『BtoBマーケティング偏差値UP』は、ビッグビートの大半の社員が読了している



「日本のBtoB企業のマーケティングの成長を阻んでいた一つの理由は、経営と現場の間でマーケティングの重要性と緊急性の理解にギャップがあったこと。実は、COVID-19の影響を受ける以前から、経営側はマーケティングが重要かつ緊急性の高いものとして、積極的な組織づくりやツールの導入などを行ってきました。その一方で、現場側は日々の案件に困っておらず、マーケティングの必要性が十分に理解されていないというケースが多々見られたのです。今、その状況が一変しつつありますね。個々に大変な思いをされている事態はもちろんあるかと思いますが、非常に長い目で見れば、日本のBtoBマーケティングにとって追い風になる事象だと、私は思っています。」(庭山さん)

企業のマーケティングの成功は、マーケティングの部門だけで完結するものではありません。全社でマーケティングへの理解・共感を高め、取り組んでいく必要があると、庭山さんは主張します。特に経営者はその企業のトップとして、マーケティングを全社へ浸透させるためのカギを握っていることでしょう。

ビッグビートの社内で、全社にマーケティングへの理解・共感がいきわたっているかというと、まだ全員が同じレベルでの共感には至っていないと感じます。私自身、昨年の春ごろから少しずつ自社のマーケティングに携わり、経営の想いを言語化することのチャレンジを続けていますが、まだまだすんなりと言語化できているわけではありません。ビッグビートでは、庭山さんの著書『BtoBマーケティング偏差値UP』を読み、全社会議に臨むような取り組みも行われました。これまでも数年間Bigbeat LIVEを開催したり、『BOOTLEG』を刊行したりという活動はありつつも、私たち自身も現在進行形で試行錯誤を続けています。
庭山さんがおっしゃる通り、きっと私たちのように、多くのBtoB企業で自社のマーケティングに対して、全社で向き合う意識が高まってきているのだと感じます。これまでは営業が足で稼ぐスタイルが定着していた企業でも、このような状況下で今一度マーケティングについての見方が変わってくることでしょう。そうした企業それぞれの経営・マーケティングの想いを理解し、経営の成功のために私たちにできることは何か。変化することを厭わず、お客様と、その先の顧客の皆様へ、真摯に向き合っていきたいと強く感じました。



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