マーケティング 2019.06.20 Bigbeat LIVEで見つけた自分の道|エンワールド・ジャパン 片山旭氏
〈Bigbeat LIVE 登壇者インタビュー②〉
2019年8月2日に開催するBtoBマーケターのためのイベント「Bigbeat LIVE」。
過去2回開催し、BtoBマーケターの夏の風物詩となっている当イベントですが、嬉しいことにこのイベントに参加し、進むべき道を見出したマーケターの方がいらっしゃいます。
そのお一人が、今年のBigbeat LIVEにご登壇いただく、エンワールド・ジャパン株式会社 入社後活躍支援チーム カスタマーサクセス スペシャリストの片山 旭さんです。
マーケティングの実務経験が少ないなか、携帯電話リセラーから人材紹介業のマーケターとして転職したものの、入社したところマーケティング部はほぼ“解体状態”だったと言います。そこから自分の道を見つけた片山さんに、悩めるマーケターへのアドバイスをいただきました。
(聞き手:ビッグビート マーケティングチーム ディレクター 野北瑞貴)
売上を左右できるマーケティングの力に魅了され
エンワールドジャパン株式会社 入社後活躍支援チーム カスタマーサクセススペシャリスト 片山 旭氏(昨年のBigbeat LIVEの会場 紀尾井カンファレンスにて)
ー 片山さんがマーケティングに興味を持たれるようになった理由を教えてください。
片山さん
以前は携帯電話のリセラーで販売をしていたのですが、1対1の販売ではなく、売上をダイレクトに左右するマーケティングに興味を持ちました。もともと販売は得意だったのですが、窓口を離れて管理側になってみると、同じ商品、同じサービス、同じプロセスで販売している携帯電話ショップでも、他店よりも圧倒的に売れている店舗があるんです。
調べてみると、地域に根ざしたサービスを展開していたり、パーソナライズして小さなお子さまをお持ちの方に向けて来店促進をしたりと、差別化を行なっていることがわかりました。そこで「これがマーケティングなんだ」と気付き、マーケティングに興味を持ちました。
ー そこでエンワールド・ジャパンに転職なさったんですね。
片山さん
はい。転職に当たっては、無形商材を扱う事業と決めて、せっかくの機会だからといろいろなエージェントに登録しました。たくさんの会社を見たかったからです。
ただ転職活動中は、「自分が商品のように扱われているな」と感じることがあり、人材紹介業にあまりいい印象はありませんでした。そんな時、エンワールド・ジャパンを紹介されたんです。そこで当社のミッションになっている「入社後活躍」というコンセプトを聞き、人材紹介業に対する考え方が変わりました。
人材紹介業は、転職志望者の職を決めた時がゴールだと思われがちですが、ほとんどの人が「転職してからがスタートだ」と感じていると思います。ただ、人材紹介業のビジネスモデルは「志願者の転職が成立した時」にキャッシュポイントがあるため、売上が見込めないアフターフォローに投資を行いにくいんです。
しかし、エンワールドでは「入社後の活躍に徹底的に向き合う」ということを推進しようとしていました。それに共感し、エンワールドでマーケティングを頑張りたいと思い入社を決めました。2017年9月のことです。
上司も同僚もいない、マーケティングを模索する日々
ー 入社してからは、試行錯誤の連続だったそうですね。本格的なマーケティング実務も、人材紹介業という分野も初めてだったそうで、いろいろ大変だったと思います。
片山さん
入社してわかったのですが、当時マーケティング部門はほとんど解体状態だったんです。
というのも、会社ではマーケティングをあまり重要視していなかったんです。
なぜかといえば、エンワールド・ジャパンはもともとウォールストリートアソシエイツという外資系企業で、リファーラル(この場合、エンワールドの既存ユーザーまたは顧客企業社員に転職志望者を紹介してもらうこと)が強く、営業だけで十分回せる状態だったからです。それに業界自体、マス広告施策などを通じて転職志望者を集めることがマーケティングの主軸だったので、その必要性が少ない当社では、マーケティングの役割は必然的に小さなものでした。
ただ、リファーラルだけでは先行きが不安という意見がありましたし、マーケティングに力を入れて、リファーラル以外からも転職志望者を集めることを強化したいという考えもあったようです。そこで私が入社したのですが、マーケティングも人材紹介業もわからず、上司も同僚もいないなか、試行錯誤するしかありませんでした。
ゼロからのスタート、未経験だからこそ続けた3つのこと
ー その試行錯誤の日々についてですが、マーケティング部がほぼ解体状態のなか、具体的にどのようなミッションを持っていたのですか。また、ほぼ未経験のなか、どのような形でご自分のポジショニングを作っていったのでしょうか。
片山さん
会社からはNPS(ネットプロモータースコア)調査や、転職者に対して行う半年後・1年後に行うアンケート調査、そして各部門が行うクライアント企業向けのイベント運営といった施策をとにかく回すというミッションが与えられていたと思っています。そのためマーケティングの実務的なことは、ほとんどできなかったのです。
そこで自分なりに一生懸命考え、社内イベントを共有するような取り組みを行ったり、社内で起こっていることを発信するようにしました。それと共に、社内のことや人材紹介業を少しでも知るため、自分自身へのKPIとして「3つのこと」をやり続けるようにしたんです。
詳しくは今年のBigbeat LIVEでお話ししますが、簡単にいうと、「社内のネットワーク作り」「セルフブランディング」「外の物差しに触れる」の3つです。わかりやすい「社内のネットワーク作り」を例に取ると、「社内で接点を持った人を必ずランチに誘う」という課題を自分に課し、それを1年間続けることをミッションにしたんです。
社内ネットワークの入り口として、まず営業部門にターゲットをしぼり、接点を持ったタイミングでランチに誘うんです。廊下ですれ違ったり、人づてで挨拶できた人もです(笑)。
そこで情報交換や業界の勉強をし、人脈を広げる。これがだいぶ役立ちました。
セルフブランディングは、実は最初から意図していたことではありません。自分がこの会社で仕事をするために続けていた早朝の英語勉強が、社内で話題になったことで、声をかけてくれる人が増え、それがネットワーク作りにいい影響を与えたんですね。
最後の「外の物差し」とは、外のいろいろなイベントに参加し、さまざまな方に会うことです。本だけではどうしてもわからないマーケティングの疑問について、興味のあるセミナーやイベントを見つけて、片っ端から参加して学んでいきました。Bigbeat LIVEのことを知ったのも、これがきっかけです。
外の物差しに触れて見つけた「カスタマーサクセス」
ー 当時どんなことに悩んでいて、Bigbeat LIVEにどのような期待があったのでしょうか。
片山さん
Bigbeat LIVEはBtoBマーケターを対象にしていますが、人材紹介業自体、BtoBかBtoCかなかなか判断がつきにくい業種なので、マーケティングの基準も見つけにくい。しかし直感的に「これは面白そうだ」と感じ、何か得るものがあると思ったんですね。
先ほど、「人材紹介業はマスマーケティングが主流」という話をしましたが、私個人は「違うな」と感じていました。実際に営業担当者に話を聞いても、「なんか違うんだよね」という反応です。
そんななか、「マスからデジタルマーケティングへ」という流れは、素人の私でもわかりやすいものでした。でも、デジタルでターゲティングしてユーザー(転職志望者)を獲得する、というのもちょっと違う。当社がターゲットとしている層(ミッドキャリア(管理職)・エグゼクティブ・スペシャリスト)はもともと母数が少ないうえ、ボリュームで戦っているわけではないので、「お金をかけて人をたくさん集めるのはちょっと違うのでは」という感覚があったんです。そんな悩みを解決するヒントを掴めればということで、参加しました。
(写真)昨年、紀尾井カンファレンスで行われたBigbeat LIVEの様子
ー 実際にBigbeat LIVEに参加して、いかがでしたか。
片山さん
難しくて理解できない内容もあったのですが、講演者のみなさんが非常にユニークで刺激的で、行動しないといけないと感じました。
その後、イベント参加者を対象にしたオフラインの勉強会「生・おきゃく」が始まり、そこでカスタマーサクセスという考え方に出会ったんです。その時、「これだ!」と思いました。私がやりたいことも、そして当社の営業も、口にはしないけれど、求めているものはこれだと思ったんです。生・おきゃく自体、カスタマーサクセスのようなもので、「こういう取り組みをやっていきたいんだ」と感じました。
ー カスタマーサクセスは、エンワールド・ジャパンのミッションともマッチしていますね。
片山さん
まさにそう思い、カスタマーサクセスを「入社後活躍」に当てはめてもいいかなと考えました。
社長の前で英語でプレゼンし、熱意を伝える
ー そこからどういう行動を?
片山さん
実はそのタイミングで、デジタルマーケティングに詳しい方が、私の上司としてマーケティング部に着任したんです。MAツールの導入検討や、デジタルマーケティング施策などを通じてたくさんのことを教えていただきましたが、やはり会社の中で自分が最大限活躍できる取り組みはこれなのだろうかという疑問と違和感がぬぐえず、社長に「カスタマーサクセスの専門部隊を作ろう」直談判することにしました。
ー すごいですね!
片山さん
「ダメなら辞めよう」という心算でした(笑)。社長は外国人なので、プレゼンする前はオンライン英会話で何回も何回も練習しました。何とかプレゼンが形になり、ストーリーどおりに話せるようになったのですが、実際に話し始めると、「それはいいから、結論は?」と遮られて頭が真っ白になったりして……(笑)。
ー (笑)。話を聞いた社長の反応はいかがでしたか?
片山さん
すごく嬉しかったみたいです。会社のミッションに対する私の熱量が強かったこともあり、喜んでもらえたようでした。
後日、マーケティング部の上司と副社長に再度提案したところ、副社長がサポートしてくれることになり、副社長直轄の「入社後活躍支援チーム」が立ち上がり、2019年4月からスタートしました。
社内では、「片山は『マーケティングでやっていきたい』と話していたのに、突然どうしたんだ」という声もあります。でも私は、マーケティングもカスタマーサクセスも、「アプローチが違うだけで、転職者に成功してほしいという想いは同じ」と思っているんです。マーケティングとは違う形で、転職志望者のプールを転職後の接点を通じて作っていきたいと考えています。
入社後活躍について社内の関心を高めていく
ー 今後はどのような活動を展開していくご予定ですか。
片山さん
NPS調査と、入社後のアンケートという2つの調査を担当しているので、他の部門と連携しながらそのデータについて社内に関心を持ってもらおうと思っています。評価が低い点があれば、そのスキルを高めるように社内トレーニング担当と連携し、教育方法をブラッシュアップしていく方向もあるでしょうし、人事評価に反映するという施策も将来的には考えられます。
こうして顧客満足度が上がれば、お客様に「ずっといい体験を提供する」ことになるんですね。そうすると、そのいい体験がリファーラルにつながったり、会社の評価が上がったり、他社との差別化になるなど、いい循環が生まれていく。そこからさらなる成果につながればいいなと思います。
ー 楽しみですね。最後に、今年のBigbeat LIVEへの抱負や参加する皆さまへの一言をお願いします。
片山さん
Bigbeat LIVEは自分が変わった場所なので、興味のある方やマーケティングに悩んでいる方にはとにかく「来てください」ということを一番に伝えたいですね。
私自身はマーケティングのベテランではありませんし、知識や経験はもっと詳しい方がほかにもたくさんいらっしゃると思いますが、私にしか伝えられないこともあると思います。悩んで悩んで、「自分の理想や、何をすればいいのかわからない」という方に示唆を与えることができればいいな、と考えています。
ー ありがとうございました! 片山さんの講演を楽しみにしています。
[撮影]篠部雅貴
[執筆]岩崎史絵