マーケティング 2019.10.17 広告会社が考えるイベントの価値 ー3年間のBigbeat LIVEを振り返る

イベントの様子

今年も多くのマーケターの方に参加いただいた「Bigbeat LIVE」。東京ミッドタウン日比谷BASE Qにて開かれた第3回Bigbeat LIVEを最後に、「マーケティングで経営を変える」というコンセプトの下で開催された本イベントは終了、第2フェーズに入ることになりました。
今回の「生・おきゃく」では、各年の企画担当者とともに振り返りつつ、次のフェーズに向かうビッグビートの取り組みを明らかにしました。その模様をレポートします。

 

Bigbeat LIVE、すべてはここから始まった

2019年9月19日、東京・赤坂見附のビッグビート本社で開催されたトークイベント「生・おきゃく〜Bigbeat LIVE3年間の裏側、すべて見せます〜」。2017年から2019年まで、3年間続いたBigbeat LIVEの企画担当者と共に、今回のイベントの振り返りと、次のフェーズを目指すビッグビートの取り組みが紹介されました。登壇したのは、2017年Bigbeat LIVEを企画した白熊かつら子、2018年担当の瀬川昌樹、そして2019年を担当した野北瑞貴の3名。モデレーターは、Bigbeat LIVEの企画担当に伴走という形で協力してきた島田裕永です。今回は、軽めのトークイベントという意味合いもあり、参加者は軽食やアルコールを楽しみながら進行していきました。

さて、2017年に初めて開催されたBigbeat LIVEですが、当時は「広告会社がなぜそんなイベントを開催するのか」という社内外の声がありました。そもそも、このイベントはどのようなきっかけからスタートしたのでしょうか。島田は、この点について次のように語ります。


株式会社ビッグビート 島田
株式会社ビッグビート Account チーム 島田 裕永

「ビッグビートは1995年の創業以来、BtoB系企業のマーケティングコミュニケーション支援を行って来ました。代表の濱口以下、我々がさまざまなプロジェクトをお手伝いするうちに、クライアントが設定したゴールが具体的な戦略、そして戦術へと落ちてくるなかで、必ずしもゴールと戦術が一致していないケースがあるな、と感じることがあったのです」(島田)

広告会社が手伝うイベントなどの施策は、兵法でいえばいわば「戦術」です。戦略が、目的達成に向けて大局的な視点でリソースを運用するプランニングだとすれば、戦術とは具体的な戦い方です。
経営戦略は、当然ながら事業会社自身で行う必要があります。経営戦略に始まり、事業部から担当者までに実行内容に話が下りて広告会社に発注する時には、当初の目的の部分が見えずらくなっています。そのため、決められた戦術で実行することが、必ずしも目的の達成に対してベストではないことがあります。

こうした経営と現場が乖離している現状に対して、経営層と実務層の双方に共通の視点を持ってもらう。その共通の視点こそがマーケティングの視点であると考え、マーケティングの重要性を伝える活動を始めることにしました。その活動の中心が「Bigbeat LIVE」です。

では、なぜ「LIVE」と銘打ったリアルイベントを開催したのでしょうか。島田は、「デジタルコミュニケーションではなく、リアルの場で、問題を共有・考えていきたかったんです」と説明します。

「これはビッグビートにとって、自分たちの考えを社外に向けて発信する初めての試みです。だから、思いや意図も、できるだけ正確にお伝えしたい。全体を通したストーリーが大切だと思いました。そこでデジタルとリアルのどちらが、より伝わる可能性が高いかを考えて、リアルでのコミュニケーションを選びました」(島田)

2018年 BIgbeat LIVEの様子
参加者と熱量を共有できる、リアルの魅力

そして、リアルとデジタルの情報の伝わり方の違いを音楽の聴かれ方になぞらえます。

「もう、CDアルバムを買うことも少なくなったかもしれませんけれど(笑)。アルバムの選曲や曲順には制作者の意図がありますよね。最初の曲から最後の曲までを通したストーリーがあり、アナログレコードの時代は、1曲目から順に聞いていました。そうするしかなかったのです。」

音楽がデジタル化されて、それが変わったといいます。

「CDが登場して、聴かれ方が変わりました。好きな曲だけ選んで聴いたり、曲を飛ばしたり、リピートさせたりなどが、簡単にできるようになりました。また、制作者の意図を無視する、シャッフルという機能も出てきました。音楽配信の時代になると、もうアルバムなど買わなくなりましたよね。聞きたい曲だけ買う、さらにサビだけ聴くなんて聴き方もされているのではないでしょうか。」

その上で、島田はビッグビートがリアルイベントを手法として選んだ理由を語ります。
   
「つまり、デジタルの本質は、ここにあるように思うのです。情報の取捨選択や編集を、受け手に委ねているわけです。デジタルメディアだけで発信して、そのように部分的なとらえ方をされると、ビッグビートの思いがしっかり伝わらないのではないかと思いました。そう考えて、手間もコストもかかるけれども、リアルイベントを選択したのです。」

こうした思いから、悩み、考え、開催したのがBigbeat LIVEです。

 

Bigbeat LIVE 3年間のWHO・WHAT・HOW


Bigbeat LIVE3年間の変化
Bigbeat LIVE、3年間のWHO・WHAT・HOWの変化

Bigbeat LIVEの最初の年である2017年の企画担当者・白熊が、ビッグビートの想いを伝えたい相手として選んだのはBtoB企業の経営者でした。理由は3つあるといいます。

「これまで日本のBtoB企業は、強い製品力と営業力で勝ちぬきましたが、これから先の未来を作るために、マーケティングは大きな伸びしろだと考えたことが1つ。2つ目は、マーケティングの役割を変えるには組織の再編が必要な場合もあり、経営者はそのための人事権を持っているということ。最後に、マーケティングが仕組化されていなくても、経営者は頭の中で、誰に、どのような価値を提供することで、自分たちが選ばれるのかを常に考えている。つまりそれはマーケティングであると考えました。」(白熊)

「ひとつのストーリーとして講演を組立てLIVEで伝え、イベントの内容を書籍にして、改めて理解を深めるという作戦を取りました。3か年計画の中の、初年度の役割である『プロローグ』としての機能は果たせたなと思っています。あとは、『1.伝えたいことを設定し(コンテンツ)』、『2.ターゲットに伝わる形に落とし(表現・言葉)』『3.届く手段で発信する(ツール)』広告会社として仕事をしているときは、2~3のでの仕事が多かったのですが、1~2の大切さや、決める大変さを実体感できたことが大きな財産になっています。」

続いて2018年のBigbeat LIVEを企画した瀬川がターゲットにしたのは、マーケティングの現場で困難な課題に取り組んでいるマーケターたち。前年に経営者をターゲットとし、コンセプトは十分伝わったという理解から、2018年は「現場を応援する」というコンセプトを掲げました。現場で汗をかいているマーケターが直面している課題を解決するためのヒントを持ち帰っていただくために、単純な成功事例ではなく、「その困難をどのように克服したか」を意味する「Struggles」を重要テーマとしました。

さらに、参加申し込み者をイベント開催前にFacebookグループに招待し、Bigbeat LIVEに関連したコンテンツを投稿することで参加者のイベント当日への熱量を高めました。このプレヒートにより、熱量が高まった参加者がイベント開催前、当日、事後にもLIVEのコンテンツをSNS上で積極的に発信するという流れができました。リアルイベントをコンテンツの起点にして、デジタルで事前・事後で熱量を高めるBigbeat LIVEのモデルが完成した瞬間でした。


(写真奥より)2017年の企画担当者・白熊、2018年の企画担当者・瀬川、2019年の企画担当者・野北

今年2019年の企画を担当した野北は「2018年のBigbeat LIVEで出会ったマーケターの方、参加者と触れ合い、自分自身の仕事のやり方を変えていきたいと思いました」と野北は説明します。ただ、2018年のテーマにもあったとおり、組織や仕事との向き合い方を変えるのは、口でいうほど簡単ではありません。実際、2018年のBigbeat LIVEに参加したマーケターのなかで、挑戦や変化を模索し、行動はしたものの、変化し続けることへの難しさを感じた人も多いはずです。
野北自身の経験から、マーケターのそんな不安を払拭するべく、2019年のテーマは「Go for it!」と決定。行動し始めたマーケターの考えを共有し、互いをつなげることで変化の輪を広げ、変化を加速させようという思いを込めたそうです。

 

ビッグビートは第2フェーズへ

Bigbeat LIVEが終了し、ビッグビートはこれからどこに向かうのでしょうか。


2019年 Bigbeat LIVE 終わりの挨拶

実はBigbeat LIVEをどう成長させていくか、今後ビッグビートはどこに向かうのかを考えていく役割を担っているのが、2019年にBigbeat LIVEの企画を担当した野北です。「濱口からは、『最後のBigbeat LIVEの企画担当は、次のライヴをどうしていくか考えてほしい』といわれていました」と野北は打ち明けます。

Bigbeat LIVEは3回開催されましたが、見方を変えれば“たった”3回だけしか開かれていません。それでも、国内マーケターを対象に、完全無料で、ツールや企業の営業活動が一切ない、純粋なマーケティングイベントということで、その評価や参加希望者は年々向上してきました。そのため、参加者からは「形を変えて続けてほしい」という要望を数多くいただいています。

今回の生・おきゃくでは、次のフェーズに向かうBigbeat LIVE、そしてビッグビートについても語られました。

野北によると、Bigbeat LIVEは、まさに「形を変えて」進化し続けるそう。「マーケティングで経営を変える」というコンセプトの下、協力者を募ってビッグビートも協力しながら、新たな“LIVE”として進化していくそうです。
ではビッグビート自体はどこへ向かうのでしょう。

「『マーケティング』という大きなテーマを新たな視点で見つめ直し、これまでと違った角度で取り組んでいきます」と、野北は説明します。ではその新たな視点とは何か。それは「デザイン」です。



「デザインといえば、一般的にはグラフィックの表現法だと捉えられがちですが、本当はより広義的なものです。実際、「デザイン思考」という言葉にもあるように使用される場面は増えています。
広告会社として、企業のコミュニケーションをサポートするビッグビートとして、”デザイン”をどう定義するか、これから様々な人と対話を重ねていきながら”デザイン”について考えていきたいと思います。」(野北)

「マーケティング」「デザイン」と聞くだけでは、どのような関連があるか、すぐにはわからないかもしれません。ですが、これからますますビジネス環境が変化していく21世紀において、これまでと違う新しい価値創出を実現するためには、さまざまな要素を結びつけて新たな価値を設計するデザインのアプローチは必須となります。

ビッグビートが目指す次のフェーズは「デザイン」。これからさまざまな有識者やアプローチを通じ、デザインについて考えていきます。
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